表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女魔王、転生先で魔法少女になる  作者: ツツミ キョウ
1章 セヴンスヘヴンズ
26/77

エピローグIII

Interlude(インタールード) 【妖怪会議】~



「すまん! 失敗したにゃ!」


 てへへー、と後頭部を掻きながら、焔陸星――ホムラはその場の全員に報告した。


「したにゃ、じゃないでしょ……。原因と、改善策は?」


 角の生えた妖怪が、ホムラに問いただす。


「原因は、失敗作どもが予想以上にポンコツだったことと……」

「だから言ったのよ、失敗作使うな、って」

 ホムラを遮って、翼の生えた妖怪が悪態をついた。


「サンバ、失敗作だからと廃棄してたら戦力がすぐ底を突く。挽回の機会も与えるべき、って会議で決めたでしょ。

 それがダメだったなら仕方ないわ。それよりホムラ、続きを」

 角の妖怪が仲裁する。


 ちっ、と舌打ちをして、翼の妖怪は視線を逸らした。


「あと、トゥアイセンにそっくりな人間がいたにゃ!」


 その発言で、会議場は騒然となる。


「肉体は全く別物だったけど……魂と魔力の気配が全くと言って良いほど一緒だったにゃ!

 私の結界も拳一つで破ってきたし、話しながら毒の妖術を致死量の十倍くらい掛けたけど、完全に無効化してきたにゃ!」


「ホムラ、報告は正確にしろ」

「そうよ、仮にトゥアイセンの継承者が居たとしても、人間なわけがないでしょ」

「ホムラはトゥアを一番怖がってたけど、一番懐いてたからな……。幻覚でも見たんじゃない?」

「結界も張り忘れてて、毒も風向きかなんかの関係で届いてなかったんだろうし」

「きゃはは、ありそー、ホムラ、バカだし」

「失敗の言い訳としては見苦しい」


 口々にホムラを否定する妖怪達。


「う、嘘じゃないにゃ……、あと懐いてなんかないにゃ……」

 涙目になって反論するも、自分でも現実味がないと気付いたのか、声が小さくなっていく。


 と、そこでホムラの頭を撫でる妖怪がいた。

「……私は、信じる」

 長い二つの兎耳の、小柄な妖怪だった。


「センガぁ……」

 ホムラが思い切りその妖怪に抱き付く。


「ホムラの体に、確かに、トゥアイセンに似た魔力が、残ってる。……気がする」

「……気がするだけかい……」

 角の妖怪が小声で呟く。


「ふはは! ナンバー2がそう言ってるにゃ! ザコどもは黙ってるにゃ!」

 後ろ盾を得て、俄然高圧的になるホムラ。


「……まあ、いい。で、改善策は?」

 角の妖怪が話を戻す。


「もちろん、これからは最高傑作達を使うにゃ。全員、ピュアパラなんかに負けるわけがないにゃ」

「……ん、信じてる」

 兎の妖怪がホムラの顎下を優しく掻く。


 ホムラは「ゴロニャン……」と兎の妖怪にすっかり身を委ねた。



「センガは本当にホムラが好きだな」



 その声で、会議場の空気が一変する。

 私語やざわめきはピタリと止んで、まるでその声そのものに威圧感が備わっていたかのように。


「ん、好き。可愛いし、頑張ってる」


 唯一、声の主と同格のセンガだけは、いつも通り返事する。


「にゃふふ、私もセンガ、大好きにゃ」

 ホムラも同じように、特に変化は見受けられない。

「ふふ、嬉しい」


 じゃれ合う二人。

 そして、そんな二人を微笑ましそうに眺める、威圧感の声の主。


「……まあ、この二人はいつものこととして。

 ともかく、だ。諸君」


 威圧感の声の主が立ち上がる。

 この場の上座、もっとも豪奢な玉座に座っていた、彼女達の王。


 一見、人間の少女と変わらない見た目だが……口を開いた時に見える犬歯だけが、鋭く長く伸びていた。


「15年かけて、これだけの戦力が集まってくれた。

 15年前、ほとんど無計画で放り出された時はリディオを恨んだものだが……集まってくれた諸君には感謝する。

 そして、ホムラの研究のお陰で、塔の外に戦力を置くことすら出来た。これで、計画が50年は早まったと見て良い。

 直情的でいい加減なところもあるが、実力は周知の通り、第三位にふさわしい。まあ、適当に付き合ってやってくれ。


 と、いうわけで、だ。雌伏(しふく)はそろそろ充分だろう。

 天界がなにやら邪魔してきてるようだが、取るに足らん。

 この世界、壊して殺して犯して――奪い取るぞ」


 割れんばかりの鬨の咆哮。

 

 単純な戦闘力なら妖魔よりも優れた、妖怪という種族――

 その優位性を示す戦いが、ついに本番の幕を開けた。



   †



 会議が終わって。

 兎の妖怪と、王が二人きりになる。


「センガ。報告書には、トゥアイセンに似た、という部分は全て削除してくれ」

「ん。そんなこと書いたら、絶対、生け捕り、言ってくる」

「どこまで信憑性があるか分からんが……そいつは早々に消すか、あるいは……」

「……有能なら、内緒で私たちに、引き入れる」

「そういうことだ。頼んだぞ」


 そう言い置いて、去ろうとする。


「待って」

 その言葉に王が立ち止まる。

「ホムラに、ご褒美、あげて」

「…………」

「…………だめ?」

「……いや、そんなことはない。この後ホムラの部屋に寄ってやろう」

「ん。きっと、喜ぶ」

「今日は何時に帰れるかな……」

 くすくす、と兎の妖怪の笑い声。



 この世界を侵略しに来た妖怪のトップ3人は……とても仲良しだった。

 それは、元々なのか。

 それとも、何かの共通項――たとえば、共通の知人の存在――が、彼女達の絆を強めているのか。

※次話から毎日17時更新となります

================================================

ここまでお読みいただきありがとうございます。

もし「面白い」、「続きを読みたい」などと思っていただけましたら、

↓にある星の評価とブックマークをポチッとしてください。

執筆・更新を続ける力になります。

何卒よろしくお願いいたします。

「もうしてるよ!」なんて方は同じく、いいね、感想、お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