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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第一章:カオスシュラーム編
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第八話:行動開始


「……神様に、直接会いに行くというのはどうでしょう?」


〈なに?〉


 無い知恵を絞って、ようやく絞り出た答えがそれだった。

 だって、神様は多分この状況に気が付いていない。そして、連絡する方法はあっても、応答してくれない。ならば、こちらから直接言いに行くしかないだろう。

 もちろん、無謀なことはわかっている。そもそも、神界が私のような奴が行ける場所なのかもわからないし、神様自身と話せるかどうかもわからない。

 でも、このまま何もせずに見ているだけなんてできない。

 場所はルナルガ大陸。このままいけば、私の知り合いで言うなら真っ先に犠牲になるのはローリスさんの率いるヒノモト帝国だろう。

 あそこはルナルガ大陸の端に位置しているし、侵食が最も早いと思う。

 ローリスさんのことだから、国を捨てて逃げ出すなんてことはしないはずだし、何とかして食い止めようとするだろう。そして、泥に侵され、闇の眷属となってしまう未来が見える。

 闇の眷属と言うのがどんなものかは知らないが、敵であるなら、私はローリスさん達と戦わなければいけないことになる。そんなの絶対に嫌だ。

 できることがあるなら、今すぐにでもやるべきである。たとえ、どんなに無謀なことでも。


〈……確かに、それが一番手っ取り早いか〉


「でもできるの? 神界に通じるルートはとうに閉じているはずだけど」


〈閉じているならこじ開ければいい。幸い、場所には見当がついている。自分達が蒔いた種だ、そのツケは払ってもらう〉


「ならばやりましょう。この地上のためにもね」


 結構な無茶振りだと思ったのだが、お父さん達は割と乗り気なようだった。

 でも、仮にも神界へ通じる道をこじ開けるなんてできるんだろうか?

