表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第二章:カオスシュラームの後始末編
870/1578

第二十九話:復興の問題

 第二部第二章、開始です。

 カオスシュラームの元凶である神剣を手にしてから一か月ほど。地上に侵食していたカオスシュラームは完全に姿を消したようだ。

 元々、天使は神様に命令されたことは確実に守るようになっている。だから、神様が「地上からカオスシュラームを取り除け」と言ったなら、どんな細かなものでも確実に取り除いてくれるのだ。

 もちろん、その分時間はかかるだろうが、しばらく様子を見ていても、あれからカオスシュラームによる被害の報告は来なかったので、完全に落ち着いたとみていいだろう。

 これでようやく落ち着ける。避難していた人達も、元の場所に戻ることができるだろう。

 ただ、これからという見方もできる。

 と言うのも、カオスシュラームによって汚染された場所は、荒野のようになってしまっているからだ。

 もちろん、そこに町があったなら、きちんと建物は残っているだろう。ただし、それは非常に脆くなっており、普通に住むのは不可能な状態だ。

 カオスシュラームに触れたことによって、無機物も影響を受けたんだろう。

 闇の眷属に堕ちた人を元に戻せるのだから、頑張れば元の状態に戻せるんじゃないかとも思ったけど、天使達はそこまでやってくれるほどお人好しではないらしい。

 だから、大地は荒れ、建物は風化しているような状態。これでは、再び住むには復興する必要がある。

 だからこその、これからという見方だ。

 もっとも、多くの町はカオスシュラームの被害に遭わなかった場所だし、それを考えなければならないのはごく一部だけだとは思うけどね。


「今回カオスシュラームが侵攻した場所はルナルガ大陸の北東から南東にかけてのごく一部の地域のみ。それでも、地図上でこれだけと考えると相当な範囲だよね」


 戻ってきたエルから報告を聞いたけど、地図上で見るだけなら大した範囲ではない。でも、ルナルガ大陸はこの世界の大陸の中でも最大級の大きさを持つ大陸である。

 これを、私がいるシャイセ大陸に当てはめるなら、少なく見積もっても二割ほどは侵食されている計算だろう。

 そう考えると、かなり危なかったんだなと思う。


「うまく復興できるといいんだけど……」


 幸い、主要な都市はほとんど入っていなかったようだけど、中には大打撃を受けた国もある。

 竜や精霊の手によって人は避難させたけど、流石にその後の復興にまで力を貸すことはできない。

 そもそも、避難させた方法が無理矢理気絶させて運んだり、問答無用で背中に乗せたり、確認なしに転移させたりとかそんな方法ばっかりだ。

 精霊は元々姿が見えないし、竜は姿を見られただけで恐怖を与える始末である。当然、今回の避難によって助かった人がいたとしても、竜に感謝する人なんていないだろう。

 そう考えるとちょっと可哀そうだけど、今回は仕方ないよね。

 一応、送り返すだけなら手を貸せるけど、復興に関しては自力で頑張ってもらうしかない。


「そもそもそれ以前の問題だと思いますけどね」


「どういうこと?」


 隣にいたエルがそんなことを言ってくる。

 と言うのも、まず避難した人はほとんど説明なしに連れてこられている。

 もちろん、竜の中には、竜脈の整備のために城に入る必要があるなどで、国の中枢に入れるような役職な人も多く、その竜から説明されて避難した、と言う人もいるだろうが、時間がないからとか、話しても聞いてくれなかったからとか、そう言う理由で無理矢理連れてきた人も多い。

 そうなってくると、そもそもカオスシュラームで大変だったということすら知らない人もいるわけで、いきなり拉致されて知らない場所に連れてこられたと喚き散らす人も出てくるわけだ。

 まあ、叫んだところで状況は変わらない。説明が欲しいんだろうけど、この国だって事前に避難先として使っていいと許可を得たわけでもないし、たまたま私が居ついた国だったからと言う理由で竜達が案内したに過ぎない。

 説明できる人がいるとすれば、それは竜や精霊のみであり、そのどちらも人に話をできるような種族ではない。

 一応、竜なら【人化】してやれば話せないことはないかもしれないけど、その国からの発表でも何でもない、ただの一般人からの説明を信じるかどうか、だよね。

 そんな状況になってるなら、王様に頼んで説明会でも開いてもらった方がいいかもしれないね。


「世界の危機だったとはいえ、ちょっと面倒なことになったね……」


「全くです。ハクお嬢様や、この国の王でちょっと感覚が麻痺していましたが、私達の姿を見たら、普通は話なんて聞きませんよね」


 エルはそう言ってため息を吐く。

 エルも人々を避難させるために結構働いてくれたようだけど、まあ話を聞かない人が多かったらしい。

 竜の姿はもちろん、人の姿でもね。

 途中から、なんでこんな奴らのために働かなければならないんだと、心の中で愚痴っていたらしい。

 なんというか、お疲れ様だね。


「アースもかなり苦労しているようです」


「アースが?」


「はい。アースはルナルガ大陸の担当ですから、必然的に指揮を任されることになりました。それに、アースはルナルガ大陸にある国の宰相でもありますからね。その権限を使って避難を促していたようです」


「へぇ、アースってそんな地位に就いてるんだ」


 確かに、竜脈の整備のために城に入る必要がある時もあるから、城に入る手立ては必要ではあるけど、まさか宰相とは。

 ホムラみたいに、冒険者っていうのが一番手っ取り早い気もするけど、冒険者だとSランクにならないとまず無理だろうし、宰相と言う地位の方が楽なのかな?

 なんにせよ、国の舵取り役としての地位に就いてるなら避難の指示はスムーズだったことだろう。


「苦労してるって、何か問題があった?」


「そうですね。私達から見れば、アースの指示は的確でした。ハーフニル様のご命令通り、人々を避難させるために転移魔法陣を無理矢理起動し、カオスシュラームの範囲外へ。その後、竜や精霊によってこちらの大陸まで運びました。ただ、その際の説明が不十分だったと、文句を言われているようですね」


「ああ……」


 まあ、そりゃそうなるよね。

 初めから、カオスシュラームが迫ってきているから逃げてくれ、なんて言っても伝わるわけない。だって、カオスシュラームなんてもの、この世界の人達は聞いたこともないはずなのだから。

 いや、1万年前には存在していたのだから、もしかしたら文献とかが残ってるかもしれないけど、だとしても知る人はごくわずかだろう。

 カオスシュラームについて説明したところで、初見でピンと来る人はいないだろうし、よくわからないけど危険なものが迫っているから逃げろ、と言われているようなものだ。

 しかも拒否権はなしとくれば、反発する人が出てくるのも当然である。

 国を守るための行動だったのに、非難されてしまうとか可哀そう。

 何とかうまく丸く収まってくれたらいいんだけど。

 私はアースの苦労を思いながら、小さくため息を吐いた。

 感想ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まあ、難しい問題だねぇ
[一言] カオスシュラームの実物を見せるわけにもいきませんし もうないですし帰ってきたから色々とボロボロになっているので お前のせいだと言われてしまうかもしれません。説明するのは難しいですよ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