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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第三章:地球移住計画編
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幕間:異世界観光2

 主人公の姉、サフィの視点です。

 運ばれてきたピザと言う料理だけど、とても美味しかった。

 想像では、ハクがたまに作る柔らかいパンに、肉を挟んだようなものを想像していたんだけど、想像以上に味が濃くてびっくりした。

 ここまでの味を出す以上、調味料は惜しんでいないんだろう。それにパンの焼き加減も絶妙で、とても食べやすい。

 ホールと言う形で届けられたが、あっという間にそのすべてを食べつくしてしまった。

 ちょっと残念に思っていると、すぐに新しいピザが運ばれてきて、さらにびっくりした。

 食べ放題と言うのは本当らしい。これで赤字にならないって本当だろうか。

 一応、私達も今は見知らぬ地に来ているわけで、満腹になって敵に襲われたら堪ったものじゃないので、流石にそこまでは食べないけど、これを逃したら食べられなくなると思うとつい食べたくなってしまう。

 これ、持ち帰りとかにできないだろうか。それなら、後でいくらでも食べられるのに。


《流石に持ち帰りには対応してませんよ》


《そっかぁ……》


 まあ、この店を出るまで、と言う条件なのだし、持ち帰られたらそれこそ赤字か。

 もし、また来ることがあったらぜひとも来たいところだ。


《さて、お昼も終わりましたけど、次はどこを見ますか?》


《ユーリの知っているところを案内してほしい。俺達は全然知らないんでな》


《わかりました。じゃあまた、プラプラと歩いていきましょうか》


 満腹まではいかないが、若干食べすぎたかなとお腹をさすりつつ、町の観光を再開する。

 ユーリの話では、ここは貿易都市とか商業都市のようなものと言っていたが、それにしては露店が少ない。

 まあ、ようなものということだから、厳密には違うのかもしれないが、王都でも、外縁部では露店は珍しくもない。それなりに大きな町であれば、そういう店が並ぶのが普通だと思うのだが。

 さっき入った店も、どちらかと言うと高級レストラン、と言った感じだったし。


《ああ、ええと、こちらの世界では、お店を出すには許可が必要になるんです。あちらの世界でも、そういうのはあるでしょう?》


《確かにあるが、そんな難しいものではなかったと思うが》


《こっちの世界だと、色々難しいんです。無許可で営業してしまうと、逮捕されてしまいますし、お店なら必要な場所に行けば色々あります。新しく露店を開く、なんて人は、祭りでもない限りいないんじゃないですかね》


《そうなのか》


 なにやら、衛生の問題とか、調理師免許とか、色々なものが必要になるらしい。

 そういえば、くるまに乗る時も、あまりに速い速度を出すと捕まると言っていたし、こちらの世界では法に対する罰が厳しいのかもしれない。


《……ん? あれは?》


 しばらく歩いていると、道の傍らになにやら透明な箱が置かれていた。

 箱と言っても、かなり大きく、人が一人入れるくらいには大きい。

 箱の中にはなにやら装置のようなものが取り付けられており、何かの施設であることはわかるが、何の施設なのかはさっぱりわからない。


《あー……お二人は歌は好きですか?》


《歌? 嫌いではないが》


《私も。あれはなんなの?》


《ええと、こちらの世界ではテレビというものがありまして、それに映すための映像を記録する仕事があるんです。あれは、その一環ですね》


《? それと歌と何の関係が?》


《簡単に言うと、歌を歌って、その歌の評価を点数方式で表して、一定以上の点数を超えたら景品が貰える、みたいな感じです。代わりに、その姿をテレビで放映されるってことですね》