 場所には心当たりがあると言っていたけど……。


〈リュミナリア、各地の精霊に伝えろ。これより避難を開始する〉


「ええ、準備はできてるわ。でもどこに避難させるの?」


〈ルナルガ大陸が元なら、最も遠いのはシャイセ大陸だろう。精霊の加護を活用し、どんなルートでもいいから避難させろ。文句を言う奴は黙らせても構わん〉


「わかったわ。ユーリ、ちょっと手を貸してくれる?」


「ぼ、僕ですか?」


「転移が使える精霊はそう多くはないの。あなたがいてくれたらとても助かるわ」


「そ、そういうことなら!」


 どうやらまずは避難を開始するようである。

 今のところ、影響はごく一部だけである。だが、そのうち川の流れでは浄化されなくなり、溢れ出すことは目に見えている。

 そうなってから逃げても遅い。侵食速度にもよるけど、気づけば逃げ場がなくなっているなんて状況にもなりかねない。

 だからこその、先んじての避難だ。

 最悪、ルナルガ大陸は放棄するしかないかもしれない。ヒノモト帝国は大丈夫だろうか……。


〈ホムラ、エル、お前達も人を避難させるのに尽力しろ。王や皇帝に取り入って、国から避難を呼びかけるのだ〉


〈承りました〉


〈かなりきつそうだが……まあ何とかやってみるか。ちび共が死ぬのも見たくねぇしな〉


〈ネーブル、聞いているな。お前とリヒトで各地の竜に伝えろ。内容はわかっているな?〉


〈は、はひ……!〉


 どこかで聞いていたのか、ネーブルさんが飛び立つのが見えた。

 かなり大掛かりになって来たけど、やりすぎくらいがちょうどいいか。

 なんとしても、犠牲者を出してはならない。


〈ハク、お前は我と共に来い〉


「は、はい! でも、どこへ行くのですか?」


〈神々が住んでいた土地。今は忘れられた地だ〉


「忘れられた地……」


 忘れられた地。確か、神様が地上から去った後、人々は荒れた土地では住めないとなって、別の地に移動したみたいなことが書かれていた気がする。

 と言うことは、以前人々が暮らしていた場所ってことかな。

 そんな場所があるとは初耳だが、お父さんが心当たりがあるというのだからそこには何かがあるのだろう。

 私が言い出したことだ。私が行かなければどうする。


「わかりました。一緒に行きます」


〈よし、では行動を開始する。くれぐれも、泥には触れるなよ。自分のままでいたいならな〉


「私達も頑張りましょうか」


「はい!」


 そうして、みんな各自目的を果たすために移動を開始した。

 とんでもないことになっちゃったけど、ここまで来たらやるしかない。


〈ハク、我の背中に乗れ〉


「い、いいんですか?」


〈こんな時に遠慮する必要があるか? いいから乗れ〉


「わ、わかりました」


 お父さんの背中に乗るなんて初めてのことだ。

 お父さんはかなり大きいから、たとえ伏せてもらっても乗るのは難しい。

 仕方ないので跳躍魔法で飛び乗ると、巨大な翼を広げて空に飛び立つ。

 結構感動ものだけど、今はそうも言ってられないか。


「お父さん、忘れられた地と言うのはどこにあるんですか?」


〈この世界の大陸は、大きく分けて五つあることは知っているな?〉


「はい。確か、扇のように広がっているとか」


 大陸の並びについては結構曖昧なところも多いが、概ね扇状に広がっていると言われている。

 だから、隣の大陸と言う風に言われることも多く、その際に中心となるのがルナルガ大陸だ。


〈忘れられた地はその扇の根元部分に存在する〉


「と言うことは、すべての大陸から結構近いんですかね?」


〈一応な。だが、近いと言っても大陸一つ挟む程度ではすまんぞ〉


「そんなに遠いんですね……」


〈なに、我の翼なら一週間もかからない。ハクはのんびりと座っていればいいだろう〉


「あ、ありがとうございます」


 お父さんって、結構速いんだね。

 私も、飛ぶのには割と自信があるけど、お父さんはその大きさからするとかなりのスピードで飛んでいるように見える。

 私の飛ぶ速度が速いのはお父さん譲りってことなのかな? よくわからないけど。

 とにかく、一週間かからないとは言っても、一昼夜でどうこうできる問題ではないようだ。

 家にはカムイも残してきてしまったし、お姉ちゃんやお兄ちゃんにも事情を説明してないから心配されそう。

 今のうちに、通信魔法で連絡しておいた方がいいかな。


「お父さん、家族に連絡を入れてもいいでしょうか」


〈構わん。むしろ、動けるならそちらでも動いてほしいくらいだからな、事情を伝えて、避難を促しておけ〉


「わかりました」


 お父さんに許可を取り、お兄ちゃん達に連絡を取る。

 ついでに、聖教勇者連盟にも連絡しておこう。あそこが動いてくれるなら、大抵の国は避難に協力してくれるだろうし。

 それからローリスさんにも。ヒノモト帝国まで侵食するかはまだわからないけど、下手に粘って取り込まれても困る。

 あらかじめ、どういうものなのか伝えておいた方がいいだろう。

 他にも、私の知り合いで思いつく限りの人には連絡しておいた。

 一部は通信魔法も使えず、通信魔道具も持ってない人もいるのでその人には伝えようがないけど、その人達はどうにか雰囲気で察してほしい。

 多分、近いうちに国がたくさん動くだろうから、わかるとは思うけど……。

 とりあえず、今の私にできるのはこれくらいだ。

 後は、みんな無事に生き残るのを祈るのみ。

 一番いいのは、さっさと解決してしまって、なんなんだよと文句を言われることかな。

 そうなるといいなと願いつつ、私は忘れられた地に想いを馳せた。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 初めてのパパの背中( ˘ω˘ )
[一言] 今回はハーフニルさんと共に行動。RPGとかで言う強キャラなので 安心感と頼もしさを感じます
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