表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二部 第一章:カオスシュラーム編
843/1585

第五話:元凶と思われるもの

 神代さんの指示がまだ効いていたのか、それほど待たずに転移魔法で送ってもらうことができた。

 辺りを見渡してみると、確かに近くに小さな農村が見える。

 近くに川も流れていて、シュピネルさん達の証言通りである。

 話の通りなら、このあたりの川のほとりに倒れていたってことになるけど……。


「なんというか、何もないね」


「そうだね……」


 辺りにあるものと言えば、農村とその畑、そして川、他は草原と森と言うよくある田舎の風景だ。

 探知魔法で見る限り、周りに魔物もいないし、川の水も特に濁っているわけでもない。

 違和感を探す方が困難な場所だ。あまりにも情報がなさ過ぎてびっくりである。


「どうしようか……」


 考えろ。ここで気絶してたってことは、何かしらの理由があるはずだ。

 そして、その理由はあの呪いもどきの仕業だということはわかっている。

 では、この場所にその呪いをかけそうなものはあるか? もちろんない。

 呪いをかけたのが人であるなら、移動してしまったという可能性もあるけど、もしそうだとしたらちょっとお手上げである。

 一応、あの悍ましい感触は覚えているから、探知魔法で探せないことはないけど、あまりに範囲が広すぎる。

 あの農村に住んでるとかでもない限り、普通に探すのは難しいだろう。

 可能性があるとしたら、フルーシュさんが必死に逃げてここに辿り着いたパターン。

 確か、あの子は川の精霊だったんだよね? であれば、川周辺をテリトリーにしていた可能性が高い。

 誰かと契約しているとかならともかく、そうでないなら自分を形作ったものの近くにいたがるだろう。

 逃げてきたというのなら、それはどちらからか。上流か、下流か。

 下流には農村がある。その先にはさらに草原が広がっていて、見えないくらいまで続いている。

 上流には森がある。鬱蒼とした森だ。

 何かあったと仮定するなら、森の方が可能性は高そうか。勘ではあるけど、いくら人には見えない精霊とはいえ、何かやるなら人のいないところの方がいいだろう。

 今のところ確信したわけではないけど、どっちにしろずっとここにいてもしょうがない。とにかく動いて、情報を集めよう。


「とりあえず、森に行って見よう。何かあるかも」


「わかった」


 探知魔法も使いながら、川に沿って森に入っていく。

 流石に、森の中になると探知魔法に引っかかる反応もある。ただ、魔力量からして、ただの魔物だろう。

 魔物が元凶の可能性もあるが、あれだけのことをやるのである、ただの魔物ってわけはないだろう。

 今はひとまず無視だ。その気になれば、少し竜の気を解放してやれば魔物は逃げていくし、邪魔されるってことはない。


「なんかドキドキするね」


「そ、そう?」


「ハクにとってはこれが普通?」


「まあ、慣れちゃったしね」


 確かに、普通は森の中に入るのなんて稀だろう。

 森の中を通っている街道を通るならともかく、森の奥へと進むことなんて何か理由がなければありえない。

 私の場合は、最初が森の中だったというのもあるけど、人外に知り合いが多いというのもあるだろうか。

 活動場所が町でない人が多いから、必然的に森の中のような場所にも赴く機会が多い。だから、慣れたんだろう。

 まあ、それ以外にも、依頼で森の中に赴くこともあるし、何か秘密でやりたいことがある時は森の中って結構便利なのだ。

 と言うか、ユーリも慣れていないわけではないだろう。

 私と会う前だっていろんな場所を旅していたみたいだし、私と会った後だって、転移魔法を覚えた後は私と一緒に色々回っていたんだから。

 町の聖女として引きこもっていたユーリはどこへ行ってしまったのだろう。


「今度は忙しくない時にまた来ようね」


「森で何するの?」


「んー? まあ、色々?」


 模擬戦でもするのかな?

