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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第一章:カオスシュラーム編
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幕間:竜珠の生成

 主人公、ハクの視点です。

 私は今、お父さんを始めとしたエンシェントドラゴン達に囲まれている。

 別に何か悪いことをしたわけじゃない。けれど、これから重要なことを行うのは確かだ。

 それが、竜珠の生成である。

 今回、私は一時的にではあるが、神様になってしまった。神剣ティターノマキアの主人と認められるために、神様としての力を持つ必要があったのだ。

 本来なら、用が済んだ時点で元に戻るはずだったけど、神剣の主人と認められている関係上、力がない状態が続くと、神剣の神力に精神を揺さぶられ、自我の崩壊を招く可能性がある。

 だから、そうならないように、創造神様が私の魂の一部を書き換えて、神様の力を扱えるように調整してくれたのだ。

 その結果、定期的に神剣を振るってやれば、自我の崩壊まで行くことはなくなったが、その結果として、私の魔力はほぼすべてが神力に変わり、またその量もだいぶ増えてしまった。

 今の私は、神力を駄々洩れにさせている状態である。

 ただ生活するだけだったらそれでもかまわないけど、この状態が続くと、周りの人から警戒されやすくなる。漏れ出た神力がオーラとなって見えて、なんかこいつやべーかもと思われてしまうというわけだ。

 それを防ぐためには、神力を操作し、漏れ出ている神力を収める必要があるのだけど、今の私の神力の量は半端じゃないようで、抑えようと思っても溢れ出てきてしまう始末である。

 このままでは、お姉ちゃんやお兄ちゃんにいらぬ威圧感を与えてしまうことになるし、それは避けたい。

 そこで考えられたのが、竜珠の生成と言うわけだ。

 竜珠とは、竜が魔力を固めて作り出す珠のことで、本来は別の誰かに自分の力を分け与える目的で生成するらしい。

 竜珠に魔力を込めれば、魔石と同じように竜珠に込められた魔力を使用することができ、それを体に取り込めばその力を丸々取得することができる。

 要は、パワーアップアイテムみたいなものだ。

 もちろん、普通はこんなもの作らない。竜が特に認めた相手で、その中でも特別に特別な相手に稀に贈るくらいなものらしい。

 じゃあなんでそんなものを作るのかと言われれば、竜珠が神力を貯めるタンクとしての役割も果たしてくれるからだ。

 自分の力を分け与える目的で生成されるので、竜珠になった時点で自分の魔力とは別物になる。だから、この有り余っている神力を竜珠として固めてしまえば、ひとまず駄々洩れにならないくらいには制御できる状態にできるということである。

 さらに、竜珠自体は自分で取り込んでしまえば、竜珠分の神力が失われることもない。

 その代わり、取り込む際に体の一部に埋め込む形になるので、そこがちょっとあれだけど、別に普段は服で隠せるし、裸を見せる機会なんてそうそうないのだから特に困ることもないだろう。

 後は、竜珠の作り方を教えてもらうだけなのだ。


〈これがハク様の神力……すさまじい力を感じるな〉


〈だねぇ。これもうボク達の何倍も強いよね?〉


〈元から我が姫の力は逸脱しておられた。これはむしろ、元に戻ったと表現する方が自然だろう〉


〈最高に痺れるねぇ。俺っちもハクの大将がこんなに成長してくれて鼻が高いぜ〉


〈ま、ハクならこれくらいは当然だよな。そのうちハーフニル様も超えたりしてな?〉


〈おい、ハーフニル様に対して不敬であるぞ!〉


〈……此方もリヒトに同意。ホムラは黙るべき〉


〈よし、ホムラ、そこになおれ〉


〈なんで俺だけ当たり強いんだよ!?〉


 みんな忙しいだろうに、私のために集まってくれたらしい。

 まあ、私が一度は神様になったというのを聞いて、どれだけパワーアップしたのかを見に来たっていうのが正しい気もするけど、竜珠を作るというのも結構なイベントらしいので、それも楽しみにしているのかもしれない。