《へぇ……》


 歌を歌うだけで景品が貰えるとは気前がいい。

 先日、ハクの妹であるヒヨナの家でてれびを見させてもらったが、その時にも確かに歌を歌っている人物が映っていた。

 あれと比べると随分とこじんまりとした空間ではあるけれど、低予算で作られたものなのかもしれない。


《えっと、やってみますか?》


《あれは誰でもやっていいのか?》


《はい。あ、でも、日本語が喋れないと無理かも……》


《む、それは残念》


 一応、ハクからこちらの世界の言語は学んできたが、ぺらぺら話せるほどではないし、聞き取れもしない。せいぜい、挨拶ができる程度である。

 それに、歌と言っても、私が知っている歌なんて恋の歌程度だし、それでは面白みに欠けるだろう。

 残念に思っていると、ちょうどその箱の中に入っていく人がいた。

 箱の中の装置になにやら話しかけている様子である。

 どこからともなく声が聞こえてきているが、あの装置は人の言葉を話すのだろうか。

 まさか、インテリジェンスアイテム? そんなものが堂々と使われているのは凄い。

 いや、この世界ならある意味当然なんだろうか。くるまだけ見ても、相当な技術力だし。


《見ていくんですか?》


《せっかくだから、ちょっとだけ》


 興味をひかれたので、少し観察してみる。

 中に入った人は、しばらくして歌い始めた。

 何を言っているのかはわからないけど、何かテンションが上がる曲である。

 どうやら、あの装置が伴奏をしてくれるようで、それに合わせて歌っているという感じだ。

 どこまでハイスペックなんだろうか。ぜひ触ってみたいが、流石に怒られるかな?


「あの、すいません、ちょっといいですか?」


 歌い終わるまで眺めていると、不意に声をかけられた。

 とっさに戦闘態勢を取るが、振り返ってみてみると、どうやら相手は丸腰の様子だったので、警戒しつつも殺気を収める。

 身綺麗な格好をした背の低い男性で、ニコニコとした様子で挨拶をしているようだった。


「私、こういうものでして」


 そう言って、一枚の紙きれを差し出してくる。

 何と書いてるのかわからなかったので、ユーリに渡してみると、ユーリは驚いたような顔を浮かべた後、ため息をついていた。

 なんだろう、一体何が書かれていたんだろうか?


「いやはや、あまりに魅力的な方だったのでつい声をかけてしまいました。あなた方なら、世界も目指せると思いますよ」


「あの、そういうのに興味ないので、スカウトならお断りしますよ」


 笑顔のまま近づいてくる男の間に、ユーリが割って入って話している。

 その様子に、男は顔をしかめていたが、すぐに笑顔に戻ってユーリと話をしていた。


「妹さんかな? 君にはちょっとわからないかもしれないけど、お兄さん達は凄くかっこいいから、アイドルとしてもってこいなんだ。君も好きだろう? アイドル」


「別にアイドルに興味はありませんし、お兄さん達もそういうことに興味はないですよ」


「ふむ。だけど、それを決めるのはお兄さん達じゃないかな? 君の気持ちもわかるけど、お兄さん達と話がしたいな」


「お兄さん達は日本語話せませんよ。それと、今は私がすべての決定権を持っているので、お兄さん達が頷いたところで無意味ですよ」


「むぅ、もしや、マネージャーか何かなのかな? 実はもう成人していたり?」


「してますよ。マネージャーと言う認識もそこまで間違ってはいないです」


「なるほど、すでに取られていたというわけか。まあ、そういうことなら仕方ない。もし気が向いたら、いつでも連絡してきてほしい」


「はいはい」


 数分話した後、男は会釈をして去っていった。

 なんだったんだろうか?


《ちょっと目立ってきてるみたいなので、帰りましょうか》


《え、まだ見てみたいけど……》


《機会があったらまた案内しますから、その時にお願いします》


《むぅ、わかった。そうするわ》


 そうして、私達は観光を終えることになった。

 最後の男が何だったのかはわからないけど、この町の偉い人か何かだったんだろうか?

 明らかにこの町の人間ではない私達を見て、釘を刺しに来たのかもしれないね。

 そういうことなら、あそこで退いたのも納得である。あんまり目立ちすぎてハクに迷惑をかけるのもよくないし、観光はまた機会があったらのんびりするとしよう。

 次は、ハクも一緒だといいな。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 戻ったらセカンドライフにピザ屋やってもいいかもしれない
[一言] スカウトされかけてた 笑 二人とも美形なのでやはり声がかかりましたか ここで撮影してたのは後日放映されるからと思ったけど、帰るから見れないんだった
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