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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第十九章:前世の世界編
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第六百五十五話:お別れ配信

 お風呂に入り、寝間着に着替えた後、一夜ひよなと共に配信部屋へと入る。

 リスナーに向けてお別れの挨拶をするためだ。

 色々気が動転していたこともあって、告知をするのを忘れていたが、一応帰ってからしておいたのでほんとに多少ではあるが拡散されている。

 いわゆるゲリラ配信のような感じかもしれない。

 全員に挨拶するならきちんと告知すべきだったんだろうけど、こればっかりは仕方ない。もはや取り返すことはできないのだから。

 一夜ひよなと共に配信画面の前に座り、お互いに頷いてから配信開始のボタンを押す。

 いつもの背景と立ち絵を出し、お決まりの挨拶をした。


「妖精の皆さんこんハクです。異世界から来た妖精、月夜ハクと……」


「その姉の月夜アカリだよー」


(コメント)

・こんハクー

・こんハクー

・なんかいきなり始まったw

・告知遅いよー

・今日もコラボか?

・姉妹百合はいいぞ


「突然始めちゃってごめんね。今日は皆さんに伝えたいことがあって枠を取らせてもらったよ」


 流石に、ゲリラ配信とあってそこまで見ている人は多くない。

 一応、じわじわと増えてはいるが、いつもの人数が集まることはないだろう。

 私はしばらく人数が増えるのを待ち、見ている人が多くなってきたタイミングで真実を打ち明けることにした。


「実は私、異世界からやってきたんです」


(コメント)

・知ってる

・知ってる

・ハクちゃんというか三期生はみんなそうでしょ

・何をいまさら


「うん、みんな周知のことだとは思うけど、これは設定でもなんでもなく、本当に異世界から来たってことなんだけどね」


(コメント)

・今日は一段と気合入ってるなぁ

・みんな疑ってないよ

・そうそう、異世界 (外国)から来たんでしょ

・妖精がいるのは異世界だから。この世界にはいない。よってハクちゃんは異世界から来た、QED

・がばがば理論やめーや


「まあ、これを信じるかどうかは皆さんに任せるよ。ここからが本題で、私は異世界から事故でこの世界にきちゃったってことは話したよね?」


(コメント)

・確か、古代遺跡を調べてたらーだっけ?

・魔法陣の暴走だとか言ってた気がする

・それで?


「それで、その異世界から、今日の朝迎えが来たんだ。その人はちゃんと帰るための準備を整えていて、私を連れて帰るって言ってる」


 私の発言に、コメント欄は一気に加速した。

 異世界に連れて帰る、という言葉を本当に信じている人はいないだろうが、それが比喩だと考えた時、少なくとも私がどこかへ行ってしまうということは想像できただろうから。


「私は明日の朝には帰らなくちゃならない。だから、帰る前に皆さんにお別れを言おうと思ってこの配信をしたんだ」


(コメント)

・え、ちょっと待って?

・それってヴァーチャライバーをやめるってこと?

・行かないで

・マジか……

・異世界に帰っちゃうのか

・いつ帰ってくるの?

・活動休止ってことかな?

