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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第十一章:編入生と修学旅行編
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第三百七十三話:カードゲームの効果

 カードゲームに関しては意外と好評だった。

 まあ確かに、この世界の娯楽と言えば演劇や闘技場など大掛かりなものが多く、子供が気軽に遊べる娯楽と言うものは少ないため、デッキと場所さえ揃えば簡単にできる『サモナーズウォー』が人気になるのはある意味必然でもあった。

 割と難しいルールではあると思うのだが、買いたいと言う人が続出し、どこの商会で売っているのかという声が殺到した。

 私は一応開発者の一人ではあるが、販売に関しては一切関与していない。テトさんの家が商会を持っているらしく、恐らくそこで販売しているとは思うのだが、正確な名前は聞いていなかった。

 なので、後で調べておくと返事をし、その場は何とか収めた。中にはキーリエさんの姿もあったし、学園中に広まるのは時間の問題だろう。

 テトさんが今年で卒業したのはある意味よかったのかもしれない。もし学園中の生徒が購入するとなれば相当な売り上げになるだろうし、生産が大変だろう。進路に関しては聞いていないが、しばらくは商人として生産活動に尽力することになりそうだ。

 なんか、そう考えるとテトさんの人生を狂わせてしまったのかなと少し申し訳ない気持ちもするけど、アリシア曰く全然気にしていない、むしろ楽しそうにしてたから気にする必要はないと言っていたので大丈夫だと信じたい。


「ハク! 今日こそ決着をつけるわよ!」


 そうして一か月ほど経過した頃、いつものようにカムイさんが休み時間に乱入してきた。

 ただ、前と違うのはその手にカードの束を握っているということ。そう、彼女もまた『サモナーズウォー』にはまってしまったらしい。

 まあ、元々このカードゲームは前世にあったカードゲームの名前をそのままパクってきたものだし、ルールも多少の改変は加えているとはいえほぼ一緒だ。そして、カムイさんは恐らく転生者、だからこそ、前世で見知ったこのカードゲームに飛びついてしまったのだろう。

 まだ第一弾しか発売されていないのでいくつかの無能力の召喚獣と、三種類ほどのテーマがあるだけなのでみんなが使うデッキは似通っており、戦力は拮抗している。しかし、それでもプレイングの差と言うものはあって、初めからルールをある程度知っている私達と一から始めたこの世界の人達では若干こちらの方が有利だ。

 私も布教のために何度か交戦コンタクトさせてもらったが、今のところ負けはない。そして、カムイさんもまたほとんど勝っているようで、このクラスの中ではちょっとした有名人になっている。

 まあ、元々その言動や行動から有名人ではあったけど。


「いいですよ。またハンデはいりますか?」


「い、いらない! ……と言いたいけど、恥を忍んで頼むことにするわ」


 カムイさんが私に勝負を挑んでくるのはもう見慣れた光景で、カムイさんの大声に野次馬が集まってくる。

 一応、このクラスでは最強同士のカードなので見る側も結構楽しみにしてくれているらしい。

 今のところ、私とカムイさんの勝敗は私が全勝している。なので、途中からハンデと称して私の方のライフを少し減らした状態からスタートしたり、初手の手札の枚数を減らしたりと色々やっている。

 まあ、それでも私が勝つけど。

 別に私が強いわけではない。いや、プレイングに関しては多少の心得はあるので自信はあるが、毎回勝っているのはカムイさんのプレイングミスによるところが多いからだ。

 的当て勝負に関しては本気でやっても引き分けるくらいには精度がいいのに、これになるといい場面で途端にポンコツになる。

 これはドジと言っていいのかよくわからないが、とにかくそういう結末が多い。

 あれがなかったら、何回かは私も負けてると思うんだけどね。まあ、これに関しては注意しても治らないようなので仕方がない。


「わかりました。ではやりましょうか」


「じゃあ、いくわよ!」


「「交戦コンタクト!」」


 そうして始まった試合。ハンデとして先攻は譲り、ライフを半分、初手を一枚減らした状態でのスタートだ。

 ライフはともかく、手札が一枚減るのは地味にキツイ。

 このゲームで手札を増やす手段は自分のターンの開始時に一枚引く以外はカードを引ける効果を持つカードを使うしかないが、そういうカードは結構貴重だ。

 手札が増えればそれだけやれることが増えるため、それを増やすためのカードと言うのは強い部類に入る。仮に持っていたとしても、初手が少なければそれを引ける確率も下がるわけで、手札が悪ければそのまま相手に押し切られて負ける、と言うことも普通にあり得る。

