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女魔王、転生先で魔法少女になる  作者: ツツミ キョウ
3章 さくら地区奪還戦
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8

Interlude(インタールード) 【ナナ 4】~



「反則よ。やっと、明るい未来が見えたと思ったのに。なんで、アンタたちみたいなバケモノに襲われなきゃいけないの……」


 倒れた少女に歩み寄ると、そう言われて睨まれた。

 

「そりゃ、その明るい未来がまやかしだったからだろ」


 私がそう言うと、大剣少女は右目からポロポロと涙をこぼし始める。


「シチビは、そういうヤツだよ。お前らの未来なんか考えてない。アイツは徹頭徹尾、自分のことだけだ。

 ……そんなヤツに付いていっても、幸せになんかなれねえよ」


「そんなこと言われたって。仕方ないじゃない。

 ……現代医療じゃ無理、って言われてた私たちの目を治せたのは、シチビの妖眼だけだったんだから」

「……目?」


 大剣少女は、その右目を右手で覆って。

 ……けれど口は大きく開き、笑って見せた。


「それでも、ヒメちゃんなら……。騎士長なら。

 勝ってくれる。

 残念ね。あの二人は、規格外よ。

 私たちなんかじゃ足下に及ばないんだから」


「……そうかよ」


 さらに歩み寄る。そろそろ、互いの射程範囲内。

 一応、まだ不意打ちを警戒しておく。


「ねえ。私たちを殺すの?」

「んなことしねえよ。私らのボスは、そういう主義なんで」

「……お願い。アキラだけは助けて」

「話聞けってば……」

「……信用できるわけ無いでしょ。敵の言うことなんて」

「そりゃごもっともだが」


 ソラの方を見る。

 ソラもランス少女も変身を解いていた。

 気を失っているランス少女を膝枕しながら、ソラはこちらを見ている。


「……ま、殺そうって相手を膝枕してやらねえわな」


 私の言葉に、大剣少女もソラの方を見た。


「……甘いわね。ここが敵地だって、分かってないのかしら」


「正直同感だ。でも、トアもソラもそれが信条なんでね。

 私は付き合うだけさ」


 大剣少女が変化を解く。……というか、勝手に解けたようだった。


「……あなたも充分、『誰かのため』に生きてるじゃない……」

「ははっ、耳が痛いな」


 言い返せない代わりに、私は車輪を消した。

 そのまま少女を抱え上げる。いわゆるお姫様だっこで。


「かっる!? おいおい、ちゃんと食った方が良いぞ」

「耳元でやかましい……」


 そのまま、ソラとランス少女の方に向かった。


「にしても、めちゃくちゃ美人だな。ハーフ? 髪も地毛だったのか」

「……別に。よく言われるけど、私たちに見た目なんて関係ない」

「そういや、目がどうこう言ってたな」


「私たちは、全員同じ盲学校に通ってる同士よ」


「……マジか」

「半年くらい前、シチビが現れて、妖眼をくれた。

 それ以来、みんな変化すれば目が見えるようになった。

 ……その感動は、きっとあなたには理解できないでしょうね」


「その感動は理解できねえけど……。まあ、シチビに救われた気になるのは、理解できるぜ」


 ?を浮かべる少女には答えず、ソラ達と合流した。


「で? なんで敵を膝枕してんだ?」

 ソラを見下ろして尋ねる。


「いやだって、床にそのまま寝かせるのも可哀想だし……」

 ソラが言い訳するように答えて、ランス少女を見下ろした。


 変身が解けて秋物のワンピース姿のランス少女は、可愛らしい寝顔で気を失っていた。


「私も変化が解けちゃったから、ナナの加勢にも行けなかったし」

「そりゃあんな技撃ったら妖力尽きるだろ。もうちょい考えろって」

「私だって必死だったの! しょうがないじゃん……」


 大剣少女を下ろす。

 少女はソラの前でアヒル座りになって、一心にランス少女を見つめていた。


「とりあえず私はピュアパラ助けてくる。なんかあったら大声で……」



「二人とも無事!?」



 と、そこで大音響が聞こえてきた。


 振り返ると、北側の空中からトアと、もう一人、質素な衣装のインピュアズが降りてくるところだった。



   †



 ――時間は少し戻って、ナナやソラと合流するちょっと前――



 私の一撃で、ムツキと呼ばれた子は昏倒した。

 ……元々は、親友か対等ランク。無理矢理ランクを引き上げても、完全隷属の私には及ばない。


「流石に差がありすぎたね」

 横で見てたレオが言う。


「レオ。この子外に連れて行きたいんだけど。手伝ってくれる?」

「……友達使い荒いんだから……」

