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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第四章:師匠の行方編
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第百二十三話:ルシエルの用事

 本日二話投稿です。前話を読んでいない場合はご注意ください。

「話は大体わかった。ハクが言うなら悪い人ではないと思うし、市民証の発行はしておこう」


「ありがとう、アルト」


 わかっていたことだが、アルトは特に怪しむ様子もなく、市民証の発行をしてくれると約束してくれた。

 これで、しばらくすればシノノメさんは正式にこの国の国民である。

 一応、就職先も決まっているし、住む場所はうちだ。これでおおよそシノノメさんの生活環境は整ったことになるかな?


「それにしても、随分と仲がいいのぅ。ハクはちょっとした縁だと言っておったが、実際どうなんじゃ?」


「ふふ、他人には真似できない、深い関係とだけ言っておきましょう」


「ほー? おぬし、やっぱり愛人じゃったのか」


「違います! アルトも変な言い方しない」


「ははは」


 何が他人には真似できない深い関係だ。

 いやまあ、確かにアルトと私の関係は、他人には真似できないだろうけども。

 学生時代の友達、と言うだけだったら、相手が王族であっても、まだ何とかなるかもしれないが、騎士と主君の関係、と言うのは無理がある。

 いや、騎士が私で主君がアルトだったらありかもしれないけど、逆だからね。

 王族が誰かに剣を捧げるなんてありえない。仮にあったとしても、私のような子供に捧げるものではないだろう。

 言ってやりたいが、流石にこの関係は王様から口止めされている。

 私のことは、王都どころか他国でも有名とはいえ、流石に王族が騎士の忠誠を誓ったなんてばれたら何言われるかわかったもんじゃないからね。


「そ、それより、王様は元気?」


「うん? ああ、元気だよ。今は景気もいいし、税収も安定してる。特に大きな問題も起こってないし、体調も悪くない。心配するようなことはないよ」


「そ、そう? ならいいけど」


 ちょっと強引に話題を変えたけど、アルトはほんとに意図をわかってるんだろうか。

 いや、深くは言わなくていい。あんまり言って掘り返される方が困る。

 アルトも言っちゃいけないことなんだから少しは気を付けてほしい。自慢したい気持ちはわかるけども。


「ああ、そうだ、ルシエルが会いたいと言ってたよ」


「ルシエルさんが?」


 ルシエルさんと言えば、宮廷魔術師の一人である。

 以前は嫌がらせをされたこともあったけど、その後は私の魔法に感銘を受けて、積極的に学ぼうとしていた。

 ここ最近は忙しかったこともあって会えていなかったけど、何か用事でもあったんだろうか?


「特に急ぎではないようだけど、魔法のことで相談があるから、話したいってさ」


「まあ、ルシエルさんなら魔法関係だとは思ってたけど、今更教えることあったかな?」


 私の使う、魔法陣を直接頭に思い浮かべて魔法を即座に発動する方式。

 発動が非常に早く、とても正確なのはいいけれど、いかんせん覚えるのが大変だというデメリットがある。

 単純な下級魔法でも、まっすぐ飛ばすとか、早く飛ばすとか、そう言った細かい調整を行う度に魔法陣の内容は少しずつ変化していくから、一つの魔法を覚えるだけでも相当な数の魔法陣を覚える必要があるのだ。

 記憶さえできれば、戦闘で魔法負けすることはあまりないだろう。ぱっと見では無詠唱にも見えるし、見栄えもいい。

 ルシエルさんは、そんな魔法を私から教わっていた。

 宮廷魔術師として、魔法に対する見分を深めたかったというのもあるだろうけど、あまりに熱心に聞いてくるものだから、私も結構丁寧に教えた気がする。

 でも、大抵は紙に写して渡したし、上級魔法すら数個は使いこなせるくらいには教えたつもりなので、もう教えることはないと思っていたんだけど、まだ聞きたいことがあるのかな。


「まあ、わかったよ。後で時間ができたら行ってみる」


「よろしく頼むよ」


 忘れないように頭の片隅にでも置いておくとしよう。

 後は、市民証を発行するにあたって必要な情報を記入するくらいかな。

 アルトが差し出す紙に、シノノメさんが記入していく。


「こんなもんでいいかの」


「はい、確かに。発行には一日くらいかかると思うから、明日また来てくれると嬉しい」


「それじゃあ、明日また来るね」


「もし時間があるなら、お茶会に参加してくれると嬉しいな」


「わかった。楽しみにしておくね」


 アルトとのお茶会か。以前はたくさんやってたけど、最近はかなり頻度が減ったように思う。

 まあ、アルトが忙しい身になってしまったから仕方ないんだけどね。 他国に出向くことが多くなったし、王太子としての仕事も振られるようになった。私なんかに構っている暇は、本来ならあんまりないはずなのである。

 それなのに、こうして時間を作ってくれるのは素直に嬉しい。アルトもまた、私の親友の一人である。


「おぬしら、やっぱり付き合っとらんか?」


「付き合ってません! 馬鹿なこと言ってないで帰りますよ」


 茶化してくるシノノメさんを引っ張って、部屋を後にする。

 全く、こっちはシノノメさんのために色々手を尽くしているというのに。


「さて、これであらかた終わったかしら?」


「そうだね。市民証は問題なし、就職先も問題なし、住居も問題なしで、後何か問題はある?」


「特にないわね。あるとしたら、今の常識を教えるくらい?」


「ああ、それはそうだね」


 シノノメさんが姿を消してから、すでに15年以上が経過している。

 常識は15年もすれば変わるものだと思うし、何かしら齟齬があるかもしれない。

 まあ、その辺はお姉ちゃんに教え込んでもらうとしよう。私より、お姉ちゃんの方が扱いには慣れてるだろうし。


「ああ、ハク、後でちょっと時間をくれんかのぅ」


「時間ですか? どこか行きたいとか?」


「いや、おぬしの時間を貰いたい。今夜、ちょっと付き合ってくれんか?」


「? まあ、構いませんが」


「うむ。用件はその時話すでな」


 そう言って、シノノメさんはお姉ちゃんの側に寄っていった。

 何か相談したいことでもあるのかな? でも、それだったらわざわざそんなことしなくても今聞けばいいと思うんだけど。

 お姉ちゃんには知られたくないことなのかな? まあ、今夜会えばわかるか。

 疑問に思いつつも、特に気にせず共に家に帰る。

 さて、今日の晩御飯は何にしようか。

 感想ありがとうございます。

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