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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第一章:カオスシュラーム編
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第六話:空から降ってきた?

 まず考えるべきは、この剣が何なのかと言うことだろう。

 こんな巨大な剣が自然に生成されるわけないし、何らかの理由でここに出現したということになる。

 探知魔法で見る限り、かなりの魔力を内包していることがわかる。しかし、その魔力は汚染されているようで、かなり嫌な感じのする魔力だ。

 少し嫌な感じがする程度だったら、魔力溜まりの魔力、その中でも神力がそんな感じな気はする。

 元が神様の魔力だからなのか、今の時代の人達には強すぎる魔力だからか、普通の魔力と違って何となく嫌な感じがするのだ。

 この剣は、その嫌な感じを凝縮した、とても嫌な何かと言う感じがする。

 そう考えると、これは神具と言う可能性もあるのだろうか?

 こんな巨大な剣を物理的に作り出せる人はいないだろう。まあ、ドワーフが総力を結集して、とかなら作ること自体はできるだろうが、こんな場所に放置する意味はない。

 剣身が地面に突き刺さっていることから見ても、落ちてきた、と考えるのが自然だろう。

 神界がどこにあるかは知らないが、普通に考えれば天高くな気がするし、そこから何かの拍子に落っこちてきてしまった、と言うことなのだろうか。


「仮に神界から落ちてきた神具だとして、ならなんでこんなに邪悪な雰囲気を発しているのか」


 少なくとも、聖教勇者連盟に保管されている神具はこのような気配はなかった。

 何となく似ている気がするのは、神力も混ざっているからと考えるのがよさそうだ。

 では、なぜそんな神聖な武器がここまで汚染されているのか。この汚染している物質は何なのか、それが問題になってくる。


「うーん……?」


「何かわかりそう?」


「いや、まったく。なんでこんな風になってるのか見当もつかない」


 強いて考えるなら、例えばアンデッド系の魔物なんかは、倒した時に呪いをかけてくることがある。それは基本的に倒した人に向かってかかるものだけど、時たま武器や防具にその性質が宿ることがある。

 よくゲームで呪われた装備なんて聞くことがあると思うけど、そんな感じだね。

 呪われた装備は性能自体に変化はあまりないが、身につけた者を軽い興奮状態にしたり、吸血衝動に駆られたり、そういうことをしてくることもある。

 それと同じように、この剣も何か邪悪なものを斬っていて、その過程で呪いに侵されてしまった。その結果、こんな邪悪な雰囲気を発していると考えれば、一応辻褄は合う。


「そう考えると、この剣の持ち主は何かと戦っていたってことになりそうだけど」


 この剣がどこから来たのかはわかっていない。けれど、仮に神界から来たと考えるなら、今神界はどうなっているのだろうか。

 まさかとは思うけど、未だに神様同士で喧嘩してるとかないよね?

 確かに、神様がこの地上から去った理由は、仲間割れによるもので、戦いの場を神界に移したとか言ってたような気がするけど、すでに1万年も前の話である。

 その間ずっと戦い続けていたと考えるのは流石に時間が経ちすぎているし、普通に考えればもうとっくに仲直りしているか、そうでなくても表面上だけでも喧嘩しないって感じになっていそうだけど。

 いや、でも、相手は神様だし、そうとも言い切れないのだろうか?

 神様について詳しく知っているわけではないが、恐らく不死の存在であることは確かだろう。

 長い時間を過ごすにおいて、退屈は一番の敵だと聞いたことがあるし、ただの喧嘩でも十分なスパイスとなりえるのかもしれない。

 だから、せっかくだからとうっかり1万年くらい続けていても不思議はない、かもしれない。

 まあ、完全に想像だけど。


「神様同士で戦っているとしたら、こうなってるのはおかしいんじゃ?」


「うーん、まあそれはそうなんだけど」


 この剣が纏っているのは邪悪なものだ。多神教で多くの神様がいるとはいえ、悪の神様とか存在するのだろうか?