 苦笑しつつも、こちらに近付いてくれるレオ。


 と、そこでペロがピンッ、と両耳を真上に突き立てた。

「トアちゃん! 二人が他のピュアパラを発見したらしいペロ!」


「本当?」

「今、インピュアズと交戦……。ソラちゃんがトアちゃんを呼んでるらしいペロ」


「分かった。南側よね?」

「うん。南の端っこペロ」


「南か。ここからだと迂回しないと、エスカレーター通じてないよ」

「飛んで行けばいいのよ」


 と、そこでムツキの変身が解けた。

 再びタマハガネのアバターと、ムツキの二人に分離する。


 アバターの子は私とレオ、それにムツキを見比べて、オドオドと身を縮こまらせた。


「あなた、お名前は?」

 しゃがみ込んで、そう尋ねる。


「……識別名、エリンです」

 舌っ足らずな高い声で答えてくれた。


「エリン。私はあなたたちを助けに来たの。他のピュアパラも助けるから、今はタマハガネになっててくれる?」

「は、はい。分かりました」

「大丈夫。しばらくはあなたの所有者に持たせないようにするから」

「……ありがとう、ございます」


 エリンがタマハガネに姿を変える。

 それを拾って、ポケットに入れた。


「よっ、と」

 掛け声と共にレオがムツキを背負った。

「んじゃ、行こうか」


「ありがと」

「流石に私が背負った方がいいでしょ。身長的にも」

「助かるよ。友情ポイントプラス1ね」

「ポイント制の友情やだなあ……」

「10貯まったら次は『ちょっと親しい友達』にランクアップできるから。頑張って♪」

「その制度は大幅な見直しを要求する!」


 なんて言い合いながら、私たちは床を蹴って飛び上がる。


「こっちペロ」


 ペロに先導され、南側に向かう。


 そして南側の吹き抜けが見えた、瞬間――


「「……えっ!?」」

 私とレオの声が同時に重なった。


 突然、吹き抜けの天井ギリギリまで、巨大な火柱が吹き上がり……

 直後、大爆発を起こした。


「きゃああああああっ!?」

「わあああああああっ!?」

「ペロォォォォォォッ!?」


 急な衝撃に、私たち全員散り散りに吹き飛ばされる。


 爆風に煽られながら、なんとか二階の回廊に着地。

 と、空中でレオがムツキを手放してしまうのが見えた。そのままレオは右方向へ、ムツキは左方向へ飛ばされていく。


「間に合え!」


 左に跳躍。

 ムツキが壁にぶつかる直前、なんとか受け止めることに成功した。


 背中を壁にぶつけつつ、ゆっくりと降下。回廊の上に降り立った。


「トアちゃん、大丈夫ペロ……?」

 毛並みがボサボサになったペロが、私の元にフワフワと近付いてくる。


「こっちはなんとか。ペロ、全身凄いことにになってるよ」


 ペロがブルブルッ、と全身を震わせて毛並みを戻した。……そんなことできるんだ。


「今の一体何だったペロ……? 敵の罠魔法? にしては強力すぎたペロ……」

「多分、ソラの技だと思う」

「ソラちゃんの!?」

「うん。炎の色と、混じってる妖力が、ソラのだったから」

「……人間が扱える威力じゃないペロ……」

「そう? 私と戦った時も、割と常識外れだったけど……。あ、その時ペロ居なかったか」

「……ソラちゃんも異常だけど、それに勝ったトアちゃんの異質さもとんでもないペロ……。今更だけど」


「今の話、本当?」

 と質問しながら、吹き抜けの下からレオが飛んできた。


「嘘言っても仕方ないでしょ。味方のことなんだし」

「……だとしたら、失敗作どころか、大大大成功作じゃない。

 ふふっ、シチビのヤツ、勘違いでとんでもない逸材逃したみたいね」

「……楽しそうね。レオにとっても敵になると思うんだけど」

「いやまあそうなんだけど。シチビが泡を吹かすんならそれもヨシ」


 ――仲が良いのか。それとも、本当に疎ましく思ってるのか。半々なのかもしれない。


「預かるわ」

 言って、レオが私の手からムツキを抱き上げる。


「ペロ、向こうの様子聞いてくれる?」

「うん。

 …………

 ソラちゃんと戦った一人は昏倒して変化解除。ソラちゃんも、妖力欠乏で変化が解けたらしいペロ。

 ナナちゃんは……、まだもう一人と戦闘中とのことペロ」

「分かった、なら急ぎましょう」


 ソラが無防備となると、もしナナが負けたらソラも危険だ。


「お待たせ、私も飛んで大丈夫」

 ムツキをしっかり両腕と背中でホールドして、レオが言ってくれる。


 再び二人と一匹、それと背中の一人でモール内を飛ぶ。


 そしてほどなくして、南側に到達。ナナとソラと合流した。



「二人とも無事!?」

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