2月1日
人が多い日だった。
そのはずだった。聞いてみれば、なんだか新しい感染症のせいでお客が減っているとのことだった。住んでいる側にしては都合がよく、まあある程度の危険性は負うものの、日常品の調達には歩きやすい人の密度だった。
直に止まりそうな人の流れの中で、いつまで営業できるか秒読みの商店街に入っていく。地元ほどさびれてシャッターだらけに成り果てるのを自分は見届けられるのか、考え始めたら頭痛に襲われた。
酸欠になる前に薬局に駆け込んで、切らしていた薬やティッシュやらを購入する。急いで部屋に戻りたくても、急いで息が上がりでもすれば今度こそ気を失ってしまう。
引きこもりには容赦ない直射日光、気まぐれに訪れた小春日和のようなものだった。どうにか進めた足で通り過ぎたパン屋から嫌なくらいに美味しそうな焼けた生地の匂いがした。いつだか食べた気もするが、パンはいくら匂いや味が美味しくたって、うまく消化できないわけでもないのに吐き出してしまうようになっていた。今食べてみたらどうなるだろうか。きっとパンでも、それ以外の食べ物でも、全て余程の空腹でない限り吐き出してしまうだろう。先日買い込んだ水とコーヒーだけが、自分の身体が摂取できる人間らしいものだった。
不健康。だけど、まだ歩いていられるだけ、人間らしいと思われたい。