表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二章:カオスシュラームの後始末編
875/1579

第三十四話:アースのいる国

 翌日。私、エル、アリアの三人でルナルガ大陸へと出発した。

 ユーリもついていきたいと言っていたが、今回はアースに話をしに行くだけなので、すぐ帰ってくるということでお留守番してもらった。

 行くなら、また後日観光と言う名目で行けばいいだろう。まだどんな国なのかも知らないし、そこらへんはリサーチしておかないとね。


「さて、ここがアースのいる国?」


「はい。ソーキウス帝国。ルナルガ大陸において、もっとも国力がある国ですね」


 直接は飛べないので、一度神剣があったあの森辺りに転移し、そこから竜の翼で飛んでいった。

 王都だが、見た感じ城塞都市って感じだろうか? 町の周りには分厚い城壁が覆っており、屋上にはバリスタなんかが並んでいる。

 町を見てみても、ところどころに要塞らしきものがあるし、城もかなり堅牢な城壁に囲まれているようだ。

 オルフェス王国にも城壁はあるが、これはその比じゃないな。敵の侵入を防ぐというより、敵を返り討ちにするって感じがする。


「この国は軍事国家ですからね。海にも面していて、海軍も持っているようです」


「なんか物々しいね」


「今は落ち着いているようですが、以前は侵略国家だったらしいですよ。周りの国は手あたり次第侵略して、自分の領土にって感じですね」


「アースが変えたのかな」


「まあ、元々先の見えない政策だったようですし、単純に力不足でやめただけかもしれませんが」


 侵略国家だったってことは、周りの国からめちゃくちゃ恨まれてそうだなぁ。

 だからこそのこの防備なのかな? この分じゃ、防衛にはめちゃくちゃ力を入れてそうだし、国境とかはかなり厳重そうだ。少し跨いだだけで殺されそう。


「さて、アースは城にいるようですが、いかがしますか?」


「うーん、流石に直接乗り込めないよね?」


「でしょうね。言葉はともかく、異邦人の子供ですし」


 軍事国家なら機密なんかも結構あるだろうし、オルフェス王国の城と違って安易に入ることはできないだろう。

 王様の遣いってことにしてもいいけど、下手なこと言って王様に迷惑はかけたくないし、そもそもやろうと思えば隠密魔法を使えば忍び込むことくらい容易だ。本気で入りたいならそっちの方法を使う。

 まあ、今は様子見でいいんじゃないかな。町に出てくるようならそこで話すし、そうでないなら連絡を取って来てもらえばいい。

 せっかく他国の皇都に来たんだ。少しくらい観光して、お土産でも買って帰らないと。


『なんか揉めてるらしいけど、それはいいの?』


『どうだろう? アースなら軽くいなしそうな気もするけど』


 確か、宰相の権限を使って住人を避難させたけど、その説明が不十分だったって抗議が来てるんだっけ?

 避難させたのは王都ではなく、もっとカオスシュラームの影響が懸念された北東らしいけど、一部の話を信じずに残っていた人や、たまたま避難地域に指定されなかった別の町の人達が色々言っているようだ。

