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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第十一章:編入生と修学旅行編
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第三百八十話:エーセン王国の魔物

 流石、魔物が多く出てくる土地だけあって王都の周辺に比べたらかなり強い魔物がたくさんいた。

 恐らく、竜脈が関係しているんだろう。リヒトさんが封印されて以来碌に整備されていないのだとしたら強い魔物が生まれやすい環境であることは間違いない。

 だけど、ここは割と竜脈から離れているのだろうか、言うほどは強くはなかった。

 いや、強いは強いよ? 最低ランクでもDランクかCランクが出てくるし、下手をしたらBランク級が出てくることもある。だけど、もし竜脈の魔力から生まれた魔物ならばもっと強いのが出てきてもおかしくはない。

 確かこの国って竜脈の魔力によって栄えてきた国なんだよね? それなのに、王都の近くがこの程度っていうのは少し妙ではある。


「それに関しては私もあまり詳しくはありませんが、元々の王都はもっと南にあったと記憶しています。なので、恐らく魔王に滅ぼされた後、王都を北の方に移したのではないかと」


「なるほど」


 竜脈の魔力は大地に恵みをもたらしてくれる。だから、主要な国の都市などは竜脈の近くにあることが多い。しかし、竜脈の魔力は諸刃の剣でもあり、魔力が濃くなりすぎれば魔物を生む原因になり、薄くなりすぎれば土地は痩せていってしまう。

 それをちょうどいい塩梅に調整するのが竜の仕事であり、実際過去にも竜が派遣されたようだったが、その竜は封印されてしまった。

 竜脈の中でも特に詰まりが多く、魔力濃度が濃くなりやすいこの地ではあまり竜脈に近すぎると町の中に魔物が沸く羽目になるのだろう。だから、ある程度離して町を築く他なかったわけだ。

 他の竜脈であれば数十年とか数百年とかの単位で詰まりは訪れないとは思うんだけど、ここはやたらと詰まるのが謎だな。何か原因でもあるんだろうか。竜すらも諦める土地って考えると相当厄介な場所なんじゃないかなこれ。


「なんでこんな土地に住もうと思うんだろうね」


「さあ、それに関してはさっぱりです」


 魔物が多くても得るものが多いなら住む理由にはなると思う。でも、その得るものっていったい何だろう?

 確か、特産品は高純度の魔石と工芸品だったかな。まあ、後者はないとして、魔石がやはり有用だからだろうか。

 実際、こうして魔物を倒していても結構な量の魔石が手に入る。しかも、珍しい属性の魔石も割とあった。

 ゴーフェンでの魔石の価値を見る限り、特殊属性の魔石と言うだけでも結構高いし、その上高純度の魔石となればかなりの値段で取引されているんじゃないだろうか。

 私としてはそんな危険を冒してまで魔石を売りさばく必要はない気がするけど、何度滅びても再興を遂げたこの国だからこその意地みたいなものがあるのかもしれない。


「あんたら、めっちゃ強いな……」


 ふと、背後で様子を窺っていたアッシュさんが苦笑いを浮かべながら話しかけてきた。


「ふふん、当然です。私は火の扱いに関しては一流ですからね」


 カムイさんは胸を張りながら答えているが、多分その体勢だと倒れ……あ、遅かった。

 まあ、カムイさんのどや顔はともかく、このメンバーだと確かに単調になってしまう。

 私は探知魔法で魔物の接近を察知できるし、加減したところでほぼ一撃なので相手にならない。エルも同じで、仮に人間姿だとしてもCランク程度の魔物だったら一振りで氷漬けにできる。

 サリアはそこそこ時間がかかるけど、私が接近を知らせてやれば闇魔法で拘束したり隠密魔法で背後に回ったりして攻撃のチャンスを作り、的確に急所を狙って倒している。

 一応、カムイさんもご自慢の炎操作で魔物を焼き尽くしているのでこのパーティの殲滅速度はかなりのものだ。

 正直、魔法に関してはみんなほぼ完成されているので後はイメージ通りに倒すだけである。アッシュさんの仕事を奪うようで悪いが、よほどのことがなければ私達に負けはない。


「キーリエさん、そっち行きましたわ!」


「うぇっ!? 待って待って! 私は戦闘はそんなに得意じゃないんだってば!」


「くっ、ミスティアさんフォローを!」


「はいよー。目眩しー」


 対して、シルヴィアさん達の班は結構苦戦を強いられている。

 シルヴィアさんとアーシェさんの二人は火属性研究会に所属しているが、特段魔法の威力が高いわけではない。いや、13歳の放つ魔法としては相応の威力ではあるが、ここにいる魔物相手では少々火力不足だ。

