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捨てられたと思ったら異世界に転生していた話  作者: ウィン
第十一章:編入生と修学旅行編
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第三百六十九話:日常の一コマ

 あれからお試し期間である一週間が過ぎ、本授業が開始された。

 私が今回とった授業は二年生の時と変わらずだ。唯一変わったことと言えば、氷魔法の授業が追加されたことくらいだろうか。

 以前はエルは私と同じ授業プラス氷魔法と言う取り方をしていたのだが、一年学んだ結果、学ぶべきことは何もないと感じた上、私が氷魔法を取っていなかったのでこれ以上取る意味もないと思ったらしく、今年は氷魔法の授業は取らないと言ってきたのだ。

 確かに、魔法のエキスパートである竜からしたら学園の授業など退屈だろう。今はほとんどの生徒が詠唱を覚えるのに躍起になっているし、詠唱を暗記できている人も詠唱短縮ができるわけでもない。竜の目線から見たら、何ともレベルの低い授業に思えることだろう。

 だけど、授業とは何も学ぶだけが仕事ではない。共に学ぶ人達と交流を図り、切磋琢磨しながら技術を磨いていくのも目的の一つだ。

 エルの氷魔法捌きは同じ氷魔法を履修している人からしたら憧れの的であり、ある意味で希望となっている。だから、ここでエルが取るのをやめてしまうとがっかりする人も多く出ることだろう。

 それに、私としてはエルにはいろんな人と仲良くなって欲しいと思っている。これからも私と一緒に人間社会で暮らしていくならコミュニケーションスキルは必須だ。

 だから、私も氷魔法を取るからと今年もエルには氷魔法の授業を取ってもらうことにした。

 別に、コミュニケーションスキルを鍛えるだけだったら私と同じ授業を受けているだけでもいいとは思うし、そもそもエルは愛想を振りまくだけだったら割とできているから今更そんな心配いらないんじゃないかという疑問はあるけど、まあ気分の問題だ。

 で、エルの取った授業に関してはそれで問題ないんだけど、やはりというかこの一週間の間にも色々とちょっかいをかけてくる問題が一つ。


「さあ、ハク! 今日こそ決着をつけてやるわ!」


 朝、教室に入るなり私に突っかかってくるのはこの一週間で見慣れた姿だ。

 まあ、向こうは私やエルを倒しに来ているわけだから勝負を挑むのはまあ間違ってはいない。ただ、そのタイミングがホームルーム中だったり授業中だったりととにかく面倒なタイミングばかりなのだ。

 先生や生徒が注意すればすぐに大人しくなるのだが、学習能力がないのか次の日になればまた同じことをしてくる。

 致命的に授業の邪魔をしているかと言われたら、まだお試し期間だしと見逃されていたが、今日からは本授業である。先生からも、本授業では大人しくしておくように言われていたようだが、こうして突っかかってくるところを見るとやっぱり話を聞いていないんだろう。

