表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第十一章:編入生と修学旅行編
427/1552

第三百七十五話:エーセン王国

 あれからエーセン王国について少し調べてみた。

 エーセン王国は1000年以上昔から存在する古い国で、国土もそれなりにあり、結構有名な国らしい。

 かつて、魔王が頻繁に出てきていた時代、度々魔王の配下である魔物、と言っても実際に統率していたわけではないだろうが、に襲われて壊滅してはその度に復興していることから、『不死の国』と言う異名もあるようだ。

 よく魔物に襲われる土地柄からか、勇者と呼ばれる人間を数多く出しており、危機に陥る度にその腕を振るって多くの人々を助けてきたという逸話がある。

 ここで言う勇者は聖教勇者連盟が召喚した召喚勇者ではなく、現地の人が腕を上げて成り上がった本当の意味での勇者だ。神様に与えられたような特別な力こそないものの、当時はその腕一本で一騎当千の活躍をしたと伝えられている。

 ざっと調べた限りではこんな感じだ。要は、魔物によく襲われる運の悪い国で、それに対抗するために強い人がたくさん現れた国と言う話。

 まあ、当時の魔王がどれほどの強さかは知らないけど、少なくとも町を襲う脅威を退けることができたというなら結構な豪傑だろう。英雄と言ってもいいかもしれない。

 まあ、それでも毎回壊滅しているようだから結局は意味がないのかもしれないけど、その度に立ち上がるだけの力を持つ国力は魅力だ。

 観光地に関しては、当時の英雄達が戦った戦場の跡地や古城、英雄達が使った武器や防具などを展示している資料館などが主で、その他は特産品に純度の高い魔石や工芸品なんかを置いている店があるらしい。

 古い町が多いのでその他にも当時の貴重な建物とかが見られるかもしれないね。


「まあ、観光地としてはそこそこなのかな?」


 私が思い浮かべる観光地と言うと、綺麗な海とか景色が綺麗な山とか、あるいは古いお寺とかそう言うものだけど、ここはその中でも歴史的な建物などが見られる場所ってことになる。

 すでに700年以上生きている私ではあるけど、竜の谷から出たことがなかったので当時の建物様式に関してはさっぱりだ。だから、少しは興味はある。

 しかし、見るだけならいいけれど、それをレポートとして提出しろと言うのは少し面倒くさい。

 そりゃ、恐らく当時の事を知る人とかの話を聞いたりできるかもしれないけど、エルフでもない限り1000年くらい前の事を覚えている人はいないだろうし、そこまで熱心でもないのに感想を書けと言われても困ってしまう。

 まあ、これは修学旅行であって観光ではないからそういうのがないと意味がないのかもしれないけど、やっぱり少し面倒くさい。

 写真でも撮れれば楽なんだろうけどね。メモは取れるけど、後で思い返すとなんだっけって思う時があるし。


「ハクお嬢様、少しよろしいですか?」


「エル、どうしたの?」


 図書館で本をパラパラめくりながら調べていると、一緒にいたエルが唐突に話しかけてきた。


「今思い出したのですが、エーセン王国には少々厄介な問題がありまして」


「問題?」


「はい。まあ、今はそうでもないと思うのですが、一応お伝えしておこうかと思います」


 エルは少し言いよどんだ後話し始めた。

 エルの話では、エーセン王国が昔から魔物に襲われやすい土地と言うのは竜脈が関係しているらしい。

 竜脈とはこの星を流れる魔力の流れであり、これの近くの土地はその魔力を受けて豊かになりやすい。しかし、ふとした拍子に竜脈の魔力が濃くなってしまうとそこから魔物が生まれてしまう。

 それを調整するのが竜の役目ではあるのだが、エーセン王国の竜脈は特に魔力が溜まりやすいらしく、頻繁に魔物が出現してしまっていたらしい。

 そして、それらをどうにかするには戦うしかないわけだが、竜脈から生まれた魔物は強い個体が多く、倒すのは難しかった。だからこそ、何度も何度も壊滅を繰り返したわけだ。

 本来ならそんな土地さっさと離れればいいのだが、どういうわけかその土地の人々は戦い続けることを選択し、頑なに動こうとしなかった。

 別に竜からしたら世界全体のバランスさえ整っていれば多少の被害はどうでもいいのだが、流石に常に詰まり続けている竜脈があるのはいただけないとしてその土地専門の竜が派遣されることになった。

