第五百話:解呪魔法の作成
本編でも500話達成しました。ありがとうございます。
その後、一度聖庭に戻ってカムイやコノハさん達に挨拶した後、王都へと戻ってきた。
新学期が始まるまで残り数日、できれば休み中に片を付けたかったところだけど、それは流石に無理そうだ。
そういえば、カムイは戻ってこないんだろうか? いや、教皇達の行方の調査とか過激派の説得とか色々忙しいのはわかっているんだけど、カムイは一応私と同じ学園の生徒のはずなんだけど。
今回は私が後期の授業をほぼ丸々すっぽかしてしまった影響もあって期末テストすら受けていないし、もしかしたらCクラスに転落する可能性もあるんだよね。もちろん、私はサリアのお目付け役だからサリアさえ成績が良ければ一緒についていけるんだけど、そのサリアも私のことが心配でしばらく授業を休んでしまっていたようだからどうなるかわからない。
できればシルヴィアさん達と一緒のクラスがいいけど、今回は流石に無理かなぁ……。
まあ、そんな憂鬱なことを考えていても仕方がない。今は一刻も早く浄化魔法を完成させなければならないのだ。
「ハクさん、お茶が入りましたよ」
「あ、ありがとうございます」
自室で魔法の開発に勤しんでいると、ユーリさんがお盆を持ってやってくる。
ユーリさんが王都に来てからそろそろ半年くらいになるが、最初は目立たないように家に引きこもらせるはずだったのに、いつの間にか噂が広がってしまい、今ではちょっとした有名人となっている。
まあ、外出る度に怪我人や病人を見つけては自分の身を顧みずに治療しているんだから目立つのは当たり前なんだけど。
巷では聖女だと呼ばれ、教会からもぜひ力を貸してほしいと勧誘を受けるほどの人気である。
実際聖女のような人だと思うし、ユーリさんが望むのなら別に教会に神官として入ったとしても別にいいんだけど、問題はユーリさんが竜人だということだ。
普段は隠蔽魔法で隠してはいるが、隠しているだけなのでなくなったわけではない。服は背中に切れ込みを入れなければならないし、後ろから肩を叩かれようものならうっかり翼に触れて気づかれてしまう可能性もある。だから、とてもじゃないけど教会に入るなんて無理だ。
ユーリさん自身、私と常に一緒にいることを望んでいるし、私が聖教勇者連盟に攫われた時も単独で追いかけていたらしい。私が死ぬような怪我をしたら助けるつもりで。
なんというか、みんな私の事を心配しすぎだ。竜の力の事を知らないわけでもないのだから、少しは信用してほしいものだ。
「まだお仕事は忙しそうですか?」
「まだしばらくかかりそうです。聖教勇者連盟の存続がかかっていますし」
「そうですか……」
ユーリさんは元々私が休みの間は一緒にいられるだろうということで王都まで付いてきたようなところがある。なのに、実際には休み中も頻繁に家を空けていてなかなか会えない日々が続いている。
今だって、残り数日で学園に戻らなければならないのに、聖教勇者連盟の事にかまけてまともに相手をしてあげられていない。
前世で死んだ後も、私の事を探してくれていた一途な女性を悲しませるのは私としても本意ではないが、これをやっておかないと後々面倒なことになるのは目に見えているのでどうか許してほしい。
そのうち落ち着いたら、ユーリさんのために思いっきり遊びに出かけてもいいかもしれない。一応、こ、恋人なわけだしね。
「……いえ、お仕事頑張ってくださいね」
「はい、ありがとうございます」
持ってきてくれたお茶を飲みつつ、魔法の構築を再開する。
と言っても、元からだいぶできていたので後は細かい部分を調整するだけでいい。
この魔法、どうやら元々はアンデッドなどを昇天させるために作られた魔法のようだ。
アンデッドが動くのは、その地に溜まった怨念や残留思念、霊魂などが死体などに憑依してまるで生きているように体を動かすからだ。だから、そういった不浄の存在を浄化し、清めることで退治するということらしい。
呪いは強い想いを具現化させた存在である。あいつに復讐してやりたい、あいつを痛い目に遭わせてやりたいという負の感情を元に作成されたものだから、浄化の影響を多少なりとも受ける。だからこそ、浄化魔法で呪いは解除することができるのだ。
ただ、本来の用途と違うのでその効力はかなり薄い。何度も何度もかけ続けることによって徐々に効果が浸透していき、ようやく解呪することができる。呪いを解く時の詠唱が長いのは多分そのせいだろう。
だから、ただ単に浄化魔法を作り出したところで効力が薄いものしかできない。
なので、私は呪いの解呪に特化した魔法を作り上げることにした。言うなれば、解呪魔法ってところだね。
「実証できないのが少し心配だけど……」
呪いは禁忌とされており、奴隷商が持つ隷属の首輪などの例外を除いて使ったら大罪である。なので、魔法が完成したからと言って実際に呪いを解呪してみようということができないのだ。
一応、隷属の首輪に向かって使えばただの首輪になるとは思うんだけど、隷属の首輪自体も一般人が持つことは許されないのでおいそれと試すことはできない。
以前貰った隷属の首輪はすでに千切れて役に立たなくなってしまっているしね。
まあ、王様に事情を話してやれば多分貸してくれそうだけど……流石に聖教勇者連盟が呪いを使って洗脳してましたなんて情報、王様と言えど話すわけにはいかない。
そんなことをすれば聖教勇者連盟は各国からバッシングの嵐だろうし、とてもじゃないけど存続などできないだろう。聖教勇者連盟は危険な魔物を退治することができる貴重な組織だし、実際各国はそれに頼っているところもあるのだから、無くなってしまうのは困る。
もちろん、それらを話さずに新しい魔法の研究だと伝えてもいいかもだけど、まあ、そこまでして試す必要もないだろう。
理論上は呪いをかけられた人の呪いを解き、そうでない人には何の影響も及ぼさない魔法である。仮に暴発することがあったとしても、ただの聖なる力を持った魔力だろうし、相手がアンデッドでもない限りは問題ないはずだ。
「誰か手頃な人で試せれば一番楽だけど……そういえば、ちょうどいいのがいたなぁ」
呪いをかけられている可能性があり、仮に怪我をしてもそこまで心が痛まない人。いや、心が痛まないっていうのは少し語弊があるけど、他の人達に比べたら、私的にそこまで重要じゃない人はいる。
そう、アーネさん達だ。
鳥獣人を竜人と間違えて討伐しようとしてきた事件の時、王都に連れてきた転生者三人。
彼らはお兄ちゃんやお姉ちゃんを殺しかけ、しかもエルを殺した張本人である勇者を連れてきた奴らである。
エルは無事に生き返ったし、お兄ちゃん達も死にはしなかったけど、それでも私の中では彼らの印象はかなり悪い。殺しはよくないということで生かして連れて帰ってきたけど、正直彼らがどうなろうが私にはどうでもいい。
まあ、多少改心した様子のプラーガさんはまだ思うところがないわけでもないけど、他は死にさえしなければ割とどうでもよかった。
「完成したらまた会いに行ってみようか」
以前会った時は少し威圧して大人しくさせたけど、もうそろそろその効力も薄れて暴れ出していそうである。
今回作る解呪魔法は数人に同時にかけられて、且つ離れていても大丈夫なように作るつもりだ。
私に敵対心を持つ彼らを相手にかけることができるなら、同じく私の事を竜を操るやべー奴と思っている聖教勇者連盟の転生者達にも有効だろう。
私は実験の算段を立てつつ、魔法の研究に勤しんだ。
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