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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第十一章:編入生と修学旅行編
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幕間:娯楽を作ろう6

 主人公の友達の転生者、アリシアの視点です。

 ハクに対してさぼってるとか偉そうなことを言っているが、割と人のこと言えないのではないかと思う。

 なぜなら、俺がやったことと言えば最初のルールの作成やちょっとしたネタ出し、後は説明会などの司会役くらいだ。

 ハクは召喚獣、支援魔法、罠と全部の原案を描いているし、テトさんはそれをカード化して販売していると結構働いている。まあ、それ以外の細々としたことが俺の仕事なのかもしれないが、やはり二人に比べると少し見劣りしてしまう。

 だから、俺はせめて布教くらいは頑張ろうと学園の連中に推しまくった。

 まだ入学したばかりの上、デビュタントも済ませていないので知り合いなんてハクくらいしかいないが、それでも臆さずに上級生の輪の中にも入っていってとにかくこんなゲームがあるんだと教えて回った。

 そのおかげか、学園では今空前の『サモナーズウォー』ブームが巻き起こっている。

 まだ第二弾までしか発売されておらず、そのカードプールはかなり狭いものではあるが、娯楽に飢えていた生徒達はこぞってこれを購入し、休み時間や放課後に遊ぶようになった。

 これで少しは貢献できただろうか。相変わらず作成に関してはほとんど任せっぱなしになってしまうが、そこは適材適所と言うことで許してもらいたい。

 後はこの調子で生徒達がこの話を自分の領地に持ち帰り、そこでさらに広げてくれれば万々歳だ。夏休みも近いし、案外すぐに効果は現れるかもしれない。


「アリシアさん、交戦コンタクトしませんか?」


「いいですよ。ではやりましょうか」


 この日も休み時間に交戦コンタクトをしていた。以前は俺が言わなきゃ誰もやらなかったのに、今ではこうして向こうから誘ってくれるようにまでなったのは感慨深い。

 俺は誘いに応じ、いつも使っているサンプルデッキを取り出す。初心者用デッキなので扱いやすく、どんなデッキと当たってもそこそこいい勝負ができる布教にはもってこいのデッキだ。


「ふぅ、やっぱりアリシアさんは強いですね。私ではまだまだです」


「そんなことはありませんよ。でも、あの場面ではこうした方がよかったかもしれませんね」


「アドバイスありがとうございます。……ところで、アリシアさんはいつもそのデッキを使っていますが、自分のデッキと言うものは持っていないのですか?」


 勝負を終え、カードをまとめているとふとそんなことを言われた。

 確かに、俺のデッキはサンプルデッキだと自称しているから自分のデッキとは言い難いかもしれない。

 そこで、そう言えば自分のデッキと言うものを作っていなかったなと思い至った。


「そういえば持っていませんね。ずっとこればっかり使ってましたから」


「そうなんですね。そのデッキでも十分強いですけど、もしよければ他のデッキも見てみたいです」


 まあ、作りたいテーマがなかったというわけではない。実際、ハクは自分が使いたいという理由で真っ先に【ドラグーン】を作り出したわけだし、開発者なのだから自分の使いたいテーマを優遇することくらいしてもいいとは思っている。

 ただ、俺が前世で愛用していたデッキは主に戦士系を中心に組まれたデッキ。つまり、人間がモチーフのものだったのだ。

 第二弾まででは割と馴染みやすいものをと言う理由でこの世界の魔物をモチーフに作ったり、そうでなくても獣系や植物系と言った想像しやすいものばかりを扱っていた。なので、俺の愛用デッキを作るのは無理だったのだ。

