第六百九十一話:卒業研究の進捗
第二十一章開始です。
累計800話を達成しました。ありがとうございます。
ヒノモト帝国での皇帝代理の仕事を終え、王都へと戻ってきた。
夏休みも残りわずかで、王様への報告やギルドへの挨拶など色々慌ただしくなってしまったが、何とか間に合わせて無事に始業式を迎えることができた。
六年の後期。これが学園での最後の授業である。悔いの残らないようにしっかりと受けないとね。
「さて、と言っても進捗は芳しくないけども」
後期の授業が始まってすぐ、研究室の先生に卒業研究の進捗具合を報告するというものがあった。
これは、このままでは卒業が怪しい生徒をピックアップし、場合によっては先生がフォローするという目的で行われるもので、すべての六年生が対象らしい。
かなり少ないが、研究室に所属していない生徒は担任の先生がその役目を請け負うようだ。だから、六年生の担任をやっていて、研究室の顧問もしている先生は大変ってことだね。
私の場合は魔法薬研究室の顧問、すなわちルシウス先生である。
同じ研究室で、同じクラスであるミスティアさんやサリア、エルなんかも一緒だったが、結果としては、私とエルが頭一つ抜けて進んでないという状況だった。
うん、まあ、前期はあってないようなものだったし、夏休みもヒノモト帝国の方に行っていたから当たり前ではあるんだけどね。
この時点でここまで進んでいないのは私とエルだけらしく、ルシウス先生も軽く頭を抱えていた。
「前期の大半を休学していたせいというはあるだろうが、それにしたって進まなすぎだ。夏休みは何をしていたんだ?」
「えーと、ちょっと隣の隣の大陸の方に……」
「暢気に旅行などしている場合じゃないだろう。まったく」
旅行ではないんだけどね……。まあ、それは言っても仕方ないので黙っていることにする。
「幸いなのは、二人ともテーマが決まっていることか。ハクは属性の相性について、エルは氷魔法の限界を調べる、だったか?」
「はい、一応……」
「問題は進捗具合だが、お前達は後三か月足らずで研究を終えられると思うか?」
「うーん、まあ、急げば何とか?」
一応、皇帝代理の仕事をしている間にも多少は調べたりはしていた。
なので、一般的に知られている基本属性の相性に関しては確認が取れている。だから、後は特殊属性の相性を調べれば少なくとも形にはなるだろう。
エルに関しても、人状態での限界ということならある程度の予想は立てられている。であれば、後はそれをまとめるだけだ。
ちょっと内容が物足りない気もするけど、それに関しては余裕ができてからでいいだろう。
今のうちからいろんなものに手を出して結局まとまりませんでしたじゃ困るし。
「そうか。俺はお前達の顧問としてできる限りの協力はする。何か困ったことがあれば俺に言え」
「はい、ありがとうございます」
ルシウス先生は割と神出鬼没な感じがあるけど、逆に言えば必要な時は割とすぐに見つかる先生でもある。
できる限り力を借りないに越したことはないけれど、まあ、いざとなれば頼りにさせてもらおう。
「ミスティアは問題ないだろう。サリアもそこそこ進んでいる。もし、早めに研究が終わるようなら手伝ってやれ」
「わかりましたー」
「任せろー」
「よし。例年通り研究発表会もあるからそれも忘れるなよ」
そう言って、ルシウス先生は去っていった。
そういえば、発表会もあるのか。去年は私は不参加だったから忘れていたね。
あれ、そうなると卒業研究と同時に魔法薬研究室としての研究もしなきゃらならないのか。
「これ、研究する暇がないような……」
夏休みが終わってしまった以上、学園では普通に授業が行われる。
一応、六年の後期ということで、これまで真面目に取り組んでいれば単位は十分足りるはずなので授業間の空きはあるが、放課後には研究室の研究を進めなければならないことを考えると休みの日にコツコツ研究するくらいしか時間がないように思える。
卒業研究の発表は期末テストの代わりとして行われるから、大体12月の下旬。となると、もう十日もないんじゃないだろうか。
十日プラス授業間の空き時間で研究……うーん、前期にも進めていたら余裕なんだろうけど、流石に後期のみでやろうとすると難しいかも。
「きついようならー、少し研究室の方は休んでもいいよー?」
「え、でも、それだとほぼミスティアさん一人になっちゃいますけど……」
現在魔法薬研究室に所属しているのは七人。そのうち、私とエルが抜けるとなると、残りは五人で、そのうち三人は下級生である。
そして、後輩達は私目当てに入ってきたせいか、あんまり自分から仕事しようとしない。いや、最近は多少ましにはなって来たけども。
一応、言えば動くけど、それだとミスティアさんの負担が半端ないだろう。
サリアは慣れてきたとはいえそこまで魔法薬に詳しいわけでもないし、そうなるとミスティアさん一人と言っても過言ではない。
ミスティアさんは魔法薬に関してはかなりのエリートだけど、流石に厳しいのではないだろうか?
「大丈夫だよー。ハクには色々お世話になったしー、これくらいでハクの助けになるならお安い御用だよー」
「ほんとにいいんですか?」
「もちろんー。でも、11月の中旬くらいまでには戻ってきてくれると嬉しいなー」
ミスティアさんはそう言ってにこりと笑う。
確かに、ミスティアさんの無茶な願いを叶えるために竜の力を使ってまで神星樹の実を探したりもしたが、あれは私もヴィクトール先輩の夢を叶えたかったからだし、そこまで気にしていない。
でも、ミスティアさんからしたら割と恩義を感じてくれていたようだ。
まあ、そういうことなら、何とかなるのかな。
流石に11月の中旬まで全くいかないってことはないけど、それまでには終わらせるつもりで動いた方がいいよね。
「わかりました。ありがとうございます」
「いえいえー」
「それじゃあ、サリア。私がいない時はミスティアさんの手助けをしてあげてくれる?」
「任せろー」
「後輩達も、さぼらずにしっかりやってね?」
「「「はーい」」」
さて、とりあえずこう言っておけば多少なりとも動くことだろう。
後は、私がさっさと研究を終わらせてしまえば問題はない。
と言っても、研究って雑にやると色々突っ込まれるからあんまりさっさと終わらせるというのはよくないんだけどね。
「さて、やりますか」
できることなら、研究室の発表会が始まるまでには終わらせてしまいたいところである。
それまで約二か月。一気に進められないのはちょっと面倒だけど、まあコツコツとやっていくことにしよう。
私は気合を入れると、明日以降のスケジュールを確認するのだった。
感想ありがとうございます。
今回の章でひとまずの最終章となります。
新しい小説を投稿しました。タイトルは『TRPGのゲームマスターはお助けNPCとして異世界を駆ける』です。もしよければ、こちらも読んでいただけると嬉しいです。




