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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第十二章:竜人の少女編
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第四百十四話:順調に本選へ

 予選も順調に過ぎ、一日目は無事に終了した。

 見所があった試合としては、やはりお兄ちゃんだろう。

 お姉ちゃんに関しては素早さに物を言わせて一撃で相手を倒すような戦略だから初見の人には驚きも大きいと思うが、すでにその戦い方を知っている私としてはそこまでのインパクトはない。

 ただ、速度がさらに速くなっているようで、もう目に身体強化魔法をかけたくらいでは見切れないくらいにまでなっている。

 鳥獣人達の一件で強くなるきっかけを掴んだとは言っていたけど、あの戦いで一体何を学んだんだろうか。相手は確か、プラーガさんだよね? となると時間を操作する能力……まさか見ただけでそれが使えるようになったとか言わないよね?

 転生者の能力はこの世界の人々では容易には扱えない力だ。ほとんど唯一無二の能力が多く、少なくとも見ただけで真似られるような能力はあまりない。

 まあ、まだ見ぬ魔法の属性に時間属性とかがあるならそれを発現することによって疑似的に使えるようになるとかはあり得るかもしれないけど、お姉ちゃんはそこまで魔法が得意なわけではないしなぁ。

 まあ、そんなわけでより速くなったお姉ちゃんはともかく、お兄ちゃんの戦い方はお姉ちゃんとは別の意味でかっこいい戦い方だった。

 と言うのも、お兄ちゃんの得物は身長ほどもある長い刀だが、それをまるで自分の手足のように扱い、まさに蝶のように舞いながら相手を倒すのだ。

 あんな大きな刀、重量だけでもかなりのものだと思うのだが、お兄ちゃんはそれを感じさせない。お姉ちゃんのような速さはないけれど、逆にそれは観客の目にも触れやすいということであって、誰の目にも美しい戦い方として焼き付いた。

 もちろん、勝敗に関しても全戦全勝であり、余裕で本選に出場していた。お姉ちゃんもね。

 これは、本選が本当に楽しみかもしれない。魔力に関しても問題ないことがわかったし、今日はぐっすり寝てしっかり観戦できるようにしておかないとね。


「ハク、お疲れ様。今日は帰れるの?」


「お姉ちゃん、そっちもお疲れ様。今日も城で泊ることになるから、帰れないと思う」


「そっか。ちょっと残念だね」


 帰り支度を済ませ、闘技場のエントランスまで行くと、お姉ちゃんとお兄ちゃんが待っていた。

 どちらも戦闘後だというのに汗一つかいておらず、まだまだ本気を出していないことが窺える。流石だね。

 私が帰れないことを告げると、お兄ちゃんが露骨に悲しそうな顔をしていた。


「まあ、仕事だって言うのはわかるんだが、別に城で泊る必要はなくないか? 当日に闘技場にいればいいんだろ?」


「そうだけど、万が一と言うこともあるし」


「俺らがいて万が一があると思うか?」


「ないと思うけど、ほら、気持ち的にね?」


 お兄ちゃんの言う通り、戦力的な面で見るならAランク冒険者二人がいる家にわざわざ侵入する奴はいないだろう。いるとしたら、それは命令に忠実な暗殺者か命知らずくらいだ。

 仮に暗殺者が来たとしても、家には関係者以外通り抜けられない結界を張っているし、どうにかして侵入できたとしても侵入した時点で私が気付く。いや、多分この二人も寝ていても気配に気づくかもしれない。

 だから、私が何らかの理由で害されるという心配をするなら城なんかよりよっぽど安全なのだ。

 でも、王様としてはやはり闘技大会が失敗に終わることは絶対に避けたい事態だし、手元に置いておきたくなる気持ちはわかる。それに城からなら近いし、遅刻の心配もない。だから、そういう意味では城の方が安全と言えるかもしれない。


「むぅ、闘技大会が終わったら帰ってくるんだよな?」


「それはもちろん」


「ならいい。もういなくなったりしないでくれよ?」


 お兄ちゃんからしたら、安全だと思っていた家に預けていた妹がいきなり捨てられて行方不明になり、あわや死亡しているのではないかと騒がれていたのだ。心配する気持ちが強いのだろう。