 いや、例えば死を司る、とかそういうものはいるかもしれないけど、それは単にそういうものを司っているだけで、悪と言うわけではないだろう。

 悪そのものを司る神様だとしても、だからと言って神様自身が悪とも限らないし、そう言う神様を斬ったからと言ってこんな呪いはつかないと思う。

 そう考えると、神様以外の何かがいるのだろうか。よくわからなくなって来たな……。


「まあ、別の理由かもしれないし、それはここではよくわからないから置いておこうか」


「なら、これどうする?」


 次の問題はそれだ。仮にこれが邪悪なもので、ついでに言うならフルーシュさんを襲った原因だったとして、どうするべきだろう。

 一応、【ストレージ】に回収することはできるだろう。触れていなくても、ある程度近ければ【ストレージ】は反応してくれる。

 ただ、これを【ストレージ】に入れるのはちょっと気が引ける。明らかにやばそうなものだし。

 せめて、これが何かわかっているなら考えなくもないけど、現状はなんか嫌な感じのする呪いのようなものってだけだし。


「……そう言えば【鑑定】でなにかわかったりしないかな」


 【鑑定】は相手の情報を見抜くことができるスキルだ。

 最近はあんまり使う場面もなかったけど、これを使えば何かわかるかもしれない。

 私は早速剣に向かって【鑑定】をしてみる。


「ティターノマキア、ね」


 どうやら、この剣は神様の武器の一つらしい。

 現在、地上に残っている神具は、厳密には武器ではなく、その欠片とかガラクタと言った方が正しいらしいのだけど、この剣はまさしく神剣のようだ。

 ただ、現在は『カオスシュラーム』と呼ばれる泥によって侵されているようだ。

 性質的には、お母さんの予想通り呪いに近いらしく、この泥が剣を媒体に生成されることで川に流れだしているようである。

 呪いと同じなら、浄化魔法で何とかなるだろうか。あの時は慌てていて試せていなかったけど、呪いと同じなら浄化魔法だって効くはずである。

 それによって浄化できれば、泥の生成も止まるだろうし、フルーシュさんだって救えるはずである。


「まずはお母さんに連絡かな」


 私は通信魔法でお母さんでこのことを伝える。

 すると、あちらでも進展があったようで、どうにか進行を食い止めることができてきたようだった。

 ただ、浄化魔法で何とか出来るのではないかと言うのは無理なようである。

 お母さんも試してみたが、浄化魔法程度では受け付けないほど悍ましい何かのようだ。

 浄化魔法が受け付けないって普通にやばいと思うんだけど……。

 とにかく、そう簡単に事は運ばないようである。


『そちらには、神剣があったのよね?』


『うん。今も原因っぽい泥を生成してるんだと思う』


『うーん、直ちに影響はなさそうだけど、何とかしないといけないことは確かね』


 それは確かに。これがここに出現してからまだ間が経っていないから影響が出ていないのかはわからないが、このまま邪悪な泥を生成し続けたらいずれ森は死ぬだろうし、下流にある農村だって危ういだろう。

 どうにかして泥の生成を止めるか、あるいは移動させるかしないといけない。


『ハーフニルにも相談してみるわ。とにかく、一度戻ってきて?』


『わかったよ』


 現状、この剣に対してできることは少ない。

 浄化魔法が効かないんじゃ、いくらここにいても無駄だろうし、ひとまずお母さんの下に帰って、お父さんにも協力を要請するのがいいだろう。

 私は通信魔法を終了すると、ユーリにも事情を伝える。

 なんだか嫌な予感がするけど、できれば外れてほしいものだ。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] もし戦い続けてたらはた迷惑なこって( ˘ω˘ )
[一言] おぉついに神界が関わってくる? 本当に神界はどうなって何をやっているのやら、下界に被害が出ても 神々はあんまり興味も責任も持ちそうにないイメージがありますがここの神様はどうでしょうか
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