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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二十一章:学園卒業編
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幕間:卒業旅行3

 主人公の親友、シルヴィアの視点です。

 道中、特に盗賊などに襲われることもなく日々は過ぎていき、ようやく星降りの丘へと到着した。

 最後に寄った町で聞いたのだけど、案外盗賊は出ないらしい。

 というのも、星降りの丘の周辺は平原になっており、木が疎らに生えるのみでかなり遠くまで見渡すことができる。

 だからなのか、盗賊が隠れる場所がなく、結果的に盗賊の数は少なくなるのだとか。

 まあ、同じ観光客を装った泥棒や詐欺師なんかはたまに出るらしいので、あまり他の観光客と仲良くしないほうがいいとは注意を受けたけど。

 確かに、観光地だけあって、私達の他にも観光客の姿はいくつか見受けられた。

 すでにあちらこちらにテントが張られていて、ここで星降りを見ながら夜を明かそうという人はそれなりにいるようだ。


「ハク、テントは持ってきているのよね?」


「うん。今出すね」


 今回の旅行に当たって、テントも当然持ってきている。

 ただ、テントは冒険者用の簡易テントならともかく、きちんとしたテントとなるとかなり嵩張る。

 その他にも、食料や水など、女性が持つには重いものが多い。

 なので、そういったものはハクの【ストレージ】に収納しておいてもらうことになったのだ。

 ハクの【ストレージ】について知ったのは最近だけど、流石は竜というべきだろうか、レアスキルも当然のように持っているらしい。

 私も実家に行けば【ストレージ】機能の付いたカバンがあるけれど、あれはお父様のものだから流石に貸してくれないと思う。

 【ストレージ】機能付きのカバンなんかはかなりお高いので、いくら侯爵家とは言ってもポンと買ってくれることはないのだ。


「テントの作成なんて初めてです」


「わからないことがあったら俺達に聞いてくれ。慣れているからな」


「はい、ありがとうございます」


 お兄さんやお姉さんに教わりながらテントを作成していく。

 今回、13人いるが、男女比は女性12人、男性1人というかなり偏った編成である。

 なので、女性用のテントを三個、男性用のテントを一個立てることになった。

 お兄さんとしてはちょっと複雑な気分ではないだろうか?

 ハクはお兄さんと一緒に寝てもいいと言っていたようだけど、それに関してはローズマリーさんとマーテルさんが全力で止めていた。

 まあ、お兄さんはハクのことを溺愛しているようだし、流石に手を出すほど落ちぶれてはいないと思いますけどね。

 なぜか、ユーリさんもお兄さんと一緒に寝ると言っていたけど、それも同様に止められ、結局お兄さんは一人で寝ることになった。

 お姉さんの方ならともかく、なんでユーリさんは一緒に寝ようなんて言ったんでしょうね?


「さて、テントはできました。後は夕飯を用意すれば準備は完了ですね」


「携帯食料じゃないの?」


「いえ、せっかくですから作ろうかと」


 旅で野宿というと、固いパンに固い干し肉、味のないスープなんかが基本だとは思うけど、せっかく食料を持ってきたのだから料理しなくてはもったいないだろう。

 そういう味気ない食事も旅の醍醐味かもしれないけど、みんなでワイワイ食事を作るのもまた、醍醐味だと思うしね。


「調理用の魔道具を持ってきてるし、作るなら手伝うよ」


「僕も手伝うぞ」


「楽しみだねー」


 ハクを初め、他の人達も割と乗り気なようだ。

 でもまあ、すでに五日の旅で疲れてしまったという人もいて、その人達は先に星降りを見る場所の確保を行ってもらうことになった。

 なんだかんだで他にも観光客がいるから、ちゃんと場所を取っておかないといい場所で見られない可能性もありますからね。

 特に、丘の上には一本の木が生えていて、その木の下で星降りにお願いをすると願いが叶いやすいという話もあるので、木の近くは激戦区である。

 私達が来た頃にはまだ二、三組しかいなかったので今ならまだとれる可能性はある。

 最悪取れなくてもいいけど、せっかくだからいい場所で見たいですよね。


「ハク、何を作るつもりですの?」


「せっかくだから、カレーを作ろうかと」


 食材はハクが持ってきたので、ハク主導で食事を作ることになったのだが、ハクはカレーという料理を作るつもりらしい。

 聞いたことのない料理だけど、どんな料理なんだろうか?

