第8話 屋内プールを護らねば!後編 百発百中でブラが外れるなの
リンの言う通りあっという間にスライダーの順番が来るなの。もちろん一番上の勢いのあるやつなの。
「こちら二人乗りになっております、三人の方でしたら一人の方がこちらの一人用をお使いになってしまうのですが……」
「ひ、一人ですか……あ、わたしはスライダー全然怖、怖くなんてないので、リンさんランさんで行ってください」
「大丈夫マコちゃん、顔色が悪いわよ?」
リンもマコも違う意味で顔色が悪いなの。てかリンはもう少し温水流れるプールに流されておけば良かったなの。寒そうでこっちまで寒くなるなの。
「ワタシが一人で行くなの」
「え? ランさんちょと───」
相も変わらず凄い勢いでスライダーするなの。途中で真っ暗になったりするところとか、身体が浮くところが評価高いなの。
ワタシ一人でスライダーしたのは別にマコの為じゃないなの。ワタシ一人で行くとクルクル回転する面白さがあるのと、もう一つ重要なことがあるなの。
リンに事前にブラの紐をキツく締めておけと言っておいたなの。けど結果は。
「───ふはああぁ! いい勢いね……ってあッブラジャーが外れちゃったわ!」
百発百中でブラが外れるなの。
リンがスライダーするとこれが起きるから、ワタシがリンのお胸を護らねばなの。今回はマコが居るからマコが盾になってる隙にワタシがブラを探すなの。
「わわわわ、わたしがリンさんをお護りします! 警察官は秩序と安全と景観を護る仕事ですから!」
「……ありがとマコちゃん、ちょっとくっつくわね……ってマコちゃん!? マコちゃんが気絶しちゃったわ!」
「はいブラなの」
「ありがとランちゃん! 早くマコちゃんを……」
「ほっとけばマコは大丈夫なの」
気絶よりカルパスが喉に詰まったりする方が心配なの。とりあえずマコは椅子の上に伸ばしておくなの。マコはカレイのマコより弱くて変態なの。
「……はっ! 三途の流れるプールを見ました」
「それは良かったなの」
「え?」
「ランちゃんマコちゃん! 今度はドクターフィッシュの体験コーナーが空いてるわ! さあさあ行きましょ~」
「……え? わたしあまり心配されてない……」
落ち込むマコを引っ張ってドクターフィッシュと触れ合える足湯に来たなの。ドクターフィッシュは温水を好むらしいなの。
「ふふっくすぐったいわ」
「魚がクパクパしてるなの、少し気持ち悪いなの」
「そうですか? わたしはドクターフィッシュ好きですよ、だってこんな群がって……」
「ドクターフィッシュにはリラクゼーション効果やマッサージ効果が……あ、私のドクターフィッシュがマコちゃんに取られちゃったわ」
「マコに吸い寄せられて行くなの」
「……」
「マコって足き」
「違います! ドクターフィッシュは元々一箇所に集まりやすいんです! ……決してわたしの足が……うぅぅ」
マコが涙目になってるなの、いい大人が魚ごときに泣かされてるなの。
「マコちゃん足見せてくれる?」
「え? はいどうぞ」
「……やっぱりね、マコちゃん足に切り傷があるわ。ドクターフィッシュは傷がある人に集まりやすいの。多分さっき気絶して運んでた時に、プールによくある謎のゴツゴツした壁に足を擦っちゃったんだわ」
「え、マコの足血出てるなの?」
「うん、まあこれくらいなら……ってランちゃん!?」
マコが足を怪我したなの。ワタシがマコをリンの盾にしたから、マコを椅子に運ぼうって言ったからいけないなの。
シャワー室にある絆創膏で応急処置するなの!
……人がいっぱいなの、前、通れない、ッわ!
「───危ないですよランさん! 一人で行ってははぐれますし、今転びそうになりましたよ?」
マコがワタシの身体を支えてくれてるなの。……足から流れてる血を気にせずワタシを追いかけてくれたなの。
「ごめんなさいなの、ワタシのせいで」
「いいんです、それにこれはわたしの自業自得ですからね。わたしは一人で戻ってますから」
「一人はダメってマコも言ったなの、そうやっていつも一人で行動するなの」
「……へへっランさんは優しいですね」
「……もうもうなの」
人混みの中リンが追いついて来たなの。
リンは一人にするとよく男女関係なくナンパされるから、おそらくそれで遅れたなの。
「あ、いたいたランちゃん! 大丈夫? どこか怪我は」
「全然大丈夫なの! リン、マコを連れて外に出るなの、プールとおさらばなの」
「……そうね、私達も行きましょうか」
ワタシ達は仲良く三人プールを後にしたなの。シャワー室でリンは遊ばずに素通りしてったなの、少し遊べばいいのになの。
シャワー室で脱いでる時マコが赤面してたけど貰ったカルパスに免じて見過ごしておくなの。
「リンさんランさん、今日はありがとうございました! また会いましょう!」
「じゃあね~」
「カルパス~」
……今日の朝と同じぽっかりしてきたなの。やっぱりマコはマコだったんだなの。
「予定より早めに終わったから少し営業しますか」
「……そうなの」
またいつものキッチンカーの日常に戻るだけなの。ワタシを支えてくれたあの時の温もりがまだ残ってるなの。
「大丈夫よ、さっき電話番号とライン交換したしいつでも会えるわ」
「うん、大丈夫、大丈夫なの! きっとまた前触れも無く突然現れるなの!」
「あーまた戻りました」
「わ! 前触れも無く突然現れるななの!」
心臓に悪いなの、物理的にぽっかりしようとするななの。
「どうしたのマコちゃん?」
「実は私の自動車が何者かに盗まれてしまって、警察官のわたしとしたことが……」
「それは良かったなの!」
「「え!?」」
自動車が無くなったマコが来たってことはつまり。
「一緒にキッチンカー乗るなの!」
「いいんですか!?」
「もちろん私もオッケーよ!」
「さっさと乗るなのー!」
マコを逃がした今日、またマコがキッチンカーに来たなの。マコのスペースはフライパンじゃ無くなったけど、狭いキッチンカーもこれはこれで良いなの。
朝冷えていたワタシは、もうぽっかぽかになったなの。