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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第二十一章:学園卒業編
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第七百一話:未来視の力

 シュナさんから話を聞くと、この未来視の能力は5歳当時から持っていたらしい。

 強制的に眠らされ、この家に連れてこられた後は、その未来視の能力を使って様々な助言をさせられていたのだとか。

 未来視というのは絶対に当たる占いのようなもの。これにより、インリーズ家はさらなる成長を遂げ、今やこの領地はかなり潤い、第二のカラバと呼ばれるくらいの貿易の町になったのだとか。


「攫われた当時から未来視の能力が使えたなら、なぜそれを誰にも言わなかったんですか?」


「私の未来視は絶対というわけではありません。ちょっとしたことで容易に未来は変わってしまうんです」


 シュナさんは眠らされて攫われるという未来を見た時、当然ながらそれを回避しようと動こうとしたらしい。

 しかし、その結果未来が変わり、自分が眠らなかった場合、両親が殺されてしまうという未来を見てしまったようだ。

 もちろん、それを回避しようと色々と手を回そうとしたが、見れるのはそんな遠くのものではなく、直近のもの。せいぜい、一日先くらいのことである。

 何をやっても自分が眠らなかった場合は両親は殺されてしまう。それを悟ったシュナさんは、両親を助けるためにあえて攫われる道を選んだようだ。

 攫われた後、どうなるかまではわからなかったが、攫うということは自分が必要ということ。つまり、殺される心配はないだろうと思ったらしい。

 最悪、奴隷とかに落とされたとしても、両親ならすぐに見つけてくれると思い、賭けに出たというわけだ。


「思った通り、私はこの家に連れてこられ、それなりに丁寧に扱われました。だから後は、助けが来るのを待つだけ。そう思っていたんですけど……」


「助けは来なかったと」


「はい。きっと両親は私のことなどもうどうでもいいのでしょうね」


 悲しそうに目を伏せるシュナさん。

 どうやら、シュナさんは両親が今どういう状況に置かれているかを知らないらしい。

 まあ、ここは王都からかなり離れているし、情報を持ってきてくれる人がいなければ王都の様子など知る由もないだろう。

 だから、一向に助けが来ないことで、自分は捨てられてしまったんだと思うようになったらしい。

 なんか、悲しいね……。


「……ご両親は、ちゃんとあなたのことを心配していますよ」


「でも、もうあれから14年。妹もいることですし、きっと私のことは忘れて妹だけを育てているんじゃないですか?」


「それは違いますよ。そうですね、私がここに来た理由を話しましょうか」


 私はシュリさんから話を聞いて、シュナさんを助けに来たことを話す。

 両親は騙されているだけであって、決してシュナさんのことを忘れているわけではないということも。

 それを話すと、少し驚いたように目を丸くした後、ふっと柔らかく笑った。


「本当に、そうなんですね。私の見た未来は、変わらなかったんですね」


「もしかして、このことも知っていましたか?」


「はい。でも、きっと何かの間違いだろうと思っていました。まさか、まだ私のことを思ってくれているなんて思わなかったから」


 未来が見えるとは言っても、その未来はとても不安定なもの。

 もちろん、そうなるように積極的に動いたのであれば高確率でそうなるとは言っても、ほんの些細なことで変わってしまう諸刃の剣でもある。

 私がここに来ることを知っていたということは、私がこれから話す内容も知っていたんだろう。でも、それを信じられていなかった。

 未来が見えるというのも、それはそれで大変なのかもしれないね。


「一応聞きますが、シュナさんは元の家に帰りたいですか?」


「もちろんです」


「それなら、一緒に脱出しましょう。今ならば、まだそんなに人はいないはずです」


「そうしたいのはやまやまですが、その予想は外れます。私が見た未来が正しければ、後3分後にメイドがやってきます。だから、見つかる前にあなたは脱出してください」


 未来が見えるという彼女が言うならば、恐らく本当のことなのだろう。

 実際、探知魔法を見てみれば、動き回る気配が増えている。日も登ってきたし、そろそろ起きる時間ってことなのだろう。

 確かに、今この場で連れだしたらすぐに事態が発覚して大騒ぎになりそうだね。


「私は大丈夫です。それに、このままスレイマンに仕返ししないまま帰るのはちょっと納得いきませんから」


「わ、わかりました。では、また夜に来ますね」


「ああ、それと、一つ頼みたいことがあります」


「頼みたいこと?」


 私であれば、隠密魔法ですぐさま姿を隠せるのでメイドが来るという3分後ぎりぎりまで話すことができる。

 さて、頼みたいこととは何だろうか?


