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超絶勇者ブレイブマン  作者: タチバナ
激闘!愛羅武勇編
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47.同人イベント

「すごい数の信者が集まってきている!」

 叫び声が同人イベントの会場に響く。その声の主は知恵であり、眼鏡がきらりと輝いていた。

 このイベントは一次創作作品も含む大規模な合同イベントである。

 それ故に様々な作品のサークル主やファンが一堂に会し、昼過ぎだというのにまだ多くの参加者が残っていた。

 その人混みをかき分けながら、愛は感嘆の溜息を漏らした。

「うわー、ホントだ。すごい人だかり。

 空いてるくらいの時間に来ようと思ったのにね」

「まあ会場も広いし、一周しただけでは全部のサークルを回れるわけでもないから、何周もしてる人もいるんでしょうね。

 待機列がなくなってから、次の待機列を作ったりもして……。まるで将棋だな」

「知恵、なんか変なスイッチ入ってない?」


 すっかりオタクモードに切り替わった知恵と、同じくこうしたイベントには慣れている愛とは違い、何もかも初めてな可恋は戸惑うばかりだ。

 買ったカタログが入場証代わりになるというのも、先程の受付で知ったばかりだ。

 ちなみに受付では年齢確認を求められたが、全員中学生であると正直に自己申告しているため、R-18作品の購入は不可能だ。

 とは言え、このイベントはR-18率はそれほど高くないし、目的は可恋がなんとなくでも同人イベントの雰囲気を味わうことだ。問題はないだろう。


「河合さん、どこか気になるサークルとかあるの?

 あ、サークルっていうのは、専門用語ね……。その作者の席があるスペースとでも言えばいいのかしら」

「あ、言葉はなんとなく分かるよ。ただ、どれがBLの作品なのか分からなくて……」

「BLねえ……。パッと見た感じ、このイベントではあんまりなさそうよね。

 しかも非R-18のギャグ本や日常系でってことよね。とりあえず一周回ってみるしかないかしら」

「どのみち、どういう作品があるのかを知るのも勉強だし。とりあえず行ってみようよ、知恵!」

 こうして、一行はサークルを見て回ることとなった。


 そして可恋は圧倒されるばかりであった。まずこれだけの人たちが「同人誌」(厳密にはグッズなども含める)を買い求めに来ているという事実にもだが、ジャンルごとに分けられた机の上に並べられた同人誌の数にも驚かされた。

 小説・漫画問わず、数え切れないほどの本が並んでいる。みんな、それぞれの思いの丈をこうして創作活動にぶつけているんだ。

 その中には目を見張るような美しいイラストも描かれているけれど、上手い下手の問題じゃない。

 熱い魂が込められた創作物がこんなにも目の前にあるということが何よりも可恋を感動させた。

 ……のだが、女性が肌を露出させていたり男性同士で絡み合ったりしているイラストを見ると、つい赤面をして目を逸らしてしまっていた。


「可恋ちゃん、大丈夫そう? 同人イベントってこういうところだけど」

「あ、うん……。ちょ、ちょっと刺激が強いものもあるけど、楽しいよ、すっごく」

「そっか。それならいいけど、もし何かあったらすぐ言ってね」

「ありがとう、愛ちゃん」

 愛としては顔を真っ赤にする可恋をからかうつもりなどない。むしろ気分が悪くなっていないか心配だった。

 ただでさえオタクが密集するとあっついし、汗臭いし……。

 室内だから冷房は効いているけれど、それも追い付かないくらいに室内の温度は上がっているし、換気の面でも不安が残る。

 もちろん運営スタッフの人たちは一生懸命やってくれているだろうけど、可恋は過酷な環境に耐えられるほど身体が強いわけではないのだ。

「まあ、30分くらいで切り上げればいいんじゃない? 今回はあくまでお試しなんだし」

「知恵……、両手に中身いっぱいの紙袋持って、そんなこと言われても……」

「う、うるさいわね! 私が好きなもの買うのは自由でしょうが!!」


 同人イベントを十二分に満喫している知恵はさておき、可恋は結局1冊しか同人誌を買わなかった。

「それだけでいいの?」

 愛が訊ねると可恋はこっくりと頷いた。

「初めて参加するイベントだから、『これだ!』って1冊に絞って思い出にしたいから。

 だから私はこの一冊だけでいいよ、今回はね」

「そっか、可恋ちゃん。それだけで満足ならよかったよ。

 地球に同時に攻めてきたタコ星人とイカ星人が絡み合うギャグ本が可恋ちゃんの心にどう響いたのかは分からないけど……」

「人の趣味はそれぞれだものね……」

 軟体宇宙人のBL本を両手で抱えて嬉しそうな可恋をよそに、愛と知恵は遠い目をしながら天井を見つめるばかりであった……。


 それから会場を抜けると、3人は喫茶店に入ることにした。

 健全な作品しか買ってないとは言え、さすがに人目のあるところで「戦利品」を広げるわけにはいかないが、せめてのんびりと感想を言い合う時間が欲しかったのだ。

 それに喫茶店なら心も身体もひんやりと冷ますことができるだろう。可恋が窓側の席に座ると、知恵はそれに向き合うように反対の窓側の席に、愛は可恋の隣の通路側の席に座った。

「どうだったかな、可恋ちゃん。初めての同人イベントは楽しかった?」

「うん、とっても! でもコミケってイベントだと、ここよりもっと広い会場で行われるんだよね?」

「まあね。って言っても私も行ったことないけど」

「さすがに私らには早いものね。せめて高校生になってからかしら。

 ……にしても、改めて思ったのだけれど、やっぱりちょっとおかしいわよねえ」

「え、何が?」

 突然何かがおかしいと言い出した知恵に、愛はきょとんとした顔を浮かべた。

 右手の人差し指を立てながら、知恵は言った。


「だって、入場時にはしっかり年齢確認するのに、会場内にはエロイラストの表紙やポスターが堂々と置いてあるわけじゃない?

 私たちの情操教育がどうとかって名目であれば、ああいうのも目につかないようにゾーニングすべきよね」

「ポスターは対策してあることもある気がするけど、表紙まではさすがに無理じゃない?

 同人イベントじゃ、そこまできっちりやってられないでしょ」

「そうね、確かに同人イベントなら参加者はアマチュアばかり、……もちろんプロのイラストレーターなんかもいるけど、販売のプロではないわよね。

 だから仕方ないところはあると思うわ。だけど、それなら一般書店はどう?」

「え、ええっと……?」

「本屋のBLコーナーに行ってみなさいよ。アダルトコーナーでもないのに、堂々と18禁BLが売られてるのよ!?(筆者注:必ずしもそうとは限りません)

 なんで一般BLコーナーに18禁本があるのよ!? 教えはどうなってるのよ、教えは!!」

「いや、そんなこと私に言われてもなあ」

 やはりオタクのスイッチが入ってしまっている知恵は熱く18禁BLの矛盾を語り続けるのであった……。

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