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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二章:カオスシュラームの後始末編
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第三十六話:送り返しを開始

 翌日。私は王様に受け入れの準備ができたことを報告した。

 本来なら、もう少し日を開けるべきなのかもしれないが、今はさっさとデモを収めるためにも、早めに人々を帰した方が無難である。

 それに、昨日の今日でいきなり人が集まるわけもないし、少なくとも送り込むのは三日後くらいになるだろう。

 それまでにはアースの方も受け入れの準備が整うだろうし、衣食住に関しては任せても大丈夫かもしれない。


「早かったな。即断即決だとは思っていたが、ここまで早いとは」


「まあ、転移魔法ですぐに会えますしね。あちらも急に人々がいなくなって大変みたいですし、なるべく早い方がいいかと思いまして」


「であろうな。あれだけの人々を一地域から呼び寄せたとなれば、その土地は死んだも同然だろう。たかが一か月程度とはいえ、人が手を入れなければ、自然の侵食は速い」


 そちらの方も問題だよね。

 カオスシュラームの被害に遭った地域の方が断然酷い状況ではあると思うけど、一つの町からほぼすべての人がいなくなったら、その町は急速に劣化していくことだろう。

 井戸の水は濁っていくだろうし、当然ながら日持ちしない食糧なんかは腐っていく。もし、人が一人でも残っているなら、火事場泥棒がいても不思議はないし、貴族なんかは町の重要な資料やらなんやらが保管もされずに放置されていることになる。

 町の機能が停止するのは非常にまずい状況なわけだ。戻ってきたからと言って、すぐに復旧できるものでもないし、ある程度の損失は覚悟しなければならない。

 まあ、そのための賠償金ではあるんだけどさ。


「他の町に散っていった人々も呼び寄せている。数日もあれば、すべての人々を送り帰せるだろう」


「ありがとうございます。全員送り帰せれば、ようやく本当の意味で一息付けますね」


 ほんとに、一息つくのが早すぎたと言わざるを得ない。

 カオスシュラームの影響が収まるのを待っていた、と言えば聞こえはいいけど、結局のんびりしていたことに変わりはないしね。

 後はフォローをしっかりして、あちらの国が荒れないようにしなければ。


「ところで、本当に大丈夫なのか?」


「何がです?」


「転移魔法陣のことだ。もちろん、そなたのことは信用しているし、それだけの力があることもわかってはいるが、大変ではないのか?」


 王様の心配は転移魔法陣が正常に機能するかどうからしい。

 まあ確かに、転移魔法陣は一種の儀式魔法である。本来なら、何十人と言う魔術師が集まって行うものであり、それを空気中にある魔力だけで補えるようにしたのは、先人達の技術力の賜物である。

 そんな、本来なら膨大な魔力を必要とする魔法陣を、私の魔力だけで発動させようというのだから、その心配はわからなくはない。

 いくら転移魔法陣で送る人物が一人だろうが何十人だろうが使う魔力量は変わらないとはいえ、そもそもの基本値が高いのだ。

 恐らく、私が普段から使っている転移魔法より、一回当たりの魔力量は多くなると思う。

 私は一日に何度か転移できるだけの魔力を持っていたけど、竜の中でもそれができるのは、エルダードラゴン以上だろう。若い竜には難しいと思う。

 だから、私が転移魔法陣を起動させることによってかかる労力は半端ない。

 しかし、今の私は、魔力ではなく神力を持っている。神力であれば、少ない量でも相当量の魔力と同等の力を発揮できるし、そもそもあの転移魔法陣は私が改良したものだ。

 当然、普通の転移魔法陣よりも魔力コストは抑えられているし、今の私なら軽く神力を流すだけで起動できるものである。

 つまり、そこまで心配いらないってことだ。


「大丈夫です。これでも鍛えてますから」


「そうか。それならいいが、無理だと思ったなら遠慮なく言ってくれ。それで倒れられても敵わんからな」


「わかってますよ」


 私が倒れるって、どんな状況だろう?

 神力が尽きたらそりゃ倒れるだろうけど、今の私の神力を使い果たすには、相当無茶な使い方しないといけない。いや、無茶な使い方しても使いきれない気がする。

 それこそ、転移魔法を同時に何十回も行うとかしない限り無理じゃないかな。

 物理的な意味でも、なんだか相当頑丈になっているみたいだし、下手したら私の肌は剣を通さないかもしれないくらいである。実際に試したことはないけど。

 ああ、心労で倒れるのはあるかもね。精神的に疲れちゃって、ダウンするくらいならあるかもしれない。

 それくらいしか思い浮かばないのが何だかあれな気がするけども。

 自分の頑丈さにちょっと呆れながらも、城を後にするのだった。


 三日後、告知してもらったこともあり、転移魔法陣の下にルナルガ大陸の人々が集まってきた。

 転移魔法陣を刻んだ場所は、ちょっとした広場である。ただ、本来の転移魔法陣がある広場と比べればかなり狭いので、かなり密度が高い。

 これ、変に魔法陣の端に乗られてたら転移事故が起きちゃうかな? 大丈夫だとは思うけど、魔法陣に乗る人は少し制限した方がいいかもしれない。


「よく集まってくれた。これより、あなた方の大陸にある国の一つ、ソーキウス帝国の皇都に転移で送る。一度に乗り切れなくても安心してほしい、すぐに次の転移で送ることができるから、置いてけぼりを食らうなんてことはない。慌てず、騒がず、余裕を持って魔法陣に乗ってくれ」


 今回も駆り出されたアルト。

 一応、あれから少しは勉強したのか、多少なりとも話せるようにはなってるみたいだけど、まだ怪しいので、私が通訳しつつの演説だ。

 みんなもこれでようやく帰れると安堵しているのか、笑顔を浮かべる者やそわそわしている者などたくさんの表情が見られる。

 中には、この国に残りたいという者もいるようだが、それに関しては後々検討することにした。

 衣食住を保証するのは、彼らが避難民だからであり、受け入れ先であるこの国が行うべきものだからだ。

 だから、帰れるにも拘らず残るという人は、そう言った保証を受けずに暮らす必要がある。

 果たして何の伝手もないこの国で働けるのか、住む場所はどうするのか、そう言った問題もあるので、今回は一時様子見と言う形にして、後でもう一度本当に残るのかを聞くつもりである。


「乗ったな? よし、ではこれより転移させる。転移先ではソーキウス帝国の者が待機しているはずだ。転移後は、そちらの指示に従ってほしい。では、ハク、頼む」


「わかりました。皆さん、魔法陣からはみ出さないようにしてくださいね。事故を起こしたくないですから」


 念のため、はみ出して乗っている人がいないかを二度確認した後、魔法陣に神力を流す。

 一瞬の間を置いて、魔法陣に乗っていた人々は姿を消した。これで、きちんと送れたはずである。


「アルト、ちょっと確認してくるね」


「ああ」


 安全性は十分に検証したが、万が一と言うこともある。それに、あちらで受け入れ態勢が整っているとはいえ、混乱する人もいるかもしれない。

 まずは、第一陣がしっかり送れたかどうかを確認する必要がある。

 そう言うわけで、私は自前の転移魔法でソーキウス帝国の皇都へと転移した。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] さあどんどん送り返していこう!
[一言] ああそうか現代日本じゃないから、保存技術は劣ってるし アスファルトなんてものもないから自然がニョキニョキと生え放題になるのか 転移先を確認して帰って来もなお余る魔力。心強いです
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