ゾンビと僕との関係性について
僕の友達の友達はゾンビだ。
この話をすると、
「人間がゾンビなんかと友達になれるの?」
と言って、みんな驚くが、人間に良い人と悪い人がいるように、ゾンビにも良いゾンビと悪いゾンビがいるのだ。
よく映画などに出てくる、人間を喰らおうとするゾンビは悪いゾンビだ。しかし、僕の友達の友達のゾンビは、良いゾンビなのである。
まず、第一に礼儀正しい。
「おはようございます!」
と、すごくハッキリした大きな声で挨拶をしてくれる。
動作はきびきび、言葉はハキハキといった感じで、とてもサッパリとした印象を与えるので、みんなからも「さわやかさん」と呼ばれ親しまれている。
バイト先でも、率先して重い物とかを持ってくれるので、女の子人気も高いそうだ。たまに腕がポロッととれるのがたまに傷だが、まあまあみんな大目に見ているようである。
さらに彼は身だしなみにもとても気を使う。一般的に、ゾンビと聞いてすぐに思い浮かべる服装はボロボロの服だと思うが、彼はそんな服は着ていない。いつも襟付きのピシッとした服装を心掛けている「おしゃれさん」である。
服装だけではなく、夏になると日焼けとかもしたがるし、引き締まった肉体をキープするためにスポーツジムとかにも通っている。
そんなアクティブな彼だが、意外と読書家でもある。
ゾンビで読書家と聞くと、ホラー小説とかが好きなのかな、と思ってしまいがちだが、実際は歴史小説がすごく好きで、幕末に関してはちょっとうるさいのだそうだ。
それに対し、ホラー小説はあまり読まないと言っていた。ホラー小説の中にゾンビが出てこなかったら寂しいし、出てきたら出てきたで、その扱われ方に腹が立つからだそうだ。
そんなこともあるのだろう。一生懸命勉強して、いずれ政治家になり、ゾンビの社会的地位を向上させることが彼の夢なのだそうだ。向上心があり努力家である彼なら、本当にいつか夢を叶える日が来るかもしれない。
……と、まぁここまで彼の良いところばかりを紹介してきたが、もちろん彼とて完璧ではない。短所だって当然ある。
結構、お金に細かいところがあり、みんなで食事に行った時なんかは、絶対一円単位でワリカンをするそうだ。
他にも顔がくずれているので、怒っているのか笑っているのか、表情がわかりづらいという欠点もある。
うっかり機嫌の悪い時に話しかけてしまい、理不尽なキレ方をされた人もいるらしい。
ちなみに僕が嫌だったのは、話をしている時にボロッと目とかが落ちること。これは彼もわざとやっているわけではないので、非はないかもしれないが、でもやっぱりどうしても気になるのだ。
僕は参加していないが、こないだみんなでディズニーランドに遊びに行った時なんかは、もっとひどかったそうだ。
彼がはしゃぎ過ぎてしまい、左手の中指がどっかにいってしまって、ほとんど一日、それをみんなで探していたそうだ。一緒に探してくれ、と泣いて頼まれたら、さすがに断るわけにもいかなかった、と友人は言っていた。それを聞いた時、僕は参加しなくて本当に良かったなぁと思った。
コンビニとかに売ってる普通の水ではそんなことはないが、神社とかにある水を柄杓ですくって、彼にピチャッとかけると、ちょっと溶ける。やはり、良いと言ってもゾンビはゾンビ。人間とは相容れない、忌むべき存在なのかもしれない。
こんなふうに言うと、僕のことを友達甲斐のない奴と思う人もいるかもしれないが、僕と彼とは友達ではない。あくまでも友達の友達である。
そのぐらいの関係性で本当に良かったなぁ、としみじみ思う。
-終わり-