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女魔王、転生先で魔法少女になる  作者: ツツミ キョウ
3章 さくら地区奪還戦
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2

 レクと分かれて窓を出る。

 ペロの用意した靴を履いて、地面に降り、公園へ。


 公園で待っていると、程なくしてナナとソラがやってきた。二人とも制服姿だ。


「よ」

「こんばんは、トアちゃん。精霊さん」


「こんばんはペロ」

「こんばんは。来てくれてありがと」


「トアが行くなら付いて行くさ」

「今回はちゃんと連絡してくれたしね」


「将に恵まれて、王冥利に尽きるよ。

 それじゃ、行きましょうか。ペロ」

「ゲート開くペロー」


 ペロが両手をかざす。その目の前に黒い渦が生じた。


 三人と一匹で中に入る。


 次の瞬間には、見覚えのない街並みが広がっていた。

 ここがぽぷら地区なのだろう。


「さくら地区の精霊が最後に連絡してきた場所は、ここから歩いて15分くらいペロ。

 空を飛んでいけばもう少し早いはずペロ」


「ナナとソラは空飛べる?」

「ああ」

「うん」

「なら空から行きましょう」


 ということで、変身。

 まだ薙刀は消しておく。


 ナナとソラはそれぞれポケットから小さな折りたたみのカミソリを取り出した。

 それを開くと、ナナは右手の人差し指を、ソラは左の人差し指を、それぞれ切りつける。


 次に、ナナは左手に、ソラは右手に、妖玉を持った。


 お互い正面に立ち、傷口と妖玉をそれぞれ合わせる。


「「変化へんげ」」


 それぞれセヴンスとヘヴンズに変化。

 前と違って、胸元はちゃんと閉まっておへそも見えない。一安心。


 ――キスで変身してくれないのは、未だに残念だけど。


「やっぱり自傷は見てて嫌なんだけどなあ」

 遠回しに抗議する。


「こんぐらい大したことないだろ」

「……キスで変化なんか絶対しないからね」

「そうそう。いい加減諦めろって」


「そういうんじゃないってば」


 ――『あのカミソリ隠しておけば、キスで変化せざるを得なくなるな』なんてもちろん思ってませんとも。


「じゃ、ペロ先導お願い」

「任すペロ。こっちペロー」


 周り建物より高く飛んで、私たち三人でペロを追う。


「……にしても、こっちは結構塔より遠いな。なんでこんなところ攻め込んだんだ?」

 ナナが後ろに見える塔を見ながら、疑問を口に出した。


「ガーゴイル200体の時も、私たちの時も、トアちゃんに止められたからね。今、『溢れ』を起こしても効果薄いと思ってるんでしょう」

 ソラが冷静に分析する。


「それは分かる。だからトキアさん使ってトアを暗殺しようとしたんだろうし。でもこの辺は、トアと関係ないじゃん?」

「まあ、外堀を埋めるためかな? 『溢れ』を起こした時の効果を、より高めるために」


 ――敵の弱い方を狙うのは、基本的な戦略。


 それと並行して、私に最強クラスのインピュアズをぶつけて来ただけであって。


 それが失敗しても……つまり、私を暗殺できなくても、現世を侵略できれば妖怪たちの勝ちだ。

 実際、私たちでは手が回らず、すでに征服されてしまった地区はいくつもある。


『塔だけ警戒しておけばいい』……

 なんて状態にさせないよう、各地区を侵略しているのだろう。


「今、ひまわり地区と各地区を繋ぐゲートを増設しているペロ。ひまわり地区から遠くても、トアちゃんたちが間に合うように」


「それは助かる。引き続きよろしくね」

「各地のピュアパラがインピュアズに対抗できるくらいになれば良いけど……。

 現状、トアちゃんたちに頼らざるを得ないペロ」

「気にしなくていいってば」


「……ただ、全国に行けるようになったとすると、そのうち朝から晩まで戦うようになるんじゃ……」

 ソラが呟く。

「確かに。一度征服された場所を取り返すのも、楽じゃないだろうし」

 と、ナナも続く。


「うん。必要ならそうするつもり。少なくとも、私はね」


「なら私たちもよ。ね?」

「ああ」


 私が言うと、二人は即答してくれた。


 ――そう言ってくれるのは嬉しいし、助かる。

 けれど現実は、たった三人が24時間動いたところで間に合わないだろう。


 可能なら、もっと仲間が欲しい。

 それに加えて、前に言ってたピュアパラ強化アイテムの開発は急いでもらいたい限りだ。



   †



 そんな話をしながら飛んでいくと、ペロが「ここペロ」と言って止まった。


「あの建物がある場所が、さくら地区の精霊――ポムからの連絡が途切れたところペロ」


 ペロが指す先には、私でも知ってる系列のショッピングモール。


 ひまわり地区にある同系列のものと、大体同じくらいの規模だろうか。

 全容が一望できるせいか、地面から見るよりも、上から見る方が圧倒される。駐車場だけでとんでもない広さだ。


 夜といってもまだそんなに深くない時間帯。にもかかわらず、人の気配が一切しない空虚感が、異様さをさらに増幅させていた。


「あの建物、って言われても、とんでもないでかさだぞ……?」

「ピュアパラたちもあの中に居るとしたら、一晩で探し切れるかな……?」


「ペロ。インピュアズたちも、あの中に居るのよね?」

「そう予測されてるペロ。遠隔視の子によると、あそこを拠点にしているらしいペロ」


「拠点? ということは、複数人居るってこと?」

「確認されてるだけで4人は居るらしいペロ」

「最低4人か……」


 呟いてナナが私を見る。


「どうする? トキアさんに応援頼むか?」

「いや……、トキアさんの家の近くにはゲートが通ってない。方向も反対だし、ここに来るまで待ってたら、最悪朝になっちゃう」


「今日のところは偵察に留めたらどうペロ?