 それだけならただの文句で済むんだけど、そうやって避難させた人達が未だに帰ってこないこともあり、色々な憶測を呼んでいるようである。

 まあ、私もエルに聞いただけで詳しくは知らないけど、そんなにまずい状況なんだろうか? ただの文句程度だったら、アースなら全然動じなさそうだけどな。


「まあ、そのあたりも聞いてみたらいいんじゃないですか? これから会うのですし」


「それもそっか」


 なんにせよ、まずは皇都観光である。次にユーリと一緒に来るためにもある程度は把握しておかないとね。

 そう思って町を歩いてみた。

 ただ、何というか、重苦しい雰囲気を感じる。

 軍の設備がたくさんあるから、と言うのもありそうだけど、なんかみんなピリピリしてるというか、機嫌が悪そう。

 ちょっとおすすめのお店を聞いただけでも、口には出さなかったけどあからさまに嫌な顔されたし、何かがおかしい。


「ん? あれは……」


 そう思っていたら、大通りのところで、なにやら集まっている集団を発見した。

 その手には何かが書かれた木の板を持っており、大声で叫びながら闊歩している。

 その叫んでいる内容、そして、木の板に書かれている内容を見るに、どうやらアースに関することらしかった。

 『悪魔の遣いを許すな!』、『国を乗っ取ろうとした逆賊を許すな!』など、概ねアースを貶すようなことが書かれている。

 揉めてるとは聞いたけど、そんなデモ行進が行われるほどだとは思っていなかった。


「どうなったらこんなことになるの?」


「さあ……まあ、宰相としての地位に納まらない指示を出したのですから、叩く人がいるのは納得ですが」


 まあ、いきなり訳も分からず避難させたのだから、それを不審に思う人はいるだろう。それも唐突にとなれば、何か裏があるんじゃないかと疑うのは当然だ。

 でも、それで困るのは王族側であって、国民ではないような?

 いや、そりゃ知り合いがいたり、家族が居たりする場合もあるだろうから、彼らが行方不明となれば反発するのはわかるけど、命令違反をして責任を取らなきゃいけないのは城の人達だろうし、わざわざ残された国民が奮起するほどではないような。


「……ちょっと、詳しく聞いてみた方がいいかも」


 なんだかきな臭くなってきたし、まずは話を聞いてみることにしよう。町に出てきたら、なんて言ってる場合じゃない。

 私はエルにアースと連絡を取ってもらい、夜、竜の谷で会おうという約束を取り付けた。

 今すぐでもいいけど、この状況を考えるに、アースは今めちゃくちゃ忙しそうである。国民への対処もそうだし、上司である皇帝に対する説明もそう。そんな微妙な立場の人を昼間に呼び出すのはちょっと可哀そうだ。

 そう言うわけで、誰にも邪魔されない時間に、誰にも邪魔されない場所で話を聞こうということになったのである。


「町の人達にも聞いてみますか?」


「まあ、一応?」


 流石に、あのデモ隊に話しかける勇気はないので、それを遠めに眺めていた人に話を聞くことにした。

 話を聞く限り、デモ隊が怒っているのは、アースが大量の人々を一瞬にして消したことだ。

 もちろん、最初の避難には転移魔法陣を使ったし、その後オルフェス王国まで移動させたのは竜の翼によるものだけど、彼らが理解できるのは、最初の転移魔法陣で移動したってところだけだ。

 話だけ聞いて、竜が運びましたなんて聞いても、そもそも竜がいるわけないし、いたとしてもわざわざ運ぶわけがないと思っている人が大半である。

 だから、国民達から見ると、アースが急に転移魔法陣を使って大量に人を移動させたかと思えば、その人達がそのまま行方不明になった、と言う状況なわけだ。

 この世界で、大量の人を使って行うもので、またきちんと理由を説明できないものと言えば、可能性の一つとして思いつくのは生贄の儀式である。

 悪魔を呼び出すため、魔眼を作るため、色々と生贄の儀式はあるが、いずれも禁忌に触れるものである。

 それを、一国の宰相がいきなり行ったのだから、そりゃ反発が起こるのも当然だ。

 アースのことを、悪魔に魂を売った愚か者、あるいは悪魔の遣いと罵り、そんなアースを匿っている王族に対して反抗しているわけである。

 まあ、普通こんなことしたら問答無用で殺されても文句言えないと思うけどね。

 いくら王族が怪しい事件があったとしても、それを大っぴらに言うことは、口封じしてくださいと言ってるようなものだ。

 もし仮に、その言葉に賛同した人々が大勢集まったとしても、王族が犯した罪をいったい誰が裁くというのか。

 まあ、中にはそう言う時のために司法組織は別で用意してるって国もあるが、この国は軍事国家である。軍が力を持ち、その最高権力者である皇帝はそれを自在に操ることができる。

 そんな状況でデモなんて起こしたら、軍を差し向けられて惨殺、なんてことになってもおかしくない。

 そうなってないってことは、アースが口添えして止めてもらっているか、あるいは皇帝とかも無理があると思って黙認しているのかのどちらかだろう。もしくは、軍の関係者もデモ隊に混ざっているのかもね。

 いずれにしても、かなり面倒な状況なのに変わりはない。早いところ沈静化しないと、何をされるかわかったもんじゃない。

 とにかく、早くアースに会って事情を聞かなければ。

 感想ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] どうするんかねぇ
[一言] この国の人達から見ればデモの内容の様に思われても仕方がないのですか 実際は違いますし、見せて説明できるものでもないのでもどかしいです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