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超絶勇者ブレイブマン  作者: タチバナ
激闘!愛羅武勇編
56/57

49.告白の季節

 告白の季節。それは"いつ"か――。

 クリスマスやバレンタインデーを控えた秋頃か、あるいは新しい生活が始まる3月や4月という意見も多い。

 しかし、学生にとっては長期休暇のある夏も見逃せない季節だ。独りで過ごすには退屈なほど長い休みも、恋人と過ごすなら充実したものとなるだろう。

 だが、もしも夏休み前に告白し失敗したのならば、2学期に再会するとき気まずい思いをするのでは……?


 そんな考えは、ふたりがクラスメイトであるという前提だ。そんなデメリットが少ない関係性もある。

 そう、これが別々のクラスだったり先輩と後輩の関係だったりしたのなら!

 告白失敗→2学期以降は顔を合わせないようにできるという小さなリスク、告白成功→ひと夏のアバンチュールという大きなリターンを実現できるのだ!!


「緋色先輩! ずっと前から好きでした!

 私と付き合ってください!!」

 校舎裏でひとりの女子生徒が勇気を呼び出し、精一杯の想いを伝えた。

 その女子生徒は三つ編みヘアーでどちらかと言うと大人しいタイプに見える。

 だが、そんな彼女が先輩である勇気に告白したのは、どうしようもなく恋焦がれてと言うより、先の通りの計算があるが故だ。

 これが終業式の前日だというのも上手い。終業式のときにはバタバタしていて告白のチャンスなどないだろう。

 それを見抜いたうえで、勇気はどう応えたものかと思案した。尤も答えは初めから決まっている。それをどう伝えれば、一番彼女を傷付けずに済むのか……。


 そんな様子を校舎の角から盗み見ている少女がひとり。

 あのお方こと花道勝利に命じられて、勇気たちのことを監視している百地忍という少女だ。

 勝利様の弟、――正義くんとは特に関係なさそうな光景だが、それでも何があるか分からない。

 少しでも気になることがあればすべて報告するのが拙者の任務だ。余計なことに気を取られず、一挙手一投足を観察しなければ……。


「あれ、百地さん?」

「ひゃあ!!?」

 と、そこにもうひとりの少女がやってきた。忍のクラスメイトである佐藤愛だった。

 正面に集中していたせいで背後からの気配に気付かなかった……。くっ、こんな調子じゃ忍者失格でござるね……。

 愛は忍を驚かせてしまったことに申し訳なさそうにしながら言った。


「あ、ごめんね。急に話しかけちゃって。

 それより勇気くん探してるんだけど、百地さん見なかった?

 今夜は急に家族と外食に行くことになっちゃって、道場休ませてもらおうかなって」

「え、ええっと……」

 忍の目線が泳ぐ。校舎裏のほうに視線を戻し、告白タイムのふたりを見るが、まだ見つめ合ったままだった。

 先程はうっかり素っ頓狂な悲鳴を上げてしまったが、どうやら気付かれていないようだった。

 だが、一方で愛は忍の視線を追って校舎裏のふたりに気付いたようだった。


「あれって……」

「ああ……、何か密談をしているようでござるね……」

「百地さん、もう少し隠れないと見つかっちゃうよ」

 愛は忍の腕を引っ張り校舎の角から顔だけを覗かせた。忍もそれに倣って、愛の顔の下からふたりの様子を覗いた。

「いやー、百地さんもいい趣味してるね。こういうの覗き見るのが好きなんだ?」

「せ、拙者はその、たまたま通りがかっただけで……」

「あはは、そんなこと言いながら、しっかり覗いてるじゃん。私もだけど」

 拙者はあくまで任務で――。なんてことは、当然のことながら言えない。

 それに実際のところ忍だって思春期の女の子だ。色恋沙汰に興味がないというわけではない。

 しかし、それはあくまで自分とは無縁の遠い世界のことで、自分がその当事者になることはないと思っている。

 だからこうして他人ひとの恋愛模様を観察することに楽しみを見出しているのは否定できない事実なのかも……?


「だから俺は君とは――」

 勇気の声が聞こえてくる。小さな声だが、聴覚を鍛えている忍にはすべて聞こえていた。

「そんな……」

 やがて、三つ編みヘアーの少女は涙目になりながら肩を落として愛と忍とは反対の方向に去っていった。

 愛と忍が予想していた通りだが、どうやら告白は失敗したようだった。

 そして勇気はすぐに踵を返してきた。……そう、愛と忍がいる場所へと。

 ふたりは慌てて身を隠そうとしたが、間に合わず勇気に見つかってしまった。


「あれ、愛ちゃん? それに百地さんも。珍しい組み合わせだね」

「にゃーはっはっは、よくぞ気付いたニャ、ブレイブマン!

 この私が物陰から貴様を不意打ちしようとする計画に気付くとは、」

「いや、そんなんで誤魔化されないから。誰かがずっと覗いてるのは気付いていたよ」

「ほほう、さすがはブレイブマンだニャ! それでこそ私の永遠のライバル!」

 愛は悪びれる様子もなく地獄のミャーコとしてヒーローごっこを続けた。

 一方、忍はと言うと、申し訳なさそうに身を縮めているが、もちろんそんなことでこの場を切り抜けられるわけはなかった。


「それで? 愛ちゃんはともかく、百地さんはなんでここに?」

「い、いやー、何か話し声が聞こえたので……」

「校舎裏の話し声が? 随分と耳がいいんだね」

「そ、そう! そうでござる! 拙者は聴力には自信があるのでござるよ!!」

 なんの言い訳にもなっていないが、忍はそう胸を張って応えた。

 勇気はそんな忍をじっと見つめていたが、やがてふっと微笑みを浮かべるとこう言った。


「まあ、別に聞かれて困ることは何もないけどね。

 でも、他人ひとの話を盗み聞きするのはいい趣味だとは言えないなあ」

「そうだよ、反省して、百地さん!」

「愛ちゃんもだよ! というか、俺に何か用でもあるんじゃないの?」

「あ、そうだ。あのさ、今夜の道場なんだけど――」

 ……どうやら、彼はたまたま告白の様子を盗み聞きしていたとしか思っていないらしい。

 それならどうにか助かった。正義くんの周囲について調べることが、あのお方からの指令だとは疑われる心配はないだろう。

 忍はそう胸を撫で下ろしながら、ほっと溜息をついたのだった。

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