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超絶勇者ブレイブマン  作者: タチバナ
ひと夏の想い出編
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38.自爆のミャーコ

「ブレイブマン! 貴様は気付いているのかニャ!?

 貴様のその無神経さがカレン姫を苦しめていたということに!?」

「え、何。急にどうしたの、愛ちゃん」

「愛ちゃんではなーい! 私は地獄のミャーコニャ!」

「あまりに突然過ぎると反応に困るんだよな……」


 翌朝の教室で、地獄のミャーコ(本名:佐藤愛)はブレイブマン(本名:緋色勇気)の顔を見るなり責め立てていた。

 特に心当たりもないブレイブマンはただ困惑するだけだ。

 だが仕方なく、ヒーローごっこのノリにチューニングをして、話を合わせることにした。

「……ふぅ、突然言いがかりをつけるのはやめるんだ、ミャーコ!

 一体俺がカレン姫に何をしたって言うんだ!?」

「とぼける気かニャ、ブレイブマン!

 貴様は幼き頃、嫌がるカレン姫を無理矢理虫取りに連れて行ったことがあるはずだニャ!

 カレン姫は本当は蝶々でも間近に見るのは嫌なくらい、虫嫌いなんだニャ!

 それに気付かず貴様は――」

「え、いや、ちょっと待って。

 確かにお前とカレン姫と3人で虫取りに行ったことはあるけど……」

 ヒーローごっこと実際の出来事がまぜこぜになっている台詞を言いながら、ブレイブマンは必死になって記憶を呼び覚ます。

 確かあれは小学2年生のときだったか。確かに愛と可恋と一緒に3人で虫取りをした記憶はある。

 そのときは愛が突然思い立って、ふたりを連れて近くの林まで虫取り網とかごを持って出かけたのだ。


「言い訳する気かニャ、ブレイブマン!」

「いや言い訳っていうか、――確かあのとき俺は『可恋ちゃんが参加できないから別の遊びにしよう』って言わなかったか?

 それをお前がどうしてもって押し切って、無理矢理俺たちを連れて行ったんじゃないか。

 俺はそのときからカレン姫が虫嫌いだってことは知ってたぜ」

「……ふぇっ!?」

 ミャーコは素っ頓狂な声とともに口を大きく開けて硬直しながらも、よく思い出してみた。

 そう言われてみると、確かにそんなようなことを言われた覚えはある。

 でもそのときは『可恋ちゃんが参加できない』の意味が分からなくて駄々をこねたのだ。

 だけど、それは『虫嫌いの可恋ちゃんを虫取りに連れて行くのはやめておこう』という意味だったということ……?

 だとすると悪いのはミャーコだけだ。ブレイブマンは最初からカレン姫を虫取りに連れて行くのは反対だったのだから。

「は、はっきり言ってくれなきゃ分からないニャ!!!!」

「はっきり言ったつもりだったんだけどな……」

「ぐぬぬぬ……」


 そう言われてしまえば返す言葉もない。ミャーコは助け船を求めてカレン姫のほうに向き直ったが、完全なる自爆である。

 カレン姫としてもフォローのしようがないだろう。

 それでもミャーコは必死に視線を送ったが、カレン姫は別の人物を話をしているところだった。

「うーん、描いてる同人誌を見せて欲しいって言われても、知ってる人に見られるのは恥ずかしいのよね……」

「そこをなんとかお願い。愛ちゃんには見せてるんでしょ?」

「それはあいつに漫画のアドバイスをもらってるからよ。

 まあ、変に毒されてないあなたの意見も聞いてみたいけれどね。

 でも特に二次創作はあまり人に見せびらかすものではないっていうオタクの精神が染みついちゃってるから……。

 ……というか、あいつなんかずっと河合さんのほう見てるわよ。何か用があるんじゃない?」

「え? 何かな。愛ちゃん、何か用?」


 その問いかけに反応して愛が近付いてくる。解放された勇気は次の授業の準備をしているようだった。

「私のほうの用はもういいや。

 何? 知恵に同人誌見せてもらうって?」

「あ、うん。今交渉してるところだけど……」

「そもそも河合さん、同人誌ってどういうものか、よく理解してないと思うのよね。

 まずもう少し説明をしてあげたほうがいいと思うのだけど……」

「一応昨日説明はしたよ?

 まあ、オタクの感性って一般人には理解されないものだからなんともだけど」

 そもそも知恵は何故可恋が同人誌に興味を持ったのかの経緯を知らないが、なんとなく土日の間に何かあったのだろうということは察していた。

 そのため、事情については深く突っ込まなかったが、愛の説明不足なのではないかと思うところはあった。


「そう言えば、今度の祝日に名古屋で何か同人イベントがあるんじゃなかったかしら。

 夏コミ前だからあまり人は集まらないかもしれないけれど、そういうところで雰囲気を感じ取るのもいいんじゃないかしら。

 室内のイベントだから暑さ対策もそれほどしなくていいでしょうし。まあ待機列に並ぶなら別だけど、昼過ぎくらいに行ったらいいでしょ」

「あー、あの即売会ってオリジナル作品にも力入れてるやつだっけ。

 あそこなら地下鉄で行けるし、同人初心者でも行きやすいか」

「そうそう、一次創作なら原作の知識がなくても楽しめるでしょうし。

 まあ頒布物を買わなくてもいいのよ。雰囲気だけ楽しめば」

「同人イベント……、即売会……」

 可恋はうわごとのように呟いていたが、どうやら興味があるらしかった。

 そして、その表情を見て、知恵は自分の提案が的を射ていたことに安堵しながら誘った。

「どうかしら、河合さんが良ければ私もついてくわよ。

 行く予定はなかったイベントだけど、私にとってもこれは勉強ね。

 少しでも他の人の創作に触れれば自分の作品の幅も広がるもの。

 いえ、むしろついてきてもらえるかしら? 河合さんが一緒なら私も嬉しいわ」

「うん、是非……!」

 可恋の表情がぱあっと明るくなった。それを見て知恵は満足げに微笑んでいる。


「それって私も行ったほうがいいの?」と愛が訊ねる。

「そりゃそうでしょ。そもそもあんたが河合さんに変なことを吹き込んだんでしょ。

 最後まで責任持ちなさいよ」

「いや変なこと吹き込んだつもりはないんだけど……。

 まあ楽しそうだからいいか。今度の祝日ね!」

 と言ったところで、愛はみんなで手筒花火を見に行く予定のことを思い出していた。

 あれは今度の金曜日の夜だから問題ないか。お祭りに行ったあと、別の意味でのお祭りに行くと。

 夏休み前からいろんな楽しみがいっぱいだな。愛は思わず嬉しそうな笑みを浮かべていた。

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