28
12/20に投稿したつもりでしたが、できていませんでした……
申し訳ありません。。。
モールの中には天井の大穴から朝日が注いでいた。
なかなか、というか現実だったらまず見られない光景に、ちょっとテンション上がる。
最初にヒメと会ったジュエリーショップ。
ヒメは椅子に座って。
両脇にはアヤとアンジュ。
回廊との境目辺りに、アキラとエル。
ムツキが店の壁にもたれかかるように座り込んでいた。
そんな彼女らを、私たちは吹き抜けを挟んだ反対側……北側の半分を占めるくらいの広い書店に隠れている。
約束の6時。
……を15分ほど過ぎて、上から白髪和装の少女が降りてきた。
「……どうしたのこの穴?」
ホムラが不思議そうに見渡しながら、その穴からモールに入ってくる。
「ちょっと新しい技を試してたら、こうなっちゃっただけです」
「ふうん」
あまり興味なさそうなホムラ。
「それより遅いですよ。学校があるって言ってるじゃないですか」
ヒメは流石、肩の力が抜けた、違和感のない良い演技。
――対照的に、アキラとムツキは視線が泳ぎっぱなしだけど。
「ごめんごめん。んじゃ早速、ここのピュアパラくれる?」
悪びれた様子もなく、右掌を上に向けて見せるホムラ。
「それなんですが、すみません。逃げられました」
「……にゃんですって?」
――ホムラのこめかみに青筋が浮かぶ。
「昏睡の妖術が甘かったみたいで。目を逸らした隙に、逃げられました」
「…………」
「ですが、拠点を作る、という当初の目標は果たしました。ピュアパラなんて、どうせすぐにでも捉えられます。
一旦、今回の分の報酬をいただいてよろしいですか?」
「……報酬ねぇ」
差し出したままだった右手をゆっくりと伸ばして、ヒメを含めた5人に掌を向けた。
「どうせお前らポンコツにゃ。ゴミになる前に妖玉返すにゃ」
瞬間、掌から光が5人の妖眼に向かって飛んでいく。
――ナナとソラの妖玉に自爆命令を送った時と同じように。
光が5人の妖眼に到達。
「ピュアパラ捕まえることすらできないにゃんてにゃ。失敗作の双子といい、どうしてその程度もままならにゃいのか……」
そこでホムラの言葉が止まる。
「……あれ? なんで妖玉がこっち飛んでこないにゃ?」
「それが、あなたの本性ですか」
ヒメの妖眼に、ホムラが反射して映る。
「語尾カワイイけど、ムカつきますね」
「……にゃ、って付けるの、本当だったんだ……」
ムツキが小声で呟いていた。
「お前ら、なにしたにゃ……?」
「私たちは、別に何も」
「何かしたのは私よ、ホムラ」
空中から背後に迫って、薙刀を振りかぶる。
「輝け。――原初の衝撃――」
振り向きざまのホムラに直撃――
したけれど、まるで手応え無く、薙刀が素通りしていった。
「!?」
切った箇所が煙のように分散して……
すぐに元に戻って、また体と服を形成する。
「これは……」
『分け身の術』
妖力で自分の分身を作る術。
分身はほとんどの妖術が使えないが、攻撃も一切通じない。
術者が解除するか妖力不足にならない限り消えることもない。
主に遠隔の偵察や潜入を安全に行うためのものだ。
「お前、トゥアイセンの子孫か生まれ変わり!?
まさか、フィアーに勝ってたにゃんて……」
「……知らなかったの?」
「フィアーは暗殺終わったら自殺するって言ってたにゃ。実際、もう連絡取れないにゃ。
……でもお前が生きてるということは、自殺じゃなくて、心折れて自爆したか、お前が殺したにょか」
――なるほど。そういう話になってたんだ。
だったら都合が良い。このままトキアさんは死んだと思わせておこう。
「だが残念だったにゃ! 生身で行くのは危ない、って教えてくれたヤツが居たにゃ! 言うとおりにして良かったにゃ!」
にゃっはっはー、と高笑いするホムラ。
(……まあ、ユミさんよねえ……)
ヒメたちの裏切りまでは教えてなかったみたいだけど。
「シチビ……!」
「…………」
私の後ろから追撃予定だったナナとソラが、ホムラを睨んでいた。
「なんにゃ。失敗双子も居たにゃ。目障りにゃ……」
「てめえっ!」
ナナが吼える。
「でも一番目障りなのは、やっぱりお前にゃ。トゥアイセンの生まれ変わりか子孫。
今決めたにゃ。
これからは、まずなにより、お前を殺すことを最優先とするにゃ」
「本当? それは助かる」
「……にゃにぃ?」
「次もゲートがない場所だったらどうしようと思ってたから。そっちから私に来てくれるなら、嬉しい限りよ」
「強がり言うにゃ。フィアーがダメでも、アレを凌駕する個体だって居るんだにゃ!」
「……アレ、個体、ね」
相変わらず、殴るのに躊躇しない性格だこと。
「お前を放置してたら、この世界は侵略できないって良く分かったにゃ。今回は痛かったけど、勉強代とするにゃ。
……次会う時は、お前が死体になった時にゃ。その日をコタツで丸くなって待ってるにゃ!
