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女魔王、転生先で魔法少女になる  作者: ツツミ キョウ
2章 レクちゃん、お姉さんを拾う
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12

 お互い、傷が癒えるまで結構な時間が必要だ。

 その間ずっとこの殺風景な場所にいるのもつまらない。ホコリっぽいし。


 というわけで、ナナとソラに連絡して、一旦寄らせてもらえないかお願いしてみた。

 事情を説明すると二人は快諾してくれて、三人でお邪魔する。


「いらっしゃいませにゃ!」

「よく来たにゃ!」


 チャイムを押すや否や、チィとビィが飛び出してきた。ドアの向こうで待機してたらしい。


「……シチビ?」

 トキアさんが二人の姿に目を丸くする。


 二匹の後ろから、ナナとソラが姿を現す。

 ――気持ちトキアさんを睨んでいるようなナナと、朗らかにレクを見るソラ。


「いらっしゃい。どうぞ中へ」

「突然ごめんね」

「そんなの全然いいけど、何があったかはちゃんと聞かせてくれよ」

「うん、もちろん」


 ――さて、誰に、どこから話したものか。


 中に入る。ちなみに薙刀は消してある。


 リビングのソファで休ませてもらいながら、まずレクに説明することにした。

 ピュアパラのこと、妖魔のこと、ナナとソラのこと、ホムラのこと、インピュアズのこと、リトルウィッチィズのこと。


「……あんなの見たら、信じるしかないんだろうね」


 と、レクは自分なりに納得したようだった。


 次に、ナナとソラにさっきあった出来事を話す。途中、レクからこの数日の出来事も交えて。


「で、私とトキアさんの魂をつなげて、私が生きてる限りトキアさんも死ねなくした」


 そう締めくくると、二人は

「ふーん。……ん?」

「……今なんて……?」

 と聞き返してきた。


「自殺したかったら、私を殺すしかなくさせた。そうじゃないと怖かったから」


「いやいや……この人、本気出したらトアより強いんだろ?

 なら、本気で死のうと思われたら、負けちゃうじゃんか」


「その時までに私が強くなっておけばいい。

 トキアさんの戦い方は血を失うから、今すぐリベンジできないだろうし」


「……それはお互い様だけどね。お姉さんもボロボロでしょ……」

 と、ここに来て初めて挨拶(小声だった)以外の発言をしたトキアさん。


「それ、私の命とはできなかったの?

 お姉ちゃんより、私の方が殺せないと思うけど……」


 レクがそんな疑問を呈して、他の全員が彼女を見た。


「……いや、流石にレクにそんな真似させられないよ。

 まあ将来的に、二人の関係が順調なら、ゆくゆくはそうしても良いかもしれないけど」


 ――万が一にも、心中なんかされちゃ困るし……


「ふうん……」

 私の思いを汲み取ってか、レクは消極的に理解してくれたらしい。


「で。こうなった以上、トキアさんはリトルウィッチィズに入れたいと思ってる。

 ピュアパラを二人傷付けてるし、妖魔側の任務も最初から裏切ってた。両陣営から狙われる可能性がある以上、うちの傘下に入れたい」


「……お姉さんこそ、リトルウィッチィズの筆頭なんじゃないの? 私はその筆頭を思いっきり傷付けたけど……」

 トキアさんが素朴な疑問を口にした。


「私は勝ったし、もう気にしてないから。問題なし」


 トキアさんが次にナナとソラに目を向ける。

「二人はそれでいいの?」


「いや。そんなこと言い出したら私たちだって、トアのこと傷付けたし……」

「ええ。トアちゃんがいい、って言うなら、私たちに否定する権利ありませんよ」


「……みんな、人が良すぎる……」

 トキアさんの呟きに、ナナもソラも苦笑して顔を見合わせる。


「……二人ともありがとう。

 ただ、入れるって言っておいてなんなんだけど、なるべく戦わせたくない。

 今話したとおりトキアさんの怪我はほとんど自分で付けたものなの。戦うたびにこんな危ないことさせたくない」


「……自傷するからこその、強さってことか」

「本来住んでる場所も遠くだしね。最悪の最悪、本当にどうしようもなくなった時の切り札でいてくれれば、って思ってる」


「うん。良いんじゃないかな。協力してくれれば、だけど……」


 ナナとソラがトキアさんを見る。


「……別に、いいよ。お姉さんにはお世話になったし。

 それにいざというとき、お姉さんの近くに居られる方が、殺しやすい……」


「まだその中二キャラ続けるんですか?」

 レクがぶっ込んできた。


「……キャラのつもりじゃないんだけど……」

「どんな理由があれ、人を殺せる精神してませんよトキアさん。

『いつでも殺そうと思えば殺せる』みたいなポジション取ってますけど、無理でしょ。あなた小物なんだから」

「……言い過ぎだと思うな……」


 ――正直、横で聞いてて私もそう思う。


「いくらでも言いますよ。

『迷惑掛けたくない』から自殺したいんでしょ?

 ここに居る全員に多大な迷惑掛けてまで、自殺できるわけ無いじゃないですか。

 さっさと普通に味方になりなさいよ」


「もう! 心読まないでってば!」


 あ、戻った。


「別に読んでません。自分で言ってたでしょ。

 で、今は思いがけず生き永らえちゃって、さらに人見知りだから今どう立ち振る舞って良いか分からなくて、とりあえず自分みたいな人間に好意を抱かれないようにわざと……」


「やめてってば! なんなのこの姉妹! なんで自分でも良く分かってない心の中言葉にできちゃうの!」

「トキアさんが分かりやすいだけですよ」


 急に大きな声を出したトキアさんに、ナナとソラ、チィとビィも目を丸くする。

 次にレクを見て、私たち五人で目を合わせると、誰からともなく笑い合った。



   †



 それから、神恵邸で休ませてもらった。

 お昼もみんなでごちそうになる。


 夕方になる頃、やっと回復したタイミングで、私とレクは家路についた。


 ちなみにトキアさんは、今日はアパートに戻らず神恵邸で泊まってもらうことにする。


 ――敗北後、即自爆するよう仕向けていたホムラだ。

 不発だったことを知ったら、なにか手を打ってくるかもしれない。


 トキアさんには私の魔法が宿ってるから、ホムラ本人は無力化できる。けどそれ以外の相手には、そうもいかない。


 また別のインピュアズが差し向けられたりしたら、今の戦えないトキアさんに勝ち目は無いのだ。


 ということで、二人もそれを受け入れてくれた。

 後半はすっかり仲良くなったトキアさんを、チィビィも歓迎。この二匹とはなんだか波長が合うようだった。

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