 だがまあ、そこは運もあるが、プレイングの見せどころでもある。私のデッキは序盤はそこまで動くものじゃないしね。


「よし、これならいける!」


 試合はカムイさん有利で進んでいった。

 カムイさんのデッキは典型的な『ビートダウン』。攻撃力が高い召喚獣を出して火力でごり押ししてくるスタイルだ。

 もちろん、そこは知識もあるのか、適度に相手を除去する支援魔法や罠を入れていたりして完全な脳筋にはなっていないので、攻撃力の高い召喚獣を出して安心しているとすぐにひっくり返されることもある。

 対して私はテーマの一つである『ドラグーン』と言うデッキ。

 主にドラゴン系の召喚獣で構成されていて、パワーはあるがコストが重いという感じのデッキだ。

 上級召喚獣が多いこともあって事故も結構多いデッキではあるが、その辺りは色々と調整しているので致命的な事故を起こしたことは一度もない。

 専用サポートもあるので軌道に乗りさえすれば場を圧倒できるデッキでもある。


「ふっふっふ、今日こそは勝つんだから!」


 私の召喚獣は次々とやられて行き、ライフも残りわずかとなってきた。

 さて、一応逆転できる手は残しているけれど、多分頃合い的にそろそろだと思うんだよね。

 と言うわけで1ターン待つ。予想通りなら、罠に飛び込んできてくれるはずだ。


「あとはこいつで攻撃して終わり!」


「やっぱりそう来ますよね」


 案の定攻撃してきたカムイさんに対して罠で迎撃。カムイさんの召喚獣は全滅し、場ががら空きとなった。


「え、ちょ、ちょっと待って! 卑怯よ!」


「卑怯も何も、そういうゲームですから。……はい、これで終わりです」


「あぁぁぁあああ!?」


 返しのターンで一気に展開し、一瞬でカムイさんのライフは零となった。

 カムイさんはいつも詰めが甘い。あそこはきちんと罠を警戒して保険をかけておくべき場面だった。

 確かに、前世のこのゲームにおいてはあえてそう言うリスクを冒す方が有利に働くこともあったが、今この世界で発売しているカードプールではデメリットでしかない。

 その辺に関してはカムイさんも知っているだろうに、なんでいつも忘れてしまうんだろうか。


「私の勝ちですね」


「くっ……! も、もう一回! もう一回やって!」


「いいですけど、授業までには終わらせてくださいね」


 泣きの一回が入り、再び勝負を始める。

 野次馬達も興奮しているのか、私やカムイさんを応援している。

 本来は個人で楽しむためだけに作ったものではあるけど、こうして友達とゲームに興じることができるっていいよね。

 これのおかげか、最近ではカムイさんの妨害も少し減っている気がするし、このままカードゲームにのめり込んで目的を忘れてくれると助かる。

 その後、何度か勝負をしたが、結果はすべて私の勝ちだった。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] カードゲーム…MtGならやってた! でもトラップ出てきてるし、サモナーズウォーは遊戯王みたいな感じかな? カードゲーム作ってる会社って、お金刷ってる気になるらしいですねw そりゃあ、プレミ…
[一言] 何とも平和な戦いに( ˘ω˘ )
[良い点] すげえ、(´∀`)聖教側の追手とばかり思ってこの章スタート時ハラハラしたのがウソみたいなほのぼのゲームエンジョイな流れ♪ テトさんと娯楽を作ろうと言っていた頃にこんな愉快な伏線が仕込まれて…
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