 朝になれば近くのピュアパラの応援を呼べるペロ」


「却下。捕虜の子たちをホムラ……シチビのところに運ばれたら、もう取り返す手段がない。今、ここで制圧する」


 言って、ナナとソラの視線を見返した。


「お願い。私に力を貸して」


 ここまで来てくれた二人に、最早遠慮は失礼。

 真っ直ぐに、そう頼んだ。


「そんなの当たり前だ。ただ、作戦は考えなきゃ、って思っただけだよ」

「だね。といっても三人で取れる作戦なんて、あんまり無いけど……」


「それは、確かに……」


 ――三人まとまるか、二手に分かれるか、三人バラバラになるか……くらいか。

 

 悲しいまでに選択肢が少ない。

 ただ、それでもできることはやるしかない。


「ペロ、近くのピュアパラに後詰めを頼めたりする? もちろん来れる子だけでいいから」

「精霊ネットワークで呼びかけてみるペロ」

「モールの敷地には絶対入らないよう言っておいて。あくまで、私たちが救出したピュアパラを保護するのがメインで」

「分かったペロ」


「救出を目指すなら、分かれた方が良いよな。

 ただ、一人ずつ囲まれるとマズいか……」


「そうね。だから分かれても二手かな、って考えてる。私一人と、ナナとソラの二人」


「まあ、戦力的にそうなるか……」

「敵の拠点で単独行動は危険だと思う。三人でまとまった方が良いんじゃないかな?」

「いや、そうすると、ちょっとした時間稼ぎ一つで全員止められちまう」


 ナナの言うとおりだ。一網打尽にされたら目も当てられない。

 でも、ソラが言うことも分かる。


 ――人員は三人。時間は無い。連携も、境世界ではスマホが使えない。


「……そうだ。ペロ、他の精霊にも協力してもらえたりしない?」

「他の精霊? 多分後詰めのピュアパラと一緒に呼べるとは思うペロ」

「精霊ネットワークなら、境世界でも連絡が取れるでしょ? それなら多少はマシになるかなって」

「確かに。早速要請してみるペロ!」


 再びナナとソラに向き直る。

「二人とも、こうしましょう。

 まず、私とペロが先に入る。他の精霊が来たら、二人にも中に入ってもらう。その後は連絡取り合って、各自モールの中を探しましょう」


「……そう、だな。それくらいしか、もうできることないか」

「トアちゃん一人で本当に大丈夫?」


「ええ。トキアさんレベルのインピュアズは、そうそう居ないはずだもの。

 単独で私の暗殺なんて、敵からしたら重要な任務だったはず。それを任されたのは、トキアさん以上の存在が居ないから。実際、本人も殺人能力第1位と評価された、って言ってたし」


 ――だから、質の問題は大丈夫だと思うんだけど……


 数の不利は、もう『なんとかする』以上の作戦立てようもないので仕方ない。


「トアちゃん」

 と、そこでペロが私を呼んだ。

「……実を言うと、今回の件、トアちゃんたちには秘密にしよう、ってことになってたんだペロ。

 トアちゃんたちまで敵の手に落ちたら、ボク達人類側は敗北確定ペロ。

 だから、さくら地区の子たちを見捨るしかない、という意見が大半だったペロ」


「……大半って、それは精霊たちの?」

「でもあるし、ギルド側もほぼそうだったペロ」

「そう」


 無理もない。それが冷静で大人な判断だろう。


「でも、ボクは思っちゃったペロ。

 それでもトアちゃんなら……なんとかしてくれるんじゃないか、って」

「私にタマハガネ渡した時といい、精霊として失格なんじゃない? ペロって」

「いやもう、反論の余地無いペロ」


「でも、私の担当としては最高の判断よ。

 場所や建物だけならともかく、子供を見捨てるような判断する相手、二度と信用できなくなるところだったから」


「……トアちゃんにもナナちゃんにもソラちゃんにも、負担を掛けてごめんなさいペロ」


「もう言いっこなし、って何回言わせる気?

 私たちに気を遣う労力がもったいないから、やめてって」


「……ありがとうペロ。それじゃこれで最後にするペロ。

 どうか、さくら地区で戦うことを選んでくれた子たちを、助けてくださいペロ!」


「ええ。当然よ」


 薙刀を顕現して、右手に持つ。


「それじゃナナ、ソラ、先に行ってるね」

「ああ」

「気を付けて」


 二人の言葉を背に受けて、ペロと共に降りていった。

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