 そう思いながら、指示に従って作っていくと、しばらくして茶色いスープが出来上がった。

 正直、見た目はかなり悪いと思う。でも、そこから香る匂いは食欲を掻き立てる刺激的な匂いで、思わずごくりと喉を鳴らしてしまった。

 色々と野菜や肉も入っているのでバランス的にも問題なさそうに見える。

 まあ、いろんな粉を入れていたのが気になるけど、それが茶色い色の正体なんだろうか。


「本当はご飯がいいんですけど、あんまりないみたいなので今回はナンにしてみました」


 そう言って取り出したのは、不思議な形をした薄いパンだった。

 パン自体は私もよく食べているけれど、このパンはかなりもちもちとしていて不思議な感触がする。

 ハクは色々な料理を知っていますわね。もしかしたら、竜が作った料理なのかも? そう考えるとちょっと興味がありますわ。


「後は並べるだけなので、そろそろ皆さんを呼んできてもらえませんか?」


「じゃあ私が行くわ」


 そう言って、カムイさんが呼びに行く。

 星降りも楽しみだけれど、食事もかなり楽しみだ。

 早くみんな集まらないだろうか。

 そう思って待っていたのだが、一向にカムイさんは帰ってこない。それどころか、なにやら怒声が聞こえてきた。

 何かあったんだろうか?


「ちょっと、見に行って見ましょうか」


 鍋の見張りとして数人を残し、私とアーシェ、ハク、サリア、エルの五人で確認に向かう。

 すると、星降りの丘に生えている唯一の木の下で、なにやら言い合いをしている影があった。


「ここは俺達の場所だ! 勝手に取ってんじゃねぇよ!」


「何言ってるのよ! ここにはしっかりとシートを敷いていたし、この子達だっていたでしょ!? 後からずかずかと入ってきたのはそっちじゃない!」


「うるせぇ! 俺達の方が早く来ていたんだ、おとなしく譲ればいいんだよ!」


 言い合いをしているのは数人の男性とカムイさんだ。

 どういう状況かはわからないけど、今にも取っ組み合いの喧嘩が始まりそうな雰囲気である。

 いったい何があったんだろうか?


「ねぇ、どうしたの?」


「あ、ハク。こいつらが私達がとっていた場所にずかずかと入ってきてここは俺達の場所だっていいがかり付けてくるのよ」


「言いがかりじゃねぇ! ここは俺達が先に来ていたんだ! 勝手に取ったのはそっちの方だろ!」


「ええと、とりあえず落ち着いてください」


 ハクは双方を宥めながら事情を聞いていく。

 せっかく星降りの丘に来たというのにトラブルとは、災難である。

 カムイさんはともかく、場所取りに来ていたローズマリーさんやマーテルさんは少し怯えてしまっているし、せっかくの思い出作りが台無しだ。

 うまく解決できるといいんだけど……。

 そう思いながら、ハクの方をちらりと見た。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  なんかなろう小説の主役っぽいハクさんの無尽ストレージ&現代日本グルメ無双、(´ω`)800話超えてお出しされるってなかなか珍しいと言うか奥ゆかしいと言うか(普通なら物語序盤でドヤ顔披露さ…
[一言] 相手が悪いなら最悪排除かな?
[一言] もうハクちゃんのストレージは某未来の世界の猫型ロボットの ポケットみたいな状態になってますよ せっかくの星降りの丘だというのに 雰囲気ぶち壊しの人達は退場を願いましょう こちらにはA級に近…
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