 しかし、ちょうど先日の話で第三弾に戦士系の召喚獣を出すという話が出た。なので、これで俺が使っていたテーマも実装することが可能になる。

 元々自分達が楽しむために作ったものなのだから、自分が楽しめなければ意味がない。布教に力を入れすぎて大事なことを忘れていたかもしれないな。


「なら、今度第三弾で新しいテーマを収録するつもりなので、そこで新しいデッキを組んでみますね」


「まあ、それはいいことを聞きました。では、期待していますね」


 これは、ちょっとハクに相談しないといけないかもしれない。俺もネタ出しはしているが、大半の案はハクが描いているし。

 出来ることなら夏休み中に第三弾を出したいところだし、早めに掛け合った方がいいだろう。

 流石に今は時間がないが、放課後にでも会いに行くことにしよう。幸い、ハクの部屋は聞いているし、会いに行くのは簡単だ。


 そんなわけで放課後。いつもなら少し遊んでから帰るところだが、今日はすぐに寮の方へ直行する。

 門番さんに挨拶し、ハクの部屋をノックする。

 ハクは魔法薬研究会に所属しているのでたまに遅くまで帰ってこない時があるけれど、今回はすでに帰宅していたようだ。すぐに扉が開き、ハクが出迎えてくれる。


「あれ、アリシア。どうしたの?」


「ちょっと『サモナーズウォー』の事で相談がありまして」


「そう。まあ、ここじゃなんだし入ってよ」


 そう言ってハクは部屋の中へと招き入れてくれる。

 寮の部屋は本来四人部屋だが、ハクの部屋は他にはサリアとエルさんしかいないのでそこまで気を使う必要はない。どちらも、ハクがいいと言えば快く了承してくれるだろうからな。

 一応、機密に関わることを他人に聞かせるのはどうかとも思ったが、サリアはすでにテストプレイを頼んだし、エルさんは仮に聞いたとしても言いふらすような人じゃないし別に問題はないだろう。

 中に入ると二人とも椅子に座っていた。


「お邪魔します」


「アリシア、いらっしゃい」


 すでに結構遅く、早ければもう夕食を食べに行っていてもおかしくない時間。椅子に座って一息ついているのかと近寄ってみると、机の上に何やらノートが広げられているのが目に入った。

 ノートにはいくつかの絵が描かれている。いずれも騎士や魔術師などを連想させる衣装を着ており、俺は一目でそれが次のカードの原案なのだとわかった。


「もしかして、今描いてたの?」


「うん、まあ。なるべく早く出したいしね」


 いくらハクが元ネタを知っているとはいっても、すでに十数年以上昔の記憶だ。俺も家族の名前や友達の名前は思い出せるが、その顔まではおぼろげになってきてしまっている。

 だから、こうして記憶から絵を描けるだけでも凄いことだ。仮に多少の脚色をしているのだとしても、描けるだけで普通に尊敬できる。

 流石にテトさんほどうまくはないが、それでも骨格もしっかりしているし、武器や表情も簡易的とはいえしっかり描かれている。

 ハクには絵心もあるようだ。羨ましい。


「それで、相談って?」


「あ、うん、それがね……」


 俺は自分の愛用していたテーマを作りたいということを話す。すると、ハクは表情を変えぬままふんふんと頷いてこう言った。


「確かに、私もそんな理由で【ドラグーン】を作ったしね。わかった、アリシアの使ってたテーマも入れてみよう」


 ハクは快く了承してくれた。まあ、ハクならばそう言ってくれると確信していたが、やっぱり頼む以上は敬意を払わないといけない。描くのはハクなわけだし。

 ちなみに、俺は絵とか全然描けない。


「それで、どんなテーマなの?」


「えっと、【ホーリーナイト】って言うんだけど」


「ああ、あれね。多分描けると思う」


「おお! それじゃあ、お願いできる?」


「うん、任せて」


 ハクは言うや否やさらさらとノートに原案を描いていく。それはまさしく俺が見たことがある召喚獣そのものだった。

 頼んでよかった。これで俺も自分のデッキと言うものを持つことができる。

 次の弾が発売されるのが実に楽しみだ。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ノリが完全に趣味全開の青春時代って感じでほのぼの、推しを布教するのって本当たのちーですもんね(´ω`)しかし自分なら生産者特権で俺tueee強カードを確保して無双するクズプレイヤーになってた…
[一言] 二人とも決まったテーマのデッキを持ってるから、テトさんはどんなテーマのデッキを使うか気になる。
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