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第7話 屋内プールを護らねば!前編 笑わせて貰いますはっはっはーなの

「海へお帰りなの……」


 マコを箱から発見した次の日の朝、とうとうマコを逃がす時が来たなの。フライパンの中で大人しくしてたマコは、元気にスイスイ泳いで行くなの。


「元々カレイは浅瀬に生息してるけど、この時期の子持ちカレイは特に浅い場所に集まるのよ。ここから岩礁も近いし、マコちゃんはしっかり生きていけるわ」

「……なら良かったなの」

「ふふ、少し寂しいわね」

「少しじゃないなの、たくさん寂しいなの」


 マコがもう遠くに行って見えなくなったなの。何かぽっかり穴が空いちゃったみたいなの。


「……ランちゃん大丈夫よ! 今度水族館にでも行きましょ!」

「うん、水族館行くなの……」

「……良し、そんなランちゃんの為に一肌脱しましょう!」

「……ってわ! 物理的に脱ぐななの!」


 十二月末なのにこの女水着姿になってるなの!

 一体いつから用意してたの……ん?

 水着ってこの凍える海の中入って行く気なの?


「冬の海にも入る人達だっているのよ。人を救出するお仕事も寒いなんて言ってられない、私達だってお客さんを笑顔にするためなら冬でも海に入るのも当然よ!」

「ただの店主が寒い海に入ってもお客さんを笑顔に出来ないなの! 出来ても苦笑いとうすら笑いくらいなの! と言うか海に来てる人誰もいないなのー!」

「私は浅瀬で安全行動してるから大丈夫よ!」

「冬の海に入る行動そのものが安全じゃないなの」


 ブレーキが壊れたリンは肩を震わせながら海でバシャバシャし始めたなの。もう困ったさんなの。


「ふふ」

「何がおかしいなの、脳みそも震え始めたなの?」

「海に来てる人はいないって言ってたけど、私は一人笑ってくれただけで十分なのよ?」

「……! もうもうなの」

「ふふ」

「えへへ」

「ふふふふふふふふふふ」

「ちょリン!? 様子がおかしいなの! 顔が真っ青に……血が巡ってないなの!? 今助けに行くなの───!」





 ◇◆◇





 ずぶ濡れになったワタシ達はこたつに交代ごうたいで入りながら温まったなの。それでも尚冷えた身体の為、温められる場所を探したなの。そして辿り着いた場所が。


「着いたわね、屋内プールがあるウォーターパークに!」


 もうランは否が応にも水で遊びたいだけなの。海に近い場所に無かったからわざわざ高速道路を使ってまで来たなの。身体はプルプル震えてるくせに頭はぽっかぽかな幸せ者なの。


「今日は休日予定だったしパーッと遊びましょ」

「リン、そっちはお土産コーナーなの。シャワー室はこっちなの」


 シャワー室には身体を洗うシャワーパイプがあるなの。学校のプールの授業で第一関門に現れる寒いアレなの。

 このウォーターパークは温水プールがあるのにこのシャワーパイプから出る水は冷水、強制じゃないのが救いなの。まあ消毒効果もあるしちょっとは入っておくなの。


 そう、ちょっとでいいなの。


「あばばばばばばッランちゃんごれ滝行みだいでずごばばばばばばッ!!!」


 もうリンは救いようの無い哀れな女なの。海での出来事を学ばない失敗を繰り返すタイプなの。

 それにシャワー室で全力で遊んでいる人間を初めて見たなの。この絶滅危惧種を護らねばなの。


「寒いッ! あ、あれが流れる温水プールねッさささあ入りましょ」

「人がいっぱいいるなの。はぐれないように手を繋ぐなの」


 もうワタシがリンの保護者みたいなの。


 手を引くアタシとリンはプールに流れるなの。浮き輪を装着したワタシは完全防御形態なの。


「浮き輪もっと押すなの」

「ラジャですラン大佐、おらー!!!」

「速すぎなの! 前、前ぶつかるなの!」


 浮き輪の前方が誰かの背に激突したなの!


「ごごめんなのっ」

「あれ、また会いましたねリンさんランさん」

「あー! カルパスなの!」


 カルパスが居るなの!

 あっさり顔がカルパスに見えてきたなの!

 カルパスカルパスカルパスなのー!


「奇遇ねマコちゃん、こんにちは~」

「ランさんカルパ」

「カルパスくれなの」

「わかりましたって今カル」

「カルパスくれなの」

「もー! プールにカルパスは常備出来ないんです! わたしの口の中に何本かストックして少しずつ食べてるんです!」

「マコちゃんは誰と一緒に?」

「……」

「「……え?」」

「一人ですよ、ぼっちですよ! ぼっちで流れるプールしてて何が悪いんですかあああ!!!」


 変態なの!!!

 大人一人でカルパスを咥えながら流れてる変人で変態がここにいますお巡りさん。あ、こいつお巡りさんだった、笑わせて貰いますはっはっはーなの。


「口移しでカルパスくれなの」

「えええ!? ダメですランさんッそんな、口開けながら見つめないでく」

「冗談に決まってるなの」

「……そうですよね」


 フッ……この前カルパスをくれなかった罰なの。手のひらで弄んであげたの。


「ランちゃんマコちゃん、ウォータースライダーが空いてるみたいよ! 流れたばかりだけど並びに行かない?」

「スライダーするなの!」

「一緒にいいんですか!? へへへ行きましょう!」

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