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女魔王、転生先で魔法少女になる  作者: ツツミ キョウ
3章 さくら地区奪還戦
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5

Interlude(インタールード) 【ナナ 1】~



「……しっかし、だだっぴろいな……」

「凄いね! あ、見て見て、あれなに可愛いー」


 ソラはここに入ってからご機嫌だ。

 まあ、私もこんな時じゃなきゃテンション上がっただろうけど。


「あんまり騒ぐなって。見つからないに越したことないんだから」

「ごめんごめん。つい……。ずっと、行ってみたいって思ってたから」

「そうだったのか? じゃあ行けば良かったのに。ひまわり地区にも似たようなのあっただろ」

「ここ数ヶ月、それどころじゃなかったでしょ。他にも行きたいところあったけど、全部我慢してたの。いつの間にか、我慢するのが当たり前になっちゃってたけど」

「んじゃ、今度の休みに行ってみようぜ。トアとかイズミとか連れても良いし。

 だから、今はピュアパラ助けることに集中しろ」

「……うん。そうだね。ありがと」


 ということで、なんとかソラを正気に戻――せたか、視線の泳ぎ方的に不安だけど、戻せたということに――して。


 私たちは左の壁沿いに、施設の南側を探索し続ける。


「今、ペロから連絡あったピグ。

 ブレイドがインピュアズと戦闘。

 ……結果は引き分け。今そのインピュアズと一緒に、ピュアパラを探してるらしいピグ」


 私とソラの間に浮かぶ精霊が言った。

 ぽぷら地区の担当で、名前は語尾の通りピグ。ペロより耳が短くて、ちょっと丸っこい。


(……戦って引き分けた敵と、ピュアパラ探しに行った……?)

