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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第十九章:前世の世界編
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幕間:加護の効果

 主人公の実の妹、一夜の視点です。

「月夜の晩にこんばんは。夜の妖精、月夜アカリだよー」


(コメント)

・ばんはー

・ばんちゃー

・アカリちゃんが生きがい

・待ってました!


 ハク兄が異世界に帰ってから数日。いつまでも落ち込んでいるわけにもいかないので、私はいつも通りに配信を開始した。

 最初こそ、ハク兄がいなくなったことに関する説明を求められたけど、今じゃだいぶ周知されてきて、それ系のコメントは減ってきた。

 設定的には、ハク兄は異世界に帰ったことになっているけど、実際の筋書き的には親の急な転勤によって海外に行くことになり、配信を続けることが困難になったため、ということになった。

 しかし、ハク兄は『Vファンタジー』を抜けるつもりでお別れを言ったようだったが、有野さんはそれを認めず、あくまで休止中という扱いを取った。

 有野さんも、ハク兄からある程度の事情は聞いたようだが、私と比べてそこまで詳しく説明されたわけではないらしく、あれだけの逸材を入ったばかりで手放すわけにはいかないと、また帰ってくるかもしれないから除籍することは止めようという結論に至ったらしい。

 まあ、入って一週間足らずでやめてもらっては流石に企業としても困るだろうから当然と言えば当然だけど。

 まあ、もしまたハク兄が帰ってきた時にやるべきことがあるのはいいことなのかもしれない。

 私が強引に押し込んだとはいえ、案外ハク兄もヴァーチャライバーを楽しんでいたようだし。


「今日は雑談しながらレジェンズなFPSをやっていくよ」


(コメント)

・久々のゲーム配信

・ハクちゃんのFPSも見たかったなぁ

・おい、傷口を抉るのは止めろ

・ハクちゃんいなくなって一番つらいのはアカリちゃんだろ、空気読め

・でも、お前らも思ってるだろ?

・そりゃまあ


「私は気にしてないから大丈夫だよ。実際、私もはっちゃんのプレイは見てみたかったし」


 ハク兄の配信を心待ちにしていたリスナーは多い。

 特に、私のチャンネルを見ているリスナーは大抵ハク兄のチャンネルも見ていたようだから、その喪失感は推しの配信者が引退したような感覚だろう。

 ヴァーチャライバーは絵心と機材の知識があればそれこそ個人でも出来るくらい手軽に始められるものだけど、そこで成功していく人は少ない。

 人気の人でも、ちょっとした発言をきっかけに炎上してそのまま引退なんてこともある。

 そう考えると、私は結構幸運なのかもしれない。

 『Vファンタジー』という箱があるとはいえ、こうしてそれなりに人気が出ているのだから。


「FPSはあんまり得意じゃないんだけど、今日は調子いいね」


(コメント)

・調子いいっていうか、さっきから全部ヘッショじゃね?

・残弾からして全部ヘッショであってる

・アカリちゃんこんなにうまかったっけ?

・いうてアカリちゃんだしこれくらいたまにはあるんじゃね?

・妹が乗り移ってるのかもしれない


 意識はしていなかったが、コメントを見る限り私は今のところ全部ヘッドショットを決めているらしい。

 まあ、私はこのゲーム始めたばかりだし、相手がまだ慣れてなくて棒立ちの人が多いからというのもあるかもしれないが、それにしたって多い気がする。

 私、こんなにエイムよかったっけ?


「スナイパー拾った。イカゲーだと結構使うけど、こっちだとあんまり使わないんだよね」


(コメント)

・イカゲーとこれを比べてはいけない。

・あれはどこでも簡単に隠密できるから

・あっちはステージ狭いから芋砂でもそれなりに仕事できるしな

・初心者にはとっつきやすいゲームだと思うけど

・わいはこっちの方が好き

・キャラ設定も凝ってるしな


「うまく射線隠さないと簡単に避けられるけどね。っと、見つけた」


(コメント)

・え、どこ?