 キーリエさんは知らないが、本人が言っている通り戦闘は得意じゃないのだろう。一応、風魔法を使っているようだが、威力はお察しである。

 割と活躍しているのはミスティアさんで、要所要所で的確に光魔法で敵を往なしている。ただ、やはり火力役が一人だけでは分が悪く、その都度アイゼンさんに助けられているようだった。

 サリアとエルが一緒にいるのはいつもの事だからとこういうグループ分けになったが、戦闘力で分けるなら誰か一人でも向こうに行った方がよかったかもね。

 まあ、あくまでこれは対魔物を経験するだけのものであり、倒すことはあまり想定されていないようだからこれでいいのかもしれないけど。


「やっぱりハクさんのようにはいきませんわね……」


「ええ、どうしたらあんな威力の魔法を放てるんでしょう?」


 魔物を退けた後、ちらちらとこちらを見ながら首を傾げている二人。

 私と彼女達の差と言ったら、まあ魔力の差だよね。

 別に二人の魔力が低いというわけではない。日頃から練習に勤しんでいる二人の魔力は一般的な同年代と比べたら多い方だし、完全に馴染んだらサリアと同じくらいにはなると思う。むしろ、火力に特化している火魔法が得意な二人ならそのうちサリアの火力を上回る可能性が高い。

 しかし、それは少なくとも後二年、三年後の話。まだまだ、魔力が馴染むには時間がかかる。

 私の場合は、元々が人間ではないのでその時点で魔力の量が違うし、馴染む速度も全然違う。と言うか、ベースが精霊だから生まれた時点で魔力に関しては自在に扱えると言ってもいい。

 その上、今は竜の力まで授かっているのだ。これで二人に負けたらむしろ私がおかしい。


「魔力が馴染むにはまだまだ時間がかかりますから、今はまだそこまで気にしなくてもいいと思いますよ」


「でも、この中で一番幼いハクさんが一番魔法を使うのがうまいっておかしくありませんか?」


「そうですわ、ハクさんはどんな魔法の修行をしてきたんですの?」


 幼いって……まあ、見た目的にも確かにそうだけどさ。

 うーん、私がやってきた魔法の練習と言えば、魔法陣をひたすら覚えるってことだけだけど、あれは並外れた記憶力があってこそだ。

 私が今扱える魔法は軽く100を超えるけど、それらすべての魔法陣を暗記した上に、さらにその都度威力を調整したりなどのアレンジを加えている。

 ある程度はイメージだけでも補えるとは言え、流石にこれは異常だろう。

 一応、サリアにも教えて見てはいるが、やはり難しそうにしていたし、この方法はあまりお勧めはできない。


「……以前にも言ったかと思いますが、私はいつも魔法は魔法陣を思い描くことで発動しています。なので、魔法陣をしっかり覚えましょうとしか言えないんですが……」


「ハクさん、あれをすべて完璧に覚えるなんて無理ですわ」


「一つだけなら、と思って試してみましたけど、複雑すぎて頭が痛くなりましたわ」


 でしょうね。

 初級魔法であればまだ簡単な方なので覚えられるかもしれないが、それ以上となると一気に文字数が増えるので覚えるのは大変だろう。

 せめて魔法陣の文字を理解することができれば違うかもしれないが……試してみる?


「魔法陣の基礎でよければお教えできますけど、いりますか?」


「ハクさんさえよければお願いしたいですわ」


「ええ、お二人もそう思いますわよね?」


「んー、まあ、ハクの魔法は興味あるかなー」


「記事にしてもいいなら」


 意外にもみんなやる気らしい。

 まあ、魔法陣の文字列を教えるくらいだったら多分できるだろう。それを魔法陣の構築に生かせればあるいは可能性があるかもしれない。

 とりあえず、次のお話が終わった後に宿屋で、と言うことになり、その場は収まった。

 さて、少しは手助けになればいいんだけどね。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 竜による調整の手を離れた国がどうなっているか( ˘ω˘ )
[一言] 〈魔法陣文字の理解を深めさせる。〉(ˊ̱艸ˋ̱)知らずに施すチート教育♪ 詠唱の完璧さを求めるのが主流の魔法教育が行われている中、これはある意味魔法学の根本を揺るがす波紋になるような。そりゃ…
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