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ラクダよラクダ、ラクダさん。

作者: エル.L

みんな女友達です。女の子です。


 私を動物に例えたら、という問いに対して、



 「ラクダだろう」


 「ラクダかな?」

 

 「ラクダでしょ」



 と、珍しく声をそろえた友人たちに、私は唖然とするしかなかった。



 「ら……ら、ラクダさん? ラクダさんなの?」


 「絶対ラクダだ」



 アネキがコーラを飲み干して、たいそう間抜けな顔をしているであろう私に、さらに重ねて言い放った。


 何だかアネキが楽しそうなのは…いつもの事か。



 「……何ゆえにラクダさん?」



 「Lは、側にいると安心するの。癒し系なんだよ」



 ダンナが、微妙にズレた答えを返してくれた。



 「豆柴の君に言われたくない」



 しかし、ダンナのフォローも、私はズバッと切り捨ててしまった。


 ガーンと音を立てて真っ白になったダンナは、やっぱり豆柴のように可愛いなと思った。



 『豆柴=小さい柴犬』



 小柄で、何ともつぶらな瞳を持つダンナなら、癒し系だと言われても納得がいく。




 だが、しかし。




 「……おいらを癒し系だと思う人〜」



 と問うてみれば、満場一致で挙手された…。



 「あの〜……普段、可愛げが無いだとか目が笑わない人だとか天邪鬼だとか

  

 悪魔とか狼の皮をかぶった獣だとか言ってるよね?……よなっ!?」


 

 自分で言っといて、今さらながら酷い言われようだと怒りを覚え、自然と語尾が強まる私。



 「でも、動物に例えたら、って訊かれたから、ラクダって答えたわけですし」



 クーさんが正当な事を述べたので、私は少し頭を冷やした。



 「……癒し系? 癒し系でラクダさんなの?」



 無駄だとわかっていながらさらに訊ねると、友人たちはやはり、一斉に首肯した。


 

 「……癒し系って……ネコとかウサギとかワンコとかやん? 特にネコ。ネコは代表格!」



 「猫ほど可愛げがあったら良いんだけどね〜」



 どうも納得できない私が反論すれば、アネキがすかさず、チクリと針を刺してくる。


 ……確かに、可愛げが無い自信はあるがね。




 私は、私自身を動物に例えるなら、絶対に「ネコ」と言われるに違いない、と思っていた。


 それは、日頃に友人たちから聞く私に対してのイメージから、容易に想像できるものだ。



 『マイペース』


 『気分屋』


 『甘えん坊』


 『一人好き』


 『寂しんぼ』


 『放浪癖持ち』


 ………『癒し系』




 「なのに何故ラクダさんっ!?」


 

 自分の思考にノリツッコミする私を、友人たちはさして気にも留めない。


 うん……いつもの事だから。



 すると、アネキが咳払いを一つして、みんなを代表して結論を語り始めた。



 「Lは、確かにマイペースだし気分屋だし、甘えん坊だし癒し系だから、猫かとも思うケど」



 トランスしてる時の顔が、最高に『ラクダ』なんだよ。

 















 …………不意打ちだ。









 私は面食らって、飲みかけていたメロンソーダを、盛大にふきだしてしまった。



 アネキとクーさんはそれを予測していたのだろう。華麗に避けてみせた。

 

 しかし、ダンナは一人、私のふきだしたメロンソーダ・シャワーを浴びてしまい、プルプルしていた。




 わぁ、雨の日にプルプルしてる可愛い柴犬だぁ。




 何て言っていたら、きっとめったにキレないダンナでもキレただろう。

 

 むせて良かった。何も言えなかったし…。



 「ゲホゲホゴフッ……と、トランス!? トランスて何ぽ!?」



 「……Lちゃんさ、時々、空想世界に旅立ってるじゃん」



 ダンナが、ハンカチで顔を拭きながら言う。


 私は、言い返せない。



 一日の大半を、空想世界へ確かに旅立っている自分がいる。


 どうも、それが私の『トランス状態』らしい。



 「その時のLさんの顔ってば…」


 恍惚としてて、伏し目がちで色っぽい、ラクダみたいなんですよ。



 クーさんが、褒めているのか貶しているのかわからない発言をするが、アネキもダンナも、力強く頷く。



 「…………ラクダさんに失礼だ」



 「さっすが、Lは賢いね。本気でラクダに失礼だ。謝りなさい」




 ………つーかお前たちが言い出したんだろがっ!!




 と胸の内で激しくツッコんで、友人たちと縁を切ろうかと本気で思った私であった。







 それ以来、ラクダさんを見る度に、同士のような気がしてならない…。






 【おしまい。】


 

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