・スコープ覗いてようやく気付いた

・全然見えんかった

・よく見えたな

・しかもあの距離でヘッショかい


「あはは、たまたまだよ。今日は調子がいいみたいだね」


 その後も、ほぼヘッドショットを決めて快勝した。というか、その日の試合はすべて勝利で終わってしまった。

 この時は調子が良かったのかなぁと思って特に気にしなかったんだけど、その後もこう言った事態は続き、リスナーもゲームスキル上がったねと言ってくるようになった。

 でも、そんなことあるはずがない。

 確かに、私は仕事をやめてヴァーチャライバー一本で行くようになった影響で多くのゲームを遊ぶようになったが、それはあくまで趣味の範囲であり、うまくなろうとか言う向上心は持ち合わせていなかった。

 そりゃ、うまい方が見てくれる人は多くなるだろうけど、今の時点でもそこそこうまい方なのだから別にそこまでしてうまくなる必要はないと考えていた。

 毎日同じゲームをひたすらやっていたわけでもないしね。

 だから、この短期間でゲームスキルが向上するのはどう考えてもおかしいのだ。


「もしかして、ハク兄のおかげ?」


 状況的に、そうとしか考えられない。

 コメントで、冗談で妹が乗り移った、とか言っていたけど、あながち間違いでもないかもしれない。

 というのも、ハク兄が去った後、私に残されたものの中に精霊の契約と言う物がある。

 あれは、契約した相手に加護を与え、代わりに魔力を貰うというようなものらしいのだけど、そのおかげなんじゃないだろうか。

 なにせ異世界の技術? だ。実際にご利益的なものがあったとしても不思議ではない。

 ハク兄はどう考えても普通の精霊ではなかったようだし。


「そういうわけで、ちょっと検証してみたいと思います」


(コメント)

・なんか始まった

・ゲーム耐久配信?

・ハクちゃんから貰った加護の検証をしたいらしい

・ああ、あのお別れの時に貰った奴か

・俺、あれから結構幸運続きなんだよね。だから実際に効果はあると思います

・同意

・禿同


 後日、検証のためにやったのは、色んなゲームをひたすらやっていくと言う物だ。

 以前のFPSのゲームでヘッドショットを連発できたように、恐らく私の動体視力は相当強化されている。実際、集中すると画面の動きがゆっくり見えるような錯覚を覚えることが何度もあった。

 だから、もし本当に加護でそういう能力が増えているのだとしたら、大抵のゲームはクリアできるはずである。

 そういうわけで、何回かやってみた結果、ほぼすべてのゲームで以前よりもスキルが向上していることが分かった。

 さらに言うなら、配信外でもジムに行って身体能力を調べてみたが、軒並み向上していることがわかった。

 ざっと、以前の倍くらいだろうか。ベンチプレスなんてやったことないからわかんないけど、以前なら絶対に持ちあがらなかったであろう物も持ち上げられたので多分合っていると思う。


「とんでもない置き土産をしてくれたね」


 こんなの、出るところに出れば世界を狙えるレベルではないだろうか。

 しかも、この上で危機に陥った時には自動で発動する結界なんてものまで残していっているという過保護っぷり。

 どう考えても、この世界ではやりすぎである。

 それだけハク兄の愛が深いということではあるけど、ちょっと過剰じゃないかなとも思った。

 まあ、人のこと言えないかもしれないけどね。


「戻ってきた時は、驚かせてあげよっと」


 未だに契約の繋がりは感じられる。

 いつ来るかはわからないけど、ハク兄は約束を破るような人じゃない。

 だから、いつか来るその時までのんびりと待っていよう。

 私は今日も配信しなきゃと話す内容を考えるのだった。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ハクさんが何の精霊なのかますます気になるな
[良い点]  マジチートな置き土産♪(^▽^)人間のスペックがほぼ倍とかベラボー!インドア派な妹ちゃんだから目立たないけど学生時代国体とか出場するくらいの体育会系だったらオリンピッククラスにブーストし…
[一言] プロゲーマーでもそれなりにやっていけそうな加護を残していきましたね 異世界の方では危険と隣り合わせなので丁度いいくらいの加護なんですけど(日本では過剰)
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