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女魔王、転生先で魔法少女になる  作者: ツツミ キョウ
3.5章 魔王ちゃんの休日
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日曜日―中編―

 スォーとお風呂に入った後、神恵邸に遊びに行った。


「トア様にゃ!」

「トア様遊びに来たにゃ!」


 猛ダッシュで出迎えてくれた二匹を受け止める。

 いつでも大歓迎してくれる二匹が、回を増すごとに可愛くなってきて仕方ない。


「こうやって会うのは久しぶりね。この前のモールの時はありがとう」

「? 私らなんにもしてないにゃ」

「ナナとソラが頑張っただけにゃ」

「それもそうだけど、チィとビィがいなかったら無理だったんだよ? この私がお礼言ってるんだから、二人はとっても偉いの!」


「にゃふふ、そう言われちゃしょうがないにゃあ」

「これは鼻に掛けるしかないにゃ」


 それぞれ頭を撫でてあげる。

 どちらも気持ちよさそうに小さく鳴いて、目を閉じた。


「いらっしゃい」

 そこでナナがやってくる。


「良い匂いするね」

 ナナの向こう側、リビングの方を見て言う。


「今ソラがおやつ作ってる。そろそろできると思うぞ」


「楽しみだね」

「楽しみにゃ-」

「トア様とおやつにゃー」


 そのまま四人でリビングへ。


「いらっしゃいトアちゃん」

 キッチンで作業してるソラがこちらに振り返る。メガネとエプロンをかけていた。


「お邪魔します」

「……昨日は残念だったね」

「ソラにとっては良かったんじゃない?」

「そりゃ、レオは好きではないけど……。そんな風には、思えないよ」

「優しいんだから」


 昨日の概要は二人にもラインで伝えてある。

 詳しくは今日話すつもりでやってきたのだ。


「もうちょっとでできるから待ってて。チィビィ、飲み物用意してー」

「にゃー」

「しょうがないにゃあ」


 トテテテ、と足音を立ててソラの元へ行く二匹。


「スォーも手伝ってあげて」

 スォーを顕現させる。

「御意に」


 顕現した瞬間二匹にもみくちゃにされるスォー。


 それを尻目に、ナナと二人でソファへ。

 神恵邸のソファは、いつ座ってもふわりと良い匂いがする。


 ナナはテーブルの上にあった勉強道具を片付けていた。


「勉強してたの?」

「まあな」

「偉いなあ。私なんか、昨日も今日も遊びほうけてる」

「イヤミか? やんなくても平気だろトアは」

「そんなことない。日々勉強よ」

「それは勉強の意味が違うだろ」


 勉強道具を片付け……というかテーブルの下に押し込んで、ナナは私の隣に腰掛けた。


「……あんまり、気負い過ぎんなよ」

「ん?」

「いや、今日のトア、ちょっと表情硬いから」

「嘘、そんなに?」

「私の気のせいかもしんねーけど」


 左右の頬をマッサージする。

 ――自分では正直、良く分からない。


「トアにそんな顔させんなら、レオのヤツ、あの時殴っときゃ良かったぜ」

「それは、流石に可哀想よ」


 にっ、と笑うナナに、私も目を閉じて笑った。



   †



 二人と二匹に昨日の顛末を話し終えた。


「……なるほどねえ」


 テーブル上のお菓子は半分ほど私たちのお腹の中に消えた頃。


 チィは私の膝の上で両手にクッキーを持って、ビィはスォーとゲーム中。


「……一番驚きなのは、そんな話になったのにラインしてるところだけど」


「そう? さっきここ来る途中も来てたよ」


 スマホの画面を二人に見せる。


『トアはちょっと上目遣いのこの角度が一番可愛い!』

 というメッセージと、昨日撮られた写真の一枚が添付されていた。


「くっ、ちょっと分かるの悔しい……」

 ソラが歯噛みして呟く。


「よく撮れてるな。被写体への愛を感じる」

 ナナが写真評論家みたいなこと言い出す。


「絶対分かってないでしょ」


「トア様かわいいにゃー」


「ホント!? 見せるにゃ!」

 ビィがコントローラーを置いて突っ込んでくる。

「……確かにかわいいにゃ。でも、本物の方がいいにゃ!」


「それは私もにゃ!」


「ふふ、ありがと」

 スマホをしまって、あざとさ満点の二匹の顎下を撫でてあげた。


 最近知ったけど、ここも好きみたい。流石、元は猫の妖怪。


「……まあ、そういうのがあるとはいえ。

 結局言葉じゃ止められない、って分かったのはキツイかもな」

「……そうだね」


 思い付いた反論の話は、黙っておいた。

 ――今言っても、仕方ない。


「『他のゼロナンバーズやインピュアズに負けないで』って言ったんでしょ?

