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女魔王、転生先で魔法少女になる  作者: ツツミ キョウ
1章 セヴンスヘヴンズ
23/77

16

「第三勢力……?」

 カリンさんが小声で聞き返してきた。


「はい。二人がしたことは確かに、ピュアパラの皆に嫌悪されて当然だと思います。そんな彼女達に無理矢理言うこと聞かせても、すぐほころびが出るでしょう。

 だから、私たちが別勢力となるのが、最も丸く収まると思うんです」


 これが、この二日で考えた対応策。

 二人はそもそもピュアパラじゃないし。

 無理に協力してお互い疑心暗鬼や猜疑心に捕らわれるより、ずっと健全だ。


 スカーレットをはじめ、二人がトラウマになっちゃってる子も居るだろうし。ヴァイオレットをはじめ、敵対心しかない子も居るだろう。


「なので、私たちの基本方針はピュアパラと変わりません。妖魔を倒し、塔を破壊する。

 ただし、ピュアパラの方から先に危害を加えられた時、私たちは反撃を躊躇しません」


「……なる、ほど……」

 トモエさんがペンを持った手で口を押さえながら、考え込む。


「ただ、ピュアパラではなくなると、春日野さんが変身できなくなったりするんじゃないですか……? どうなの、ペロ」

 シズカさんがペロに矛先を向ける。


「うん、タマハガネは天界のシステムペロ。『ピュアパラ』である必要があるペロ」

「ふふっ、その辺も確認済みよ。ね、スォー?」


「はい。主様には先日説明させていただきましたが……」


 そこでスォーに視線を向けると、チィとビィがこれ以上無いくらいスォーに寄りかかっていた。スォーも、そんな二人を両手で抱きかかえている。

 ……ちょっと目を離した隙にめちゃくちゃ仲良くなっていた。


「私は現在、天界の支配権から離れています。トア様と共にある限り、機能に変わりはございません」

 事前の打ち合わせ通り、『支配権が私にある』とか『書き換えられた』という言葉は出さず、スォーは答えてくれる。


「え? そうなんだペロ? ……待てよ、ということは……」

 ――ペロがなにか感付きそうだ。


「とにかく! 以後は同じ目的を持つ勢力同士、仲良くしていただけると嬉しいです!」

 無理矢理話を元に戻す。

「新しい情報が入ったら、都度情報提供します。私たちに協力して欲しいことがあれば、現場とトラブルにならない限りは協力します。

 あ、あとペロはスパイになりました」


「なりました!? 過去形ペロ!?」

 驚きすぎてペロの毛が逆立った。


「私たちがなんか悪いこと企んだ時はペロがチクるので、ご安心ください」

「おかしいペロ。二人にはがっつり意思確認するのに、ボクは拒否権すらないペロ……」


「……シズカさん、どう思います?」

 トモエさんが隣のシズカさんを見る。


「……そうですね。私は、支持したいです」

 トモエさんがシズカさんを見返し、苦笑いを見せた。

「二人の処遇は、ギルドでも先送りになっていました。

 普通の施設には送れない、実の両親も衣食住と金銭面以外は関与する気が無い、なんとか学校には行けても先の展望は難しい……

 私個人としても、このままじゃいけないと思いながら、どうしてあげていいか分からない状態だったんです」


 そこで、次に私に視線を移す。


「春日野さんの案は、二人の居場所になってくれると思うんです。

 大人が何人も頭を悩ませて、それでも用意してあげられなかった、二人が居て良い場所。二人を認めてくれる場所。

 13歳の子に頼るのは恥ずかしい限りですが……どうしてか、引き込まれるような頼もしさを覚えています。

 なので今は、『どうかお願いします』って頭を下げたい気持ちで一杯です」


 そして再び、トモエさんに視線を戻した。


「……私も、春日野さんの案は、それしかない、って感じました。二人をピュアパラ側に取り込むなら、被害に遭った子のためにも罰を与えないわけにはいかない。でも、戦力にはなってほしい。

 別の勢力下に居るなら罰を与えられなくて当然だし、協力してくれるのなら、戦力になってくれたと言えなくもない」


「それじゃあ……!」


「一応春日野さん担当と、ナナさんソラさん担当の二人が合意してるわけですし。

 皆さんが独立勢力となること、ギルドにも共有しておきますね」


「すみません、ありがとうございます」

 深く頭を下げる。


「あはは、お礼言われるのも違う気がしますけど……どういたしまして、です」

「そうですね。こちらこそ、ありがとうございます」


 シズカさんがナナとソラを順に見渡した。


「現実世界で困ったことがあったら、引き続き言ってくださいね。役立たずな大人ですが、できる限り手伝わせていただきます」


「そんな、そんなこと、ありません……、こちらこそ、本当にごめんなさい……。

 シズカさんの、お陰で、中学に行けるようになって……トアちゃんとも、出会えて……

 だから……これからも、よろしくお願い、します……」


 言いながらソラは涙をこぼして。

 シズカさんがソラの両手を優しく握る。


「ソラちゃんのこと泣かせちゃった。ナナちゃんに怒られちゃう」

 なんて、シズカさんは冗談めかして言った。


「いや、そこは、ソラが泣き虫なだけなんで」

「だって、シズカさんも悩んでたなんて、思って無くて……自分がいかに、視野が狭かったか……

 ていうか、ナナもちょっとは感動しなさいよ!」

「お前が先に泣くから、泣くに泣けねえんだよ……」


「ふふっ、相変わらず仲良しさんね」

「……でも、すみませんでした。これからも、よろしくお願いします」

 ナナもシズカさんに頭を下げる。


「こちらこそ。引き続き、よろしくお願いします」

 そんなナナを、成長を喜ぶ親戚のような優しい目で、シズカさんは見つめていた。




「ねえ、春日野さん」

 そんな三人を横目に、カリンさんが声を掛けてくる。

「第三勢力って言うけど、名前はなんていうの?」


「……名前?」

「いやほら、これから皆のこと呼ぶ時に、第三勢力第三勢力呼ぶのも変じゃない?」


(……確かに。私たちの勢力の名前……)

「……全然考えてなかったです」


「あっ! おかわり? 私が注いであげるよー」


 スォーがカウンターに向かうのを見て、カリンさんが立ち去っていった。


(……勢力名、今決めちゃお)


 他の勢力が『無垢の戦士』と『不純な者達』だけど……

 自分から無垢とか不純とか言いたくないし……


 だとしたら、戦士の対義語で魔法使いとかどうだろう?

 これならピュアパラに似た姿でも、明確に違う存在だと表現できる。


 ただ、魔法使い、だけじゃ味気ない。

 私たちは女だし、女魔法使い……魔女、とか?


 いや、まだいまいち。魔女だと老婆のイメージもあるし。

 だとしたら……


(……魔法少女)


 うん、良い感じじゃない?


「私たちの勢力名、決めました」

「あら、早いですね」

 トモエさんがメモ帳とペンを用意する。


「以後、私たちは『魔法少女軍(リトルウィッチィズ)』を呼称します」


「リトルウィッチィズ……小さな魔女で、魔法少女ですか。なるほど、可愛い名前ですね」

「経緯が経緯なので、ナナとソラは将軍とします」

「えっ? 二人が将軍なら、春日野さんは……?」


「私は王です。魔法少女の王なので……略して、魔王になりますね」

「急に物騒に……」

「ふふっ、その方がしっくり来るんですよ、私」




 こうして。

 私は転生した世界で、『魔法少女』になった。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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