 ちょっとなに言ってるか分からない。


「もしかして、ピグって日本語苦手か?」

「苦手じゃないピグ! ペロからの報告そのままピグ!」

「……敵が寝返った、ってこと?」

 ソラが横からピグに尋ねる。


「聞いてみるピグ。

 …………

 ふむふむ、なるほど。

 この地区を攻めたのとは、また違うインピュアズらしいピグ。

『ブレイドが口八丁でたらし込んだ』って言ってるピグ。……精霊ネットワーク上でそういう言葉遣いしないで欲しいけど」


「まあ、それなら納得できる。ある意味、正確な報告だろ」

「納得できるピグ……?」


「私もピグに賛成。そんな言い方失礼よ。トアちゃんは人を引き込む魅力がある、ってこと」

「似たようなもんだろ」

「……そうかもしれないけどぉ……」


 ちょっとでもトアを悪く言われるのが我慢ならないらしいソラ。


「……ちょっとした冗談だって。真面目に受け取るなってば。

 ともかくピグ、状況は分かった。またトアの方でなんかあったら報告してくれ」

「了解ピグ!」




 そんな話をしながら、高級な化粧品ショップの探索を終えた。


 店を出て、すぐ次の店の入り口前に出る。

 上を見ると、犬や猫が描かれた看板。ペットショップみたいだ。


「ちょっと、ナナ……」

 ソラがちょんちょんと私の裾を引っ張る。


「どうし……」

 ソラの視線の先に目を向けた瞬間、言葉に詰まった。


 店の前面のショーウィンドウ。

 その中、現実だったら犬や猫が展示されているであろうケージ。


 だが今はそのケージ中に、女の子が閉じ込められていた。

 見えるだけで三人。皆、目を閉じて横たわっている。


「おい、大丈夫か!?」

 思わずショーウィンドウの前に行って声を掛けた。


 三人からの反応はない。

 が、良く見ると三人ともゆっくり呼吸をしている。どうやら命はあるみたいだ。


 三人の前のウィンドウには、それぞれ、

『平良 芦奈  売約済』

『友瀬 絃子  売約済』

『篠之井 愛利 売約済』

 と書かれた札が張られていた。


「ずいぶん悪趣味だな……」

 思わず眉が寄る。


「ナナ。そっちからじゃなくて、中から助けてあげましょう」

「……だな」


 言われてソラに振り向いた、瞬間。

 ソラを目掛けて上から降りてくる影が見えた。


「ソラ上だ!」

「ナナ後ろ!」


 ほとんど同時に言って、ほとんど同時に攻撃を回避する。


 ソラが立っていた床の砕ける轟音。

 私がいた空間を過ぎる風切り音。


 私もソラもペットショップから離れる形で、靴底を床に滑らせた。


「お客様、残念ですがここのペットは全員売約済です。とっとと帰りやがれ」

 床から巨大なランスを軽々引き抜きながら、インピュアズの一人が言った。


 ランスの刺突部は円錐状で、刃が一切ない。完全に突き刺すことに特化した、西洋のもの。

 右目に眼帯。

 衣装のベースは和でありながら、各所に洋の装飾を纏っている。

 両手の甲を覆う、シルバーのガントレット。

 腰から下は、袴のようなスカート……スカートのような袴? を穿いていた。


「レオの手下? こんなところで何してるの? あなたたちの飼い主はとっくに帰ったわよ」

 くるりと振り返り、鮮やかな金髪をたなびかせながら、もう一人のインピュアズが流し目で私たちを見る。


 私がいた空間を裂いた得物は、馬鹿馬鹿しいくらい巨大な大剣。両刃の直剣は、やはり西洋型。

 こちらは左目に眼帯。

 前者と同じく洋のデザインをちりばめた衣装に、シルバーのガントレット。

 ただしスカートは無く、たけはいろいろとギリギリだ。真っ白な太ももに、ブラウンの編み上げブーツがやけに似合う。


「……私らはリトルウィッチィズだ。レオってヤツは知らん」

 言いながら、車輪を具現化。


「私たちは、この地区のピュアパラを助けに来たの。その店の中にいる子達で、間違いないわね?」

 ソラも斧を手に出現させた。


「リトルウィ?」

 ランスの方が小首をかしげる。


「ムツキが言ってたでしょ。最近できた第三勢力で……失敗作のインピュアズが二人、負けたピュアパラにかしずいてる、って」

 大剣の方がそう説明した。


「ああ! 二人がかりでピュアパラ一人に負けた、っていう。

 アンタたちがそうなんだ?

 初めまして、センパイ♪

 ザコにボコボコにされて、良く生きてられますね。ボクだったら自殺しちゃうよ」


 犬歯を剥き出してあざわらうランスの女。


「……良く口が回るな。口先でマウントとって満足か? 満足したならそこどけや」

「キレちゃった? コワ」

「キレるわけねーだろ」


 腰を落として、車輪を構えた。


「井の中のかわずが言うことに、いちいち構うほど暇じゃない」


「なんだと!? ゲロゲーロ!」

 ピョンピョンとカエルの真似をするランス少女。案外ノリがいい。


「私はその子達の扱いに怒ってるけどね」

 ソラが私に続いて、脇構え――刃部を後ろに、石突を敵に向けた型――を取る。


「カワイイっしょ? ここに閉じ込めておこう、ってなった時、閃いてさ。明日にはシチビが報酬と交換で持ってくから、間違いでも無いし」


 ランスの少女が自慢げに言う。


「……トアに見つからなくて良かったな。

 こんな扱い、トアだったらただじゃおかなそうだ」

「代わりに私たちがただじゃおかせないわよ」

「まあな」


 私とソラは武器に妖力を纏わせて、必殺技の準備。


「……え? マジ? ピュアパラに負けたくせに、私らに楯突たてつこうっての?」

 本気でびっくりしてるランス少女。


「逃げるような殊勝さを持ってれば、見逃してあげたのに。残念ね」

 侮蔑の目で私たちを見下ろして、大剣の少女が切っ先を私たちに向けた。


「そっちこそ、逃げるなら今のうちだぞ。私は優しいからな。トアやソラと違って、そこをどけば見逃してやってもいい」


 大剣少女の、殺意がこもった視線。

 ――ついでに、横から非難するようなジト目も。


「おいおい、殺すなよ? コイツらもヒメッちの功績と報酬になるんだから」

 ランス少女が大剣の方に向かって言った。


「……分かってるわよ。でもこの世には不可抗力って言葉がある」

「ったく……。おいアンタら! 手加減なんかしてやれねえからな! 死ぬんじゃねえぞ!」



きしれ。――ジークの車輪――」

やぶれ。――喀血かっけつの斧――」



「騎剣。――優雅で輝か(エレガント・)しいあの方に(ブリリアンツ・)捧ぐ特大剣(グレート・ソード)――」

「騎槍。――あの子の敵を穿つもの(さよなランス)――」



 私と大剣少女が同時に走り出して、それが開戦の合図になった。

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更新お疲れ様です。 敵のコンビ…片方は昔アホみたいに流れたA○のCMみたいで、もう片方は女の子なのに厨二系か~(笑) なんか凄く凸凹コンビに見えますが、こういうのが案外良い連携見せてくるから油断大敵…
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