第六百四十三話:ホラゲー配信
「月夜の晩にこんばんは。夜の妖精、月夜アカリだよー」
(コメント)
・来ちゃ!
・きたー!
・ばんはー
・待ってた
夜になり、晩御飯を食べてお風呂に入って準備万端整えた後、私と一夜は配信部屋にて配信を開始した。
画面には月夜アカリと月夜ハクの立ち絵が並んでいる。
身長も髪色も何もかも違うが、まあ強いて言うなら体型は似ているかな?
一夜のロリ声に合わせ、アバターも見た目はロリっ子だ。
身長差的にもハクが若干低いくらいなので一応姉妹に見えなくもない。
イメージカラーは黒と白で真逆だけどね。
「今日はゲストを呼んでるよ。というか、タイトルにも書いてあるね。妹の月夜ハクちゃんでーす」
「妖精の皆さんこんハクです。妹の月夜ハクだよ」
(コメント)
・姉妹コラボきた!
・この時を待っていたんだ!
・ハクちゃんを怖がらせると聞いて
・待ってたぜぇ、この時をよぉ!
・割と早かったね
「んふふ、ここだけの話、はっちゃんはホラー苦手だから期待していいと思うよ」
(コメント)
・これはいいことを聞いた
・悲鳴期待してます
・何のホラゲーやるの?
・これは期待
・今日のパンツの色は何ですか!
「はいそこ、変態発言は慎んでね。さて、今回やるのはこちら、『魔法使いの家』です」
一夜がそう言ってパソコンの画面にゲーム画面を映し出す。
このゲーム、無料でダウンロードできるフリーのホラゲーだ。
主人公は小さな女の子で、気が付いたら森の中にいて、と言う始まりらしい。
一応、操作方法とか最低限の情報しか聞いてないからマジの初見なんだけど、一見すると家なんて関係なさそうに聞こえる始まり方だなぁ。
「はっちゃん、意気込みのほどは?」
「正直緊張してるけど、多分それなりにホラー耐性はついたと思うから大丈夫だと思う」
「強気だね。それじゃあ、今回はクリアできるまでぶっ続けで行こうか?」
「え? う、うーん、まあ、そんな長くないのなら」
(コメント)
・鬼だ、鬼がいる
・このゲーム初見殺し多いからなぁ
・どれだけ悲鳴が聞けるか楽しみ
・最後結構難しくなかったっけ?
・真エンドが結構難しい
・ハクちゃんのホラー耐性やいかに
「それじゃあ、始めようか」
ゲームがスタートし、ドット絵の画面が出てくる。
森と思わしき場所にいる一人の女の子。どうやら彼女が主人公のようだ。
キーボードを操作して適当に動かしてみる。
動きは割と速めかな? とりあえず、目に身体強化をかけるのはなしでやってみる。
「バラが邪魔で進めない、と」
出口と思われる場所にはバラが生い茂っていて進めない。
となると、こっちか。別の方向に進んでみると、何やら光っているものを見つけた。
どうやらアイテムらしい。近づいて拾ってみると、マチェットのようだった。
「これであのバラ切れないかな」
さっきの場所に戻ってマチェットを使おうとして見るが、どうやらこれでは無理な様子。
となると、また別の場所で使うのかな?
しばらく彷徨っていると、同じようにバラでふさがれた場所が出てきた。
こちらはバラの量が少ないらしく、マチェットでも切れるらしい。
ざくざくと割といい音を響かせながら道が開かれ、奥へ進めるようになった。
「あ、猫と、お屋敷?」
そこには大きなお屋敷が立っていた。
その前には黒猫がおり、話しかけて欲しそうにそこに留まっている。
この黒猫、さっきもいた気がするけど、すぐにいなくなっていたような?
まあ、それはともかく、話しかけたら普通に返事が返ってきた。
どうやらこの世界の猫は喋れるらしい。なんとも不思議なことだ。
しばらく話していると、屋敷の扉が開いた。そして、黒猫は入ってみたらいいと言ってくる。
まあ、多分このお屋敷がタイトルにある家なんだろうし、ここが舞台なんだろう。
どう考えても悪手な気がするけど、入らないと始まらないし、ここは素直に入るとしようか。
(コメント)
・来るぞ
・行くかな……?
