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超絶勇者ブレイブマン  作者: タチバナ
別に謎ではない転校生編
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18.体育の時間

 屋上でお弁当を食べ終わった勇気たちは5限の授業のために急いで教室へ戻った。

 更衣室は武道場への渡り廊下の先、つまり武道場の隣にある。だが、校庭で体育の授業がある場合、更衣室まで行って戻ってくるのは少し面倒だ。

 故に女子に着替えを見られることに無頓着な男子はそのまま教室で着替えてしまうことも多いのだ。

 そして案の定、勇気たちが教室に戻ったときにはすでに男子の何人かは体操服に着替え中であった。

 愛と可恋はなるべくその姿を見ないようにしながら、お弁当箱をしまい代わりに体操服を入れた袋を手に取った。

 ――本来は更衣室で着替えることになっているのだから、教室で着替えている男子のほうが悪い。

 思春期の女子としては何故こちらが気を遣わなければならないのかという気持ちにもなるが、文句を言ったところで仕方のないことだった。


「じゃあね、私たちは体育館だから!」

 愛はそう言って慌てているかのように可恋を連れてバタバタと教室を出ていった。日常のこととは言え、やはり男子の着替えに出くわすのは気まずいのだろう。

 昨今の風潮ではこれもセクハラということになるのだろうが……、これくらいの年頃の男子にはまだそうした意識を持つのは早いようであった。

 実際のところ、デリカシーのない希望はまだしも、勇気でさえも校庭での授業の際には教室で体操服に着替えることにしていた。やはりそのほうが手っ取り早いからだ。


 ……そう言えば。勇気はふと教室を見回してみたが、正義の姿はそこにはなかった。

 すでに着替え終わって校庭に向かったのだろうか。それともまだどこかでお弁当を食べている最中なのだろうか。

 前者ならいいが、後者なら少し時間がギリギリだろうなと思った。まあ、それも余計なお世話だろうけれど。そんなことより自分も早く着替えよう。

 着替え終わり、校庭へ向かうとすでにそこには正義が体操服姿で待っていた。どうやら勇気たちがお弁当を食べるのに時間をかけ過ぎたらしい。

 勇気は心の中だけでほっと胸を撫で下ろした。直に体育の高橋先生もやってきて、準備もあるからとチャイムが鳴るより少し早く授業が始まった。


 その日の男子の種目はサッカーであった。2チームに分かれて試合をするが、一クラスに男子は十数人しかいないのだからチームの人数は11人には満たないし、参加する合計人数が奇数ならチームの人数は同一ではない。

 それに先生が一応の審判を務めるとは言え、厳密なルールが守られているわけではない。まあ、これがサッカー部の練習ならまだしも体育の授業なんてそんなものだ。

 このように身体を動かすことが主目的ではあるが、運動嫌いな男子を除けばほとんどの男子は真剣な様子だった。

 だが、いざ試合が始まるといったときに、不機嫌そうな舌打ちと吐き捨てるような台詞が聞こえてきた。

「ちっ、よりにもよってサッカーかよ」

 ――その声の主は正義であった。正義はそのまま続けて言う。


「せんせー、俺具合悪いから見学でもいいっすか?」

「おお、そうか……? 保健室には行かなくても平気か?」

「あー、軽い立ち眩みみたいなやつなんでちょっと座ってれば大丈夫っす」

 それは明らかに適当な言い訳だった。先生もその嘘に気付いていないわけではないのだろうが、万一授業中に倒れられでもすればそれは学校の責任だ。

 教師としては無理に試合に参加させるわけにもいかず、そのまま正義の見学を許可する形となった。

 そして、すぐに試合が始まったが、一進一退の攻防のあと希望が相手側のゴールにシュートを決めたところで一旦休憩の時間をとることとなった。

 その時間に希望は、サッカーのフィールドから少し離れた場所で体育座りをする正義に自慢げに話しかけた。


「どうだい、見たかね、転校生クン。俺様の見事なシュートをよぅ」

「あ? なんの用だよ」と正義は相変わらず鬱陶しそうに答える。

「いいから見たかどうか答えろよ。どうなんだよ」

「別にどうでもいいだろうが。絡んでくんなよ」

「どうでもよくはねえよ。俺は体育委員だからな。

 クラスメイトがちゃんと体育の授業に参加できてるかは心配してやらねえと」

「……あっそ。じゃあ、見てた見てた。すごいシュートだったな。……これで満足か?」

「それだけじゃ足りねえな。少し休憩して立ち眩みも治っただろ。

 試合再開したらお前も加われよ。サボりなら許さねえぞ」

「……サッカーは嫌いなんだ。放っておいてくれよ」

 正義はそう言うと顔を伏せて黙ってしまった。しかし、それでも希望はしつこく食い下がる。


「はぁ!? 何言ってんだ! 好きとか嫌いとかの問題じゃなくて、今は授業中だろうが!

 俺は今、何も間違ったこと言ってねえぞ!?」

 そんな叫び声に先生や生徒たちが一斉に振り向くが、その間を通って勇気が止めに入った。

「まあまあ、やめとけって。無理強いすることじゃないよ」

「お前はどっちの味方だよ、勇気。俺は体育委員として他の生徒の様子を見てやってるだけだぜ?」

「どっちの味方とかじゃないよ。誘うにしたってもう少し別の言い方ってものが……」

「お前も聞いただろ、勇気。こいつはサッカーが嫌いでただサボってるだけなんだぜ?

 優しく誘ってやるような状況じゃねえだろうが!」

 希望は語気を強めて睨みを利かせたが、勇気はそれで怯むような相手でもない。お互いに睨み合って一歩も譲る気はないようだった。

 言葉もなく静まり返った頃、大きな溜息がひとつ吐き出された。


「俺やっぱり保健室に行ってくるわ。なんか頭痛くなってきた。

 ……これは嘘じゃねえぜ? お前らが目の前で騒ぐから頭に響いてよ」

「そっか、ごめんね、正義くん」

 勇気は素直に謝るが、希望はけっと吐き捨て憤慨したままであった。

 正義は保健室で休むことを先生に伝えると、校舎へと戻っていった。

 やがて試合が再開されたが、苛立った様子の希望のプレイは先程までとは打って変わり精彩を欠いていたのだった。

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