・まだデビューしたばっかりだっていうのに


「帰ってこられるかはわからない。もしかしたら、帰ってこられないかもしれない。でも、帰ってこられるならいつかは帰ってきたいと思ってるよ」


 私が今後この世界に帰ってこられるかどうかは魔法陣を起動するのに必要な魔石の量と時間差の解決をできるかにかかっている。

 魔法陣が解読できているならまた来ることは可能だろうが、それに使われる魔石がどれくらいの量かはわからない。

 恐らく膨大であろうそれをまかなうにはそれなりの時間を要することだろう。

 それだけだったら魔物を狩りまくればいいだけの話だからいいけど、あちらの世界とこちらの世界での時間差を何とかできないと気軽に来ることは難しい。

 こちらに一日滞在しただけであちらで一か月も経過してしまっていては色々と支障が出る。

 だから、それも合わせて何とかできない限りはヴァーチャライバー活動をできるほど頻繁に来ることはできないだろう。

 そして、世界間の時間差を解消するなんてそれこそ神様の所業だ。私にできようはずもない。

 いや、理論を解明できればもしかしたらできるかもしれないが、それには膨大な時間がかかるだろう。

 100年先か200年先か、どちらにしてもこちらの世界でもそれなりの時間が経過することになる。

 そう考えると、やはり難しい問題だなと思った。


「……私は、ただでいも……お姉ちゃんの家に居候するのが嫌だから、ヴァーチャライバーを始めた。そんな私がこうして多くの人に注目されるのはもしかしたら間違っているのかもしれない。だけど、私はこの出会いを否定するつもりはない。みんな、私を支えてくれた人には変わりないから」


(コメント)

・え、これマジで引退する感じ?

・Vファンタジーは何も言ってないぞ

・もっと支えさせて

・いっちゃやだ

・戻ってこい!

・嘘だよね? アカリちゃんも同意してるの?


「……残念ながら、本当だよ。まだ公式には発表してないけど、多分そう言うことになると思う」


(コメント)

・マジかよ……

・ハクちゃん好きだったのに

・アカリちゃんまで辞めないよね?

・三期生とのコラボはどうなるんですか!

・他の人とのコラボも見たかった


「皆さんには申し訳なく思ってる。だから、せめてものお返しとしてみんなには加護を残していこうと思うよ」


(コメント)

・籠?

・加護じゃない?

・妖精の加護って奴か

・なにするの?


「私もやったことはないんだけど、私のいた世界では、妖精、というか精霊は気に入った人に対して加護を落とすことがあるの。加護の内容は精霊によって様々だけど、大抵はその精霊が司っているものに関連したことと、後は魔法の補助かな」


「それって、私達でもうまくすれば魔法が使えるようになるってこと?」


「ううん。この世界の人達は魔力を持たないから魔法は使えないと思う。それに、私自身が何の精霊なのかわかってないから、どんな内容になるかもわからないし、そもそも画面越しにかけられるのかもわからない。だけど、これくらいしかできることはないと思ったから、やらせてほしいな」


(コメント)

・なんかよくわからないけど、ハクちゃんが俺達に加護をくれるってことでおk?

・自分の事なのにわかってないのか

・ハクちゃんは夜の妖精だろ

・夜の妖精って書くとなんか別の意味に聞こえる

・それは心がけがれているだけです

・ハクちゃんがくれるものなら何でも受け取るよ

・グッズを販売するとかならわかりやすいんだが


「グッズは、ごめんなさい、無理です。……それじゃあ、行くよ」


 私はみんなに加護を与えたいと思いながら胸に手を当てて思いを込める。

 この行動に何か意味があるかはわからない。もしかしたら、無意味なことかもしれない。

 けれど、嘘でもなんでも、リスナーのみんなと繋がることができるというだけで私にとっては意味のある行為だと思えた。


(コメント)

・なんか胸がポカポカしてきた気がする

・うぉー、ハクちゃんの加護を受け取ったぞー!

・ハクちゃんは俺達の中で不滅なり

・(登日アケミ)ハクちゃんの加護、確かに受け取ったよ

・(風切チトセ)離れていても私達は繋がっていますからね

・(遥スズカ)いつでも帰ってきていいんだからね

・三期生皆いるやんけ

・アケミちゃん達は知ってた感じか


「みんな……ありがとう。みんな、大好きだよ……!」


 その後、アケミさん達やリスナーさん達に見送られ、配信は無事に終了した。

 配信が終わった瞬間、私はまた涙を流してしまった。

 思った以上に、この世界での生活は居心地がよかったものらしい。

 私は最後の仕事とばかりに後片付けをした。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  別れの挨拶とともに送られるポカポカしたあたたかい加護(´ω`)伝説の配信として未来永劫語られるやつですな、やる事が毎度素敵すぎましゅハクさん♡ [気になる点]  さよなら発言で阿鼻叫喚の…
[一言] 本当、ハクさんは何の精霊なのかな
[一言] 与えられたかどうかは不明ですが 加護がどうなるのか楽しみではありますね こっちと繋がりが出来た訳ですから
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