 ユーリも、竜人として成長しているし、今は半分精霊と言うこともあって魔力が飛躍的に伸びている。

 私のように抑えすぎて気持ち悪いってことはないみたいだけど、普通に加減するのは難しいようだ。

 もちろん、それでも制御できるようにみっちり学んできたようだけど、それでも不安になる時はあるのかもしれない。

 まあ、それくらいだったら付き合って上げよう。いつも一緒にいるとはいえ、そういうことをするのは稀だしね。


「うん? これは……」


 しばらく奥へ進んでいくと、その違和感に気づいた。

 この川、上流に行くにつれてだんだん濁っていっている気がする。

 まあ、川は流れていく過程で浄化されて綺麗になっていくだろうし、よほど汚泥まみれと言うわけでもなければ普通のことだろうし、森の木々のせいで太陽の光が遮られているから、そのせいで汚く見えているのかなとも思っていたけど、どうやらそう言うわけでもないらしい。

 これは、なんだろう、泥か?

 真っ黒い、ねちゃねちゃしてそうな汚い泥。粘土っぽくもあるけど、それにしては色が黒すぎるだろう。

 いやまあ、黒い粘土もあるかもしれないけど、これはそう言うわけではないと思う。

 なんとなく嫌な予感を感じて、探知魔法で魔力を見て見ると、不可解な魔力が渦巻いていた。

 とても濃度が濃いのは確かだろう。魔力溜まりの魔力に似ているかもしれない。

 ただ、魔力溜まりと比べるとなんというか、不浄な感じがする。

 まるで何かに汚染された魔力って感じだ。こんなもの存在するのか?

 そもそも、魔力が汚染されるっていう概念があるのかすらわからない。

 場所によって魔力の濃淡はあるが、濃ければ取り込む際に気持ち悪くなるってだけで、別にそれは汚染されているというわけではないだろう。

 でもこれは、明らかに何か別のものが混ざっている。

 これは一体なんだ?


「多分だけど、直接触らない方がいい気がする」


 仮に、汚染された泥と呼ぶことにしよう。

 この泥はどこから来ているのか。普通に考えれば、上流だろう。

 ひとまず、触れないようにしながら徐々に進んでいく。ユーリも違和感を感じ始めたのか、少し表情が険しくなってきた。

 そうして進むことしばし、その元凶と思われるものを発見した。


「これは、何?」


 川の始原と思われる場所。圧倒的な存在感と共にそれはあった。

 見た目には、巨大な剣のように見える。

 私の身長を超えるどころか、ほとんどの生物の身長を軽く凌駕するほどの剣は、まるで巨人族の使う武器のようだ。

 それが、真っ黒なオーラを纏いながら、川の始原近くに突き刺さっている。

 そのオーラに当てられてなのか、周囲の地面は真っ黒に染まり、木々は黒く変色して、まるで魔界の森のような様相を呈している。

 魔物もここは危険だと理解しているのか、ここには近づいていないようだ。

 明らかに、この剣が原因だとわかる。しかし、なんでこんなものがこんなところにあるのだろうか。

 確かに、こんな川の始原になるほど奥地なら、人が立ち入ることはないだろうし、見つかることもないだろう。

 下流を見た限り、ここから流れ出している汚染された泥は下流に行くにしたがって浄化されているのか、見た目には見えなくなっているし、農村の人達も異変に気が付いていないのかもしれない。

 これがいつからあったのかはわからないけど、そこまで昔ってわけではないだろう。そうでなければ、今更になってあんな症状の精霊が出てくるはずもないし。

 となると、ごく最近に出現したということになる。一体どこから?

 私はあまりに異様な光景に息を飲みながら、どうしたものかと頭を悩ませた。

 感想ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 呪われてた子は下流まで流されたのかな?
[一言] こんなところに捨ててあるように置いてあるし そこから何らかのものが川にまで流れているので まるで不法投棄で周りの自然が汚染されているみたいです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