 こんなに見つめられているとちょっと照れるけど、そもそも竜珠ってそんな大掛かりなものなんだろうか。てっきり、適当に神力を込めて終わりと思っていたんだけど。


〈ハク、準備はいいか?〉


〈はい、大丈夫です〉


〈よろしい。ではこれより、竜珠の生成に取り掛かる〉


 今は私も竜の姿になっている。どうやら、竜珠の生成に必須らしい。

 お父さんは私の下まで近寄ってくると、私の喉元あたりに手を伸ばしてくる。

 何をする気かはわからないが、自然と上を向いて喉を差し出すと、お父さんはそこから一枚の鱗を引き抜いた。


〈竜珠の生成には鱗が必要となる。その鱗は、その竜にとって最も古く、重要なものでなければならない〉


〈それが、そうなんですか?〉


〈そうだ。もっとも、ハクは竜の姿になれるだけで本来は竜ではなく精霊だ。だから、重要と言われても実感がないだろう?〉


〈それはまあ、そうですね〉


 まあ、引き抜かれた時ちょっとくすぐったかったけど、それくらいである。

 取られたからと言って別に怒る気にもならないし、鱗の一枚や二枚なくなっても問題ないとさえ思う。

 純粋な竜だと違うんだろうか? それを取られたら激怒したりするんだろうか。


〈重要とは言っても、抜けたからと言って永遠に生え変わらないわけではないから、形式的なものだ。とにかく、この鱗が器となることだけわかっていればいい〉


〈わかりました〉


〈では次だ〉


 お父さんは私に抜いた鱗を渡し、珠の形にしてみろと言ってきた。

 と言っても、文字通りの意味じゃない。

 竜珠とは言っているが、別に完全な球体である必要はなく、何なら四角でも三角でもいいらしい。

 重要なのは、これを神力の入れ物にすること。要は、神力を流し込んでも壊れず、溢れず、漏れ出さない、そんな仕組みを作れと言うことだ。

 最初は意味がわからなかったけど、追加の説明を聞いているうちになんとなく理解する。

 確かに、竜の鱗は武器とかの素材としてとても優秀ではあるけど、ただ闇雲にとんてんかんてんやってもそんないいものはできないだろう。それを一流の装備に仕上げるには、細かな部分を丁寧に調整していく必要がある。

 この鱗だって、確かに魔石に換算したら数十個くらいの容量はあるかもしれないけど、それだけじゃ到底足りない。

 もっと深く、もっと広くするためには拡張する必要があるだろう。

 すなわち、空間魔法だ。

 いわゆる【アイテムボックス】と同じような構造にすればいいんじゃないかな?

 空間魔法は結界ばかり使っていてそっち系はあんまりやったことはないけど、うまくできるだろうか。


〈焦る必要はない。うまくいかないようであれば、我も力を貸す。落ち着いてやれ〉


〈は、はい〉


 お父さんやみんなのアドバイスを受けながら、何とか形にしていく。

 その過程で、鱗の形が珠のようにまん丸になっていった。

 なるほど、結果として珠のようになるから、竜珠って呼ばれてるのかもしれないね。


〈これで大体は完成だ。後は、慎重に神力を込めて行けばいい〉


〈了解です〉


〈注ぐ量に気をつけろ。一気に流し込めば、すぐに砕けるからな〉


〈なんだか、魔石の変換みたいですね〉


 魔石を変換する際も、慎重な魔力制御が求められる。

 それと同じ感覚でいいなら、結構得意だよ。

 と言っても、今回は神力だからもうちょっと慎重にやった方がいいかもしれないけど。


〈……できたな〉


〈おお、これが竜珠……〉


 しばらく神力を込めると、ようやく竜珠が完成する。

 見た目は綺麗な銀色の小さな珠だ。神力もあまり感じられないし、知らない人が見れば、ただの綺麗な石程度にしか思わないかもしれない。

 空間魔法で拡張した際に、神力が漏れ出るのも抑制されていたのかな。これなら確かに、取り込んでもこれに込めた分の神力が漏れ出ることはないだろう。

 私自身の神力も、竜珠に込めた分減ったおかげで、容易に制御できるようになった。

 これなら、お姉ちゃん達を無駄に怖がらせる必要もないだろう。よかったよかった。


〈お父さん、みんな、ありがとうございました〉


〈うむ。神力の塊故、容易に壊されることはないとは思うが、注意せよ。壊れたら、込められていた神力が再び溢れ出すことになるからな〉


〈はい、気を付けます〉


 私はお父さんに促されて、竜珠を取り込む。

 場所はどこでもいいとのことだったので、とりあえず胸の間にしておいた。

 心臓の位置だし、ここなら無意識に守るように行動できるだろう。普段はきちんと服で隠せるしね。

 これでようやく一件落着である。私はほっと安堵し、胸の間に収まった小さな珠をさすっていた。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 定番な位置ではあるよね。 ……壊れて地上に再び神力が溢れて……
[一言] 壊れないように注意って何かのフラグっぽいw
[一言] ハクちゃんの竜珠作成を通じてこの世界の竜の貴重な生態を見ました 竜珠の力を使うのはティターノマキア振るう以外そうそうないでしょう(フラグ)
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