 それによって、その土地の魔物の出現は抑えられるはずだった。しかし、人間は人間で魔物と戦う術を見つけたらしい。それが、魔物を封印するという方法だった。

 竜脈の近くということもあり、その土地では純度の高い魔石を多く産出していた。それに封印のための呪印を刻み込み、封印石と言うものを作って、それを用いて凶悪な魔物を封印してきたようだ。

 それだけならば、魔物に対する対抗手段を手に入れてよかったねと言ったところだが、人間達はあろうことかその土地に派遣された竜すらも封印してしまったらしい。

 結果、その土地の魔物は減ることなく、幾度となく魔王が誕生した、と言うわけだ。


「その封印されてしまった竜はどうなったの?」


「それっきりですね。何度か取り戻そうとしましたが、封印石はかなり厳重に守られているようでなかなか手出しが出来ませんでした。下手に手を出して被害を増やすわけにもいきませんでしたし」


「じゃあ、もしかして今も?」


「はい、まだ封印されたままかと」


 一応、追加の竜を派遣するかという議論も行われたようだが、また封印されてしまっては敵わないとその後は竜もその土地を見放したようだ。

 なんというか、自力で対抗手段を見つけたのは凄いと思うけど、それで守り神的存在である竜まで封印してしまうのはなんだかなぁと思う。せっかく助けに来たのに、恩を仇で返された気分だ。


「今では封印石の作成方法は失伝していて、それを扱う封印師と言う職もなくなっているので、今はもう封印されるということは多分ないでしょうが、一応お伝えしておきますね」


「わかった。ありがとう」


 竜すらも封印してしまう封印石か。封印されてしまえば、抵抗できなければもはや成す術はない。死ねば転生できるかもしれないが、封印されていてはそれも叶わないことを考えるとかなり厄介だ。

 その封印されてしまったという竜も気になる。未だに封印石が保管されているかはわからないけど、もし未だに封印が破られていないのだとしたら、恐らく1000年以上もの間封印されていることになる。

 私も700年ほど封印されていたわけだが、意識がなかったとはいえそれだけの時間何もできないのは苦痛だろう。

 なんとか助け出せたらいいんだけど……。


「ちなみに、その竜の名前は?」


「確か、リヒトだったかと」


 リヒトか。うん、覚えておこう。

 もしかしたら助けるチャンスがあるかもわからない。今回の修学旅行で少しでも手がかりが掴めれば御の字かな。

 まあ、場合によっては後で個人的に調べるのもいいかもしれない。別に顔も知らない竜の事なんて気にしなくていいかもしれないけど、一応同胞だしね。


「さて、それじゃあそろそろ戻ろうか」


 思わぬところでエーセン王国に用事が出来た。

 修学旅行という形のため、自由に調べるというのはできないかもしれないけど、糸口を掴むくらいはできるかもしれない。

 完全に楽しむ気満々だったけど、少し予定変更だね。


「サリア、いくよ」


「おう」


 本を戻して図書館を後にする。すると、曲がり角からカムイさんがやってきて、私の目の前で盛大に転んだ。


「あー、大丈夫ですか?」


「う、うるさい! 別に痛くもなんともないんだから!」


 涙目になっているカムイさんを助け起こしながら小さくため息を吐く。

 カムイさんも一緒ということを考えると、ほんとに碌に調べられない可能性があるな。

 せめて修学旅行の間くらい大人しくしておいて欲しいけど、まあ無理だよねぇ。

 うん、今回は深入りはなし。後で個人的に調べるとしよう。ギャーギャー騒ぐカムイさんを宥めながら、そう心に決めた。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] スタンピード起きそうなフラグ( ˘ω˘ )
[良い点] 封印された竜、失伝した封印石の技術、←(^◇^;)あかん!これだけでハクさんが何をやらかして巻き込まれるのか幻視出来てしまう! 修学旅行がエーセン王国の命運を賭けた大冒険にビルドアップ‼︎…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