 ということは、ゼロナンバーズの全員が全員レオの言うこと聞くわけじゃないのね」


「ユミもあんま言うこと聞いてなかったしな」


「まあ、私たちのやることや目標は変わらない。

 ゼロナンバーズっていう勢力の情報が増えたのを良ししましょう」


「……なあ、トア」

 そこでナナが私に向き直った。


「ん?」

「私、強くなりたいんだ。どうすればいいかな?」

「……ナナも?」

「も?」

「いや、さっきスォーからもそんな話されたからさ」

「……そっか。そりゃ、あのモールでの戦いは、思わされるよな。特に私は一番役に立ってないんだ」


「安定感はナナが一番だったでしょ。ソラに補給……じゃなくて、ちゅーしてくれたし」

「……言い直さなくていい」

「次は私が居る時にやってね」

「なるべくやらないに決まってんだろ」


「それはもう、ナナの言うとおりなんだけど……。

 でも、役に立ってるか立ってないかはともかく、もっと攻撃力が欲しいんですって」

 と、ソラが補足する。


「攻撃力ねえ」

「前までは、ある方だと思ってたけど……。二人が抜けすぎて、今じゃ大量の妖力使いこなせてないヤツになっちまってるからな」


「魔法も妖術も、要は『想像の具現化』だから。

 しかも私たちは、自分一人じゃ使えない。

 そこはスォーやチィビィが主体だからね。主体側の想像を、私たちが間違いなく受け取れなきゃ、発動までできない。

 だから必殺技は、相互理解を深めていくしか無いと思うよ」


「『想像の具現化』……? そうなんだ……?」

「……ずいぶん詳しいんだな」


「えっ!? あ、ああ……、まあ、スォーに、教えてもらってね」


 いけないいけない。さっきまでスォーの相談受けてたせいか、スォーと話す時のモードになっちゃってた。


「……なるほど。ともかく、必殺技は私一人じゃどうにもならんのか」


「だから言ったにゃ! 私と良く遊び、良く笑い、良く寝るのが一番、って!」

 チィが腰に両手を当てて胸を張った。


「……いや、スォーみたいに具体的に教えろや。想像のその字も言ってないじゃねえか」

「そんなん私に無理に決まってるにゃ! ナナはバカにゃ?」

「んだとこの! 先にバカ言った方がバカじゃねーか!」

「そうにゃ! チィはバカにゃ! だからバカって言うにゃこのバーカ!」

「開き直ってんじゃねえよこのバカ!」


 追いかけっこはじめるナナとチィ。


「ちょっともう! ホコリ立つから!」

 ソラが一人と一匹を注意するが、当然聞き入れられることはなかった。



   †



 ナナがチィを捕まえて、こめかみをグリグリしながら戻って来た。


「トア様ー、ナナがイジメるにゃー」

 

 ナナから逃れて、チィが私に抱き付いてくる。


「まあ、あれはチィが悪い」

「にゃにゃ!?」

「人にバカとか言っちゃダメだし、自分自身をバカとか言っちゃダメ。そんなこと言うチィ、嫌い」


 見る見る顔が青くなっていくチィ。

「二度と言いません! すみませんでしたトア様! あとナナも!」

 凄い勢いで私とナナに頭を下げた。


「トア相手だと聞き分け良いな。トア、これからも頼むわ」

「まあ、ケンカするほど仲が良いってね」


「んで、話戻すけど。技が無理なら、私、体術を鍛えようと思うんだ」

「体術? 体術ねぇ……」


「ほら、トアがソラと戦った時、体術の差で勝ったじゃんか。

 あれを見習おうと思って」

「あれは真似しなくて良い。

 あの時のソラは、妖力を全部武器に注いでたから。

 今は、体中に炎を纏うようになったでしょ? あれだけでもう、ただの蹴りや掌底は通用しないよ。


 武器以外に魔力や妖力を込められない以上、徒手空拳は考えなくて良い」


「あー、そうか……。じゃあ、なんだ、車輪術みたいな?」


「いや、車輪術はないでしょうから……。

 似たような武器を習うのは良いかもね。槍術はあんまり習えるところなさそうだから、薙刀が無難かな」


「なら、トアちゃんから直接習えば良いんじゃない?」

 そこでソラが閃く。


「……なるほど?」

 ナナがソラを見る。


「薙刀も体術も、トアちゃんの方が上手いだろうし。一番の先生じゃない?」


 ――なるほど。その案……

「異議なし!」


「言ってて私も習いたくなってきた」


「じゃあさ、実戦的な練習は三人でするとして、薙刀はうちのおばあちゃんのとこにも来てよ!

 その後に三人で道場使わせてもらえないか、掛け合ってみるからさ」


「そうね! それで行きましょ!」


 私とソラが盛り上がる中、ナナは顎をさすっていた。


「……盛り上がってるとこ悪いけど、普通の習い事じゃないんだぞ?

 絶対に勝たなきゃいけないから、会得したいんだ。


 インピュアズだけじゃなく、ゼロナンバーズも敵になった今。

 そんな、『友達と』なんて浮ついた理由じゃなくて、効率を目指してやりたいんだよ」


「ナナの言いたいことは分かるけど。

 でも、『楽しく続ける』が一番効率良いのは間違いないよ。

 そもそも効率を言い出したら、現代の習い事化した武道は全部効率悪いし。

 私たちくらいの年齢は、『友達とやれる』も立派な理由だと思うけどな」


 そう言って、立ち上がる。


「だって、二人と一緒にやれるってなったら、私はこんなに嬉しいんだもん!

 楽しみでワクワクして来ちゃうんだもん!

 それが悪いことであるハズない!」


「いいないいな、私も一緒にやりたいにゃ!」

「私も! なんか知らんけど楽しそうにゃ! 仲間はずれはダメにゃ!」

 チィビィが手を挙げた。


「スォーも一緒にやるにゃ!」

「そうにゃ! 私たちは仲間はずれ反対にゃ!」


「私はそもそも主様の……ああいや、分かったから! 服引っ張らないで!」


「……ホント、トアには敵わんな。こりゃ、レオもたらし込められるわけだ」


「なんか言った?」


「あはは……トアちゃんって、本当に魅力的だねってさ」


「? そう? 今そんなこと思うところあった?」


「この、無自覚ハーレム系主人公め……」

「いやあ、今日ばっかりは、ナナに同感かなあ……」


「? 二人ともなに言ってるの?」


「なんでもないよ」

「なんでもねえよ」


 この双子、ほとんど無声量で意思疎通できるの卑怯すぎるんですけど!?

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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