 私としても、せっかくお兄ちゃんに再会できたのだからもっと一緒にいたいという気持ちはある。

 ただ、闘技大会が終わる頃には恐らくユルグさんの情報が集まっているだろうし、再び離れなきゃいけないんだよね。

 お父さんの頼みとはいえ、首を突っ込んでしまったのだから最後までやり遂げなくてはならない。私にできることは、なるべく早く解決して残る夏休みを一緒に過ごすことだけだ。


「うん、もう勝手にいなくなったりしないよ」


「そうか。それを聞いて安心した」


 私の言葉を聞いて、お兄ちゃんはにかっと笑う。

 その後、明日もあるということで二人は家に帰っていった。私も騎士達に連れられ、城へと帰る。

 なんかこれ、私が宮廷魔術師になる申し出を断らなかったらまんま今の状況になりそうだよね。

 宮廷魔術師は国の防衛の要だし、日夜魔法の研究に明け暮れて、時には無理難題を押し付けられて色々な場所に出向くことになる。当然、家族のことなど構っていられる時間などなくなるだろうし、いくら魔法が好きとは言っても限度があるだろう。

 ほんと、宮廷魔術師なんかにならなくてよかった。まあ、今は別の意味で城から重用されているわけだけど、自由があるだけましだろう。

 そんなことを考えながら、眠りにつくのだった。


 翌日。再び闘技場を訪れ、非殺傷魔法の準備を進める。

 今回から本選なので、試合数は激減する。なので、昨日と比べたらかなり楽になることだろう。

 本選に上がった16人の中にはリリーさんやサクさんの名前もある。どちらも優秀な冒険者だし当然と言えば当然だが、今年は割と激戦だったらしく、本選進出者はBランク冒険者が多い。

 いつもはもうちょっと数が少ないらしいんだけどね。何かのきっかけでもあったのだろうか。私の名を聞いて遠くからやってきた、とかだったら嫌だけど。


「それではこれより、本選第一試合リリー対サフィを始める。両者、準備はいいか!」


 どうやらまず戦うのはリリーさんとお姉ちゃんのようだ。

 正直結果は見えているけど、リリーさんもここまで来たのだからまた自信を喪失しないか心配ではある。

 いや、リリーさんにとってお姉ちゃんは憧れの冒険者みたいだし、それならそこまでのショックはないかな? ともかく、試合は一瞬で片が付きそうではある。


「それでは、始め!」


 合図の瞬間、お姉ちゃんの姿が消え、リリーさんの首元に剣が突き付けられた。リリーさんはピクリと反応したが、その時にはすでにどうしようもないって感じ。

 反応しようとできただけましだけど、やはりお姉ちゃんの戦いについていける人は稀らしい。

 あっけなく負けたリリーさんだったが、ぐっと拳を握り締めた後にふっと笑って、お姉ちゃんと握手を交わしていた。

 よかった。トラウマとかにはなっていないようだ。


「続いて第二試合、ミーシャ対アイシャを始める!」


 と、さくさく進行していき、今度はミーシャさんの名前が出た。

 出場するとは聞いてなかったんだけど、どうやらお姉ちゃんが参加することを聞きつけて飛び入りで参加したらしい。

 ほんと、お姉ちゃんのいるところには決まって現れるよね、この人。

 そんなこんなで、なんだかんだ知り合いが多い今回の闘技大会。お兄ちゃんとお姉ちゃんが圧倒的すぎるけど、大会としてこれはいいんだろうか。

 まあ、仮に出禁になったとしても別に痛くはないけどね。観戦はできるし。

 少なくとも、何かしらの規制は入るだろうなと確信しつつ、試合の行方を見守っていた。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] おっ!魔爪のミーシャさんお久しぶりっす、こうやって以前出た方々が元気そうに窺えるのは何かイイよね。(^ ^) [気になる点] さすがのハクさんもサフィお姉ちゃんが視認出来る範囲を光速で移動…
[一言] 出禁にならなくても本戦じゃなくてエキシビションマッチだけになるかも?
[一言] おー、時間属性魔法かぁ。これがあればお気に入りのマグカップが壊れてもすぐ直せる
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