 私ははぁと溜息をつき、適当に挨拶を返す。


「おはようございますカムイさん。でも、今日からは本授業なので大人しくしてないとまた怒られますよ?」


「そんなこと知ったこっちゃないわ! 死ねぇ!」


 大きく拳を振りかぶって殴りかかろうとしてくるが、その途中で肘が壁に当たり、悶絶するカムイさん。

 相変わらずのドジっ子だ。これがなかったら、今頃退学だろうなと思う。

 普通に考えて、学園内での暴力沙汰は問題行動だが、カムイさんの場合はそれをやる直前でほぼ必ずと言っていいほど自滅するので注意する程度に収まってるって感じだ。

 もちろん、たまに自滅せずに攻撃が当たることもあるけど、今の私の身体は防御力がかなり高くなっているのでただ殴りかかられる程度ではびくともしない。

 体を炎に変化させることができるとシンシアさんに聞いたのだが、今のところその能力を使ってきたことはないのが気にかかるけど、学園内だから遠慮しているんだろうか。

 と言うか、本気で殺そうと思ってるならもっと人気のないところで襲えばいいのに。仮にここで大暴れしたら私を殺せたとしても犯罪者として指名手配されると思うんだけど。


「~~~!?」


「はぁ、ほら、見せてください」


 私はカムイさんの手を取って治癒魔法をかける。

 自滅したカムイさんの怪我を治療するのももう何度もやったことだ。

 別に、相手は殺そうとしてきているのだからそんなことする必要はないように思えるけど、こうも失敗続きで自傷している上に本気で殺そうとしてこない感じを見るとなんとなく放っておけない。大した手間でもないし。


「あ、ありがとう……じゃなくて!」


 カムイさんは意外と素直なのか、治療をすればいつもお礼を言ってくる。しかも、顔を赤らめて恥じらうような感じで。まあ、それも一瞬の事で、すぐに睨みつけてくるんだけど。

 なんだろう、ツンデレとでも言えばいいのかな? 前に渡したハンカチも後で綺麗に洗って返してくれたし、変なところで律儀な性格してると思う。

 こんなので刺客が務まるんだろうか。ちょっと心配になってくる。


「ほら、先生来たし席に戻った方がいいですよ」


「くっ! 今日のところは見逃してあげるわ! 命拾いしたわね!」


 顔を真っ赤にしながら去っていくカムイさん。今日は……ああ、やっぱり転ぶんだね。いつも通り。

 なんだかんだ、あのドジっぷりはクラスでも受け入れられている。いつもはお嬢様っぽい口調なのに私に対しては感情に任せて喋っているので、そのギャップがいいという声もあるようだ。

 立ち位置としては、私の友人と言うことになっているらしく、私に対する発言はみんなじゃれ合いの一環として捉えられているようだ。喧嘩するほど仲がいいみたいな?

 まあ、別に私としてもカムイさんのことは友人の一人として見てもいいとは思っている。

 敵とは言え、あまりにも殺意がなさすぎるし、ああいう風に絡んでくるタイプは今までいなかったからある意味で新鮮だ。これ以上聖教勇者連盟を相手にしたくないという打算もあるし、このまま仲良くなって懐柔できないかとも思っている。

 まあ、打算なしでもなんとなく放っておけない性格してるし、どうにかできたらなと思っている。

 生徒に助け起こされながら席に座るカムイさんを見ながら、漠然とそんなことを考えていた。


 カムイさんは火魔法しか使えないという触れ込みだった。

 まあ、火魔法と言うよりは恐らく能力による火の操作だと思うけど、とにかく魔法っぽいことはそれしかできない。

 そして、一応は私を倒そうという目的があるため、取る授業は私と似通ったものになる。なので、カムイさんの取った授業は魔法では火魔法のみ、それ以外は私の取っているものすべてという形になった。

 まあ、たとえ自分の使える属性ではなくてもその授業を取ることはできるが、適性もないのに学ぶ意味は薄いし、そもそもカムイさんはしょっちゅう授業の邪魔をするので関係ない授業は極力取らないようにと先生各位から注意されているらしく、この形に収まったようだ。

 火魔法に関しては恐らくかなりの腕前だろう。これでも対竜グループの中では最強とも言われるくらいの実力者らしいし、能力による制御なら相当細かなことまでできるはずだ。

 私も大量の加護と竜の力のおかげでかなり細かな制御ができるようになっているが、どちらが上かな? お試し期間中はその実力を見ることはなかったから少し興味はある。

 今日は早速火魔法の授業があるし、早速その実力が見れることだろう。私は若干期待を膨らませながら先生が来るのを待った。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] きっと火の扱いが上手いからお肉の焼き加減も絶妙なんだろうな(ドジらなけれは)
[一言] 〈対竜グループの中では最強〉 …(*´-`) ……(*´-`) ………(*´-`) え〜と、誤字じゃないっすよね。 〈くくく、奴は四天王の中でも最弱〉みたいな文章と取り違えて…
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