さらばにゃ!」
ホムラの分け身が薄くなって消えていく。
僅かに残ったホムラの妖力の残滓を、薙刀で斬り払った。
眩しいほどの朝日に照らされる中、煙になってホムラの姿が消えていく。
†
ヒメたちの元に降りた。
「みんな無事? 妖眼に違和感とかない?」
妖眼の支配権は私にあるけど、一応確認しておく。
「はい。私たちはなんともありません」
「良かった」
見渡しても、ヒメの言うとおり、異常がありそうな子は見当たらない。
「ちくしょう。まさか分身なんか使ってくるなんて……」
ナナが悔しそうに私の後ろに降りてくる。
「来る前から警戒されてたんじゃ、仕方ないよ」
「シチビに忠告したのって、もしかして……」
ソラが続いてナナの横に立った。
「十中八九ユミさんでしょう。それ以外に、このモールを警戒できる人が居るはずない」
「だよね……」
「戦闘にならなくて良かったね」
レオの声。
振り返ると、おもちゃ屋から拝借した何かのヒーローの仮面をかぶったレオが浮いていた。
「……あなたの指示? あとそれもう取って良いでしょ」
「指示と言えば、まあそう言えなくも無いかもしれない、とは言いきれないところもあったりなかったり」
とか言いながら仮面を取るレオ。
「はっきり喋りなさいよ」
やっぱりソラはレオに手厳しい。
「余計なことしやがって。今日こそぶん殴れると思ったのに……」
ナナが悔しそうに自分の拳を睨む。
「私にも立場と目的があるからね。
それに、戦闘にならなかったのは、一概に悪いことでもないでしょ?」
「…………」
ナナはレオを横目で睨む。
けど反論しないあたり、ちゃんと分かっているんだろう。
「ナナ様。……申し訳ありません。元はと言えば、私が……」
ヒメが悲しそうな目で頭を下げる。
「私たち、です。姫様。お間違いなきよう」
そんなヒメを横で窘めるアヤ。
「いや、アンタに謝られるような立場じゃないさ」
拳を解いて、ヒメに微笑みかけナナ。
「あと、様ってのはやめてくれ。こそばゆい」
「いえ、でも……」
「ムツキには言ったけど、私らは同じ穴のムジナだ。謝罪なんか要らないよ」
「うんうん」
ソラもヒメに向かって大きく頷いて見せる。
「謝るんなら、まずトアだ。その次に、ここのピュアパラたちだよ」
「……トア様に謝った時も、怒られました。自分より、さくら地区のピュアパラたちに謝りなさい、って」
「そうか。なら、そうしな」
「私たちも、面会してくれる人には謝って回ったわ。トアちゃん、そういうところ厳しいから」
「そうなんですね……」
私の話になってるようなので、三人に近付くことにする。
「私は、妖眼を調節したけど、あなたたちがしたこと自体をまだ許したわけじゃない。
いくら、騙されて利用された結果だとしても。
言わなきゃならないこと、しなきゃいけないこと、あると思う」
「……はい」
ヒメは神妙に私を見返す。
「仰るとおりです」
「ペロ」
「はいペロ」
ペロが私の前に飛んで来た。
「さくら地区の子たちが起きて、心と体も整ったら、ヒメたちに謝る機会をあげて欲しい。できる?」
「こっちの精霊と連絡取り合ってみるペロ」
「よろしくね」
ヒメに向き直る。
「いいよね?」
「はい。ありがとうございます」
「というわけだから。
……とりあえず、今日のところは解散にしましょう。みんな、学校にいく準備しないとね」
――正直、体重いし眠いし、休みたいとこだけど。
まあ、本当に休むかどうかは、一度帰ってから考えようかな。
「トア、現実戻ったらまずライン交換だからね!」
レオが念を押してきた。
「分かってるって。忘れてないから……」
「待って。その前に、話させて」
呼び止める声。
そちらを見ると、ムツキがこちらに歩いてきた。
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