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姉妹が仲間になるそうです


「で、レア。さっきからの音の正体は掴めたのよね」

「はいです」

「で、エルロットがその犯人だと」

「ああ、すまない。まさか隣の部屋にシアとレアが泊まっていたなんて」


 前回のあらすじ。

 素材を手に入れた俺は宿に戻ってさっそくポーション作りにいそしんでいた。

 ポーションに夢中になっていた俺は周りの部屋に騒音をまき散らしていたことも知らずに舞い上がり偶然にも隣人だったレアに捕まってしまう。

 連れてこられたのはシアとレアの部屋。

 これから俺はどうなってしまうのだろう。答えはシアのみぞ知る。


 っとまぁ、そんな感じに部屋まで連行された俺なのだが、別にシアは怒っているという風ではない。

 少しは眉も上がっているし口調も怒り口調だが堪忍袋の緒が切れたとかそんな感じではない。


「はぁ。隣が私たちでなくても迷惑よ迷惑。夜だったら今頃他の客に殺されてもおかしくないんだからね」


 たしかにそうだ。


「で、何やっていたのよ。あの時みたいに爆発音も鳴るし、ことと次第によっては憲兵に……」

「わ、わ、ちょっと待って。ポーション作ってただけなんだ」

「ポーション?」


 はてなマークを浮かべるシア。そこにすかさずレアが声を上げた。


「はいお姉さま。エルロッロの部屋には容器に入ったポーションがありました」

「おい、名前間違えてんぞ」

「そうなの。じゃあ捨ててきなさい」

「いや、スルーするな……ってなぜに!?」


 スルーされて動揺していたから一瞬気づくのに遅れたが捨てろだと!?

 あのポーションを捨てろだと!?

 俺が苦労して作り上げたポーションを捨てろだと!!?


「なんでってエルロットが一番よく知ってるでしょ。ポーションなんて高価な物を作るだなんて密造でしょ」

「いやいや、そんな法律なんてないから」


 そんな法律があったら宮廷時代の俺がまっさきにつぶしてる。

 だってそうだろ。自由にポーションを作れないなんておかしいじゃないか。


「ひ……お姉さま。エルロッロのいう通り、帝国ではポーションの密造は罪ではありません。それは王国にしかありません」

「そうね。なら……捨てるのは無しね」


 てへぺろ。

 そう可愛らしく言うが捨てろっていう一言は忘れないぞ。まぁ、許すけど。

 それとレアはまた俺の名前を間違えてるし。


 にしても今のレアの言い方は少し引っ掛かったな。二人は帝国出身ではないのか?

 別に帝国出身でなければどうとかはないが、なんだか少しばかり胸につっかえが残っている。


「でも、ポーション作れる人がなんで宿で作ろうとしたの? もしかしてあの爆発のポーションとかもお手製?」

「あ、ああ。詳しくは言えないが訳アリなんだ。俺はこの帝都でポーションを売りたいんだ」

「ポーションを売る?」

「そうだ。だから素材を手に入れてポーションを作っていたんだ」

「なるほど……そうなのね」


 俺の話を聞くとシアは静かに頷いた。

 そして、何を考えこむように思案顔をすると思いついたかのように口を開いた。


「ねぇ、よかったら私たちも手伝ってもいいかな?」

「え」

「ひ、お姉さま!」


 俺よりも先にレアが驚いた。

 立ち上がってシアに向かって何かを訴えている。


「エルロット。どう? 報酬はなくてもいいよ」


 報酬はなくていいだなんてそんな美味い話おいそれと乗るわけにはいかない。

 それにレアの方は少なくとも反対しているように見える。


「レア。あなたはどう思う?」

「……お姉さまがそうおっしゃるのであれば……私は反対しません」


 なるほど、本心では嫌だがシアの意見には従うってことか。

 レアのこと従順だと思っていたがここまで一方的だとはな……。

 でもまぁ悪い人らではないはずだ。

 今日一日だけの付き合いだけど、本能的にそう感じた。


「わかった。手伝ってくれ」


 シアが何を考えて手伝うと言い出したのかわからないが今は人手があっても困ることはない。


「よし、手伝ってくれることを祝して今日の夜は俺がおごってやろう」

「おごり……エルロット、お姉さま。もう夕方なの」


 現金なやつめ。こいつにはとっておきの飯をごちそうするしかないか。

 俺はポーチからポーションを取り出した。


「焦るなって。ほら、俺のおごりだ」

「「え」」


 姉妹の声が重なった。

 どうしたんだ。二人とも固まって。

 もしかして、あまりにも高級品を渡されすぎて声を忘れてしまったのか?


 俺が手渡したのは宮廷から持ち出せた私物の中でも最高級のポーションだ。

 その名も宮廷料理ポーション。


 味は宮廷で振舞われる料理並みにおいしく、栄養価も抜群。

 あの堅物な国王でさえもこのポーションを飲んだ際に唸り声をあげながら賞賛してくれた一品だ。


 なお、国王の命令で数百本ほど製造し効果を試したところ。兵士が僻地の雪山で1カ月間このポーションのみで過ごしても健康だったという立証もされている。


 俺の最高傑作のひとつだ。


「エルロッロ……死ねなの」

「え?」

「……あなたがどれほどポーションが好きなのかよくわかったわ。だから、ごめんなさい」


 思いのほか不評だった。

 ポーションだからといって味が悪いわけじゃないのに……。


 俺はしぶしぶポーションをポーチの中に収めた。


 追伸

 夕飯は近くの酒場で食べました。もちろん俺のおごりです。

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