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1月22日

 外に出ると決めた。

 そんな「大切な日」に着ると決めたのは、濃い緑色のワンピースだった。自分の好みでは全くない。ひとに似合うと言われたから買ってもらって、押し付けてもらったセール品。数年たってやっと出番を迎えた厚めの生地は、安くなっていたものとは言っても名の知れたブランドの衣類らしく、肌寒さを少しは和らげてくれそうだった。

 久しぶりに電源の確認をした。出かける時にこれをしないとよく怒られた。部屋中のコンセントを確認して、タコ足のやつらは一つ残らず抜いて床に投げつける。そもそも起きている時間の方が珍しい主が部屋にいたところで、こいつらの確認を怠っていても良かったのだろうか。仕方がなかった。もうきっとこの習慣は、遺伝子の中に組み込まれた、生き抜くための必須の動作。

 鏡に映る自分の全身を見た。一年前と比べて顔の肉はだいぶ減って、幾らか目の当てられるレベルにまでなっていた。脚の短さは相変わらず。上半身の肉もだいぶ落ちたのか、ベルトが以前よりも良く絞れた気がした。

肩の下まで伸びた髪の毛を洗面所の櫛で梳かして、本棚に放置されたヘアゴムで一つにまとめる。目にかかる前髪は洗面台で適当に切り揃える。キッチンにある蛇口を捻る。丸い器がかしゃりと動く上で水に口を付ける。渇いていた唇に、勉強机から見つけ出したリップクリームを塗りつける。45リットルのゴミ袋に生ごみを詰め込んで、口を縛って玄関に放る。2リットルのペットボトルの山ががらりと崩れて通路が埋まる。蹴りつつ何とか越えて、クローゼットから引っ張り出した赤色の鞄に必要なものを詰め込む。財布、通帳、鍵、携帯、薬、替えのマスク。また別のマスクをして、久々にプラスチックのピアスを耳から外す。眉毛も並の人ほどに生えそろっているし、何処かへ行ったメイク道具も探すのが億劫でそのままの顔で出ていこうと決めた。

布が溢れている入れ物の中から黒いタイツを引っ張り出して脚を通す。床に積まれていたコートをかけて、その下から出てきた真っ赤なマフラーを身に着ける。

右手に鞄、左手にゴミ袋、足元に安物のブーツ。あとは必要最低限の清潔感。

外に出た。

ドアを開けると、オートロックのキーから電池切れ間近のお知らせ。電池も買ってこなくちゃいけなくなった。

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