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幕間:娯楽を作ろう4

 主人公の友達の転生者、アリシアの視点です。

「先攻は譲るわ。まずは自由にやってみて」


「おー」


 サリアは説明した通りにデッキからカードを一枚引き、手札のカードを眺めている。

 サンプルデッキのため、その戦い方は単純だ。ずばり、攻撃力の高い召喚獣で殴る、それだけである。

 召喚獣同士が戦う場合、勝つのは攻撃力が高い方だ。だから、何の特殊能力を持っていない召喚獣でも、攻撃力が高いというだけである程度強いと言える。

 ただ、それだけでは相手により攻撃力が高い召喚獣を出されたら負けが濃厚になってしまうので、それらを除去するために支援魔法や罠などが入っている。

 こういう、攻撃力の高い召喚獣でただ殴るっていう動きをするデッキの事を『ビートダウン』と呼ぶらしい。

 シンプル故に考えることが少なく、下手なギミック寄りのデッキなら攻撃力の高さで圧倒できることもある。初心者に使いやすいデッキと言えるだろう。


「決めた! 僕はこれを召喚してターンエンド!」


 サリアが出したのはデッキコンセプトとも言える攻撃力の高い召喚獣。特に能力を持たない召喚獣ではあるが、一体も召喚獣を出していないとサモナーに直接攻撃されるため特に攻撃する予定がなくても召喚獣を出しておくことは重要である。特に、攻撃力が高ければ戦闘においては容易に突破もされないので純粋な壁にもなってくれる。

 サリアのターンが終了し、転じて俺のターン。

 俺が使っているのはサリアが使っているデッキと同じものなので使役する召喚獣は大体同じだ。だから、単純に攻撃力だけでごり押しと言う手段はとりにくい。

 なので、ここで支援魔法の出番と言うわけだ。


「私は【強制送還】を発動。場にいる召喚獣一体を持ち主の手札に戻す」


 支援魔法のいいところは即座に発動できることだ。

 本来、召喚獣を倒すためには同じく召喚獣を召喚して戦闘を行い、勝利しなくてはならない。しかし、今回用いた支援魔法は戦闘すら行わず、召喚獣を除去することができる。

 他にも、召喚獣の攻撃力などを上げたりするものや一度発動すれば恒久的に効果が持続するものなどその種類は様々で、中にはテーマ専用の支援魔法も存在する。


「そして、【はらぺこオーク】を召喚。サモナーに直接攻撃」


「ぐわー」


 基本的に相手のターンでは召喚獣を召喚することはできない。一部のカードで相手のターンでも召喚獣を出せるものもあるが、このデッキには入っていない。だから、この攻撃はサモナーへの直撃となる。

 サモナーはそれぞれライフと呼ばれるいわゆるHPがあり、直接攻撃の場合は攻撃した召喚獣の攻撃力と