・さて……
なんだかコメント欄が不吉なことを言っている気がするが、何かあるんだろうか。
入った先は小さな部屋で、奥に扉がある。ひとまずその扉を調べようとまっすぐ歩いていくと、いきなり壁が迫ってきて主人公がぺしゃんこになった。
「ッ!?」
「はいざんねーん! いや、まさか踏むとは思わなかったよ」
「……もしかして、真ん中にあった赤い血っぽい跡?」
「そう。あれを踏むとゲームオーバーなんだよね」
なるほど、初見殺しが多いというだけはある。
声こそ上げなかったけど、ちょっとびくっとしてしまった。
(コメント)
・耐えたか
・悲鳴はー?
・ハクちゃん意外と耐性あるな
・と言うかさっきから表情動いてなくね?
・さっきからと言うか、初配信から全然動いてないな
・肝っ玉かよ
「あ、すいません。私表情筋が死んでいるらしくて表情動かないので、そっちを期待してた方はごめんなさい」
(コメント)
・無表情キャラとな?
・割と驚いてたっぽいのに変わらなかったからガチっぽいな
・ほえー、そんな人いるんすね
・声上げなかったら無敵では?
・悲鳴来いよー
「えっと、つ、続き行くね」
血だまりを避けて扉を開くと、長い廊下が広がっていた。
左右に進めるが、ひとまず一つずつ道を潰していくことにする。
進んでいくと、プレゼントの山が置かれた部屋に辿り着いた。どうやら、ここにあるテディベアは持っていけるらしい。
ホラゲーではアイテムを取った瞬間に何か起こるのは鉄則なので、一度深呼吸をしてから取ってみる。
すると、プレゼントの山が突然崩れた。
しばらく待ってみるが、特に何も起こらない。どうやらただのドッキリだったらしい。
「お次は……テディベアが入った籠と、張り紙?」
張り紙を見てみると、クマを籠の中に入れればいいらしい。
ちょうど、先程の部屋でテディベアを手に入れているので入れようとしたら、どうやら手が引っかかってはいらないらしい。
どう考えてもここに入れるためのものだと思うけど、どういうこっちゃ?
「入れるためにはどうすればいいかなぁ?」
「まあ、普通に考えれば入ってるテディベアをどかせばいいだけの話だけど、そういうわけではないよね?」
「それはもちろん、左の部屋に行ってみればわかるよ」
どうやらまだピースが足りないらしい。
私は一夜の指示に従って左の部屋へと行ってみる。
すると、そこには扉と、机に固定されたはさみがあった。
「まさかとは思うけど、はさみでテディを切って小さくしろと?」
「そういうこと」
何て悪趣味な……。
まあ、ホラゲーらしいと言えばそうだけど。
私は指示されるがままにはさみでテディベアを切り裂く。すると、はさみが真っ赤に染まった。
「~ッ!?」
(コメント)
・やっぱり悲鳴上げない
・強いなハクちゃん
・俺ここで諦めたわ
・もっと凄いの来るぞ
ひとまず、テディベアはこれで大丈夫だろう。
戻ろうとすると、壁に手形が現れる。テディベアが怒っているのだろうか。
ゲーム上やらなきゃいけないとはいえこれはちょっと残酷だなぁと思う。
すぐさま先程の部屋に戻り、籠にテディベアを押し込むと、どこかで扉が開く音が聞こえた。
鍵がかかっていた扉ははさみがあった部屋でしか見てないので、恐らくあそこだろう。
すぐに取って返すと、途中の廊下で花瓶が突然落ちて割れた。
何だろうと思っている暇もなく、直後に巨大なテディベアが主人公を押し潰し、ゲームオーバーとなった。
「~~~ッ!?」
「またゲームオーバーだねぇ」
(コメント)
・なんかこれはこれでありな気がしてきた
・悲鳴を必死に我慢するハクちゃんすこ
・初見殺しはこんなものじゃない
・これクリアまで行けるか?
・もっと悲鳴上げて! 役目でしょ!
とりあえず、死にゲーということはわかった。
多分、しばらくやっていればクリアできない気はしないでもないけど、精神的にもう無理です。
私は一夜に向かってギブアップの宣言をした。
感想ありがとうございます。