「今日、この家にリカルドという男がやってきます。その男は、奴隷商人で、スレイマンに賄賂を渡してこの町で違法奴隷を買い付けようとしています」


「違法奴隷がいるんですか?」


「はい。スレイマンの主要事業の一つです。まあ、そう仕向けたのは私ですが」


 どうやら、シュナさんはあえてあくどい商売を勧め、スレイマンさんを悪徳商人に仕立て上げようとしているらしい。

 違法奴隷の売買もその一つで、いつの日かそれが明るみになり、スレイマンさんが断罪されることを望んでいたようだ。

 もちろん、違法奴隷に関してはきちんと後で保護されるように調整していたらしい。

 今やこの家でなくてはならない存在となったシュナさんの権力はかなり高いらしく、それなりの自由も与えられているらしい。だから、そういうことも可能なのだという。

 なんというか、凄いね。


「リカルドは賄賂を渡した後、違法奴隷が集められている倉庫へと向かい、その後馬車でこの町を出ていくはずです。なので、街中で派手に奴隷を開放していただけませんか?」


「それってつまり……」


「はい。スレイマンの悪事を明るみにしてやってください。証拠に関してはこちらで用意します。私の見た未来が変わらなければ、恐らくハクさんは夜になる前にもう一度この屋敷を訪れることになるでしょう」


 なるほど、それを公開することによってスレイマンさんが確実に悪事に加担したことを証明し、スレイマンさんをしょっぴくというわけか。

 スレイマンさんのおかげで大きくなった町とはいえ、この町の人達がみんな悪事に加担しているというわけでもない。むしろ、まっとうに商売している人の方が大多数だという。

 だから、街中で奴隷が解放されるようなことがあれば、衛兵はちゃんと仕事してくれるし、領主であろうともきちんと屋敷を捜索してくれるとのこと。

 割と抜け目ないけど、それだとシュナさんまで悪事に加担した人物として捕まってしまいそうだけど……。


「大丈夫です。私は表向きにはスレイマンの意見に反対しているという風に見られています。スレイマンの悪事を知る町の住人はスレイマンのことは疎ましく思っていても、私のことは好意的に見てくれているはずですよ」


「そ、そうですか……」


 なんというか、よく頭が回るね。

 この領地を発展させてきたのはシュナさんの未来視による能力のおかげではあるけど、それはまっとうな方法ではなく、ちょっとつつけば壊れてしまうような脆い地盤の上に作られた発展。

 自分を攫い、両親を殺そうとしてきたスレイマンさんを何としてでも貶めてやろうという気概が伺える。

 今でこそ大人っぽい見た目だけど、これここまで発展してるってことはもっと幼い頃からそういうことを考えていたってことだよね?

 5歳の時点であえて攫われるなんていう行動をとれたこともそうだし、色々と普通じゃない気がする。

 もしかしてだけど、シュナさんって……。


「さて、もうすぐ来ます。早いところ脱出した方がいいですよ」


「わ、わかりました。リカルドという男については任せてください」


 そういって、隠密魔法で姿を消す。その瞬間、扉が開かれてメイドさんがやってきた。

 危ない危ない。3分って意外に短いね。

 それはさておき、これなら私がわざわざ手を下さずとも、勝手に捕まってくれそうである。

 このような地盤を用意してくれたシュナさんに感謝しつつ、私はいったん屋敷を脱出した。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 壮大な仕返しプラン( ˘ω˘ )
[良い点]  スレイマンをブン殴ってザマァ終了!と予想していた読者の上を行くシュナさんがコツコツと積み上げていたザマァのピタゴラスイッチ!!(´⊙ω⊙`)こいつはたまげたナイスキャスト! [気になる点…
[良い点] 凄い、転んでもただは起きない人だ 相手はまさか14年も手のひらで転がされているとは思ってはいないでしょう [一言] 同じ三分でも授業や仕事があと三分で終わるってなると その時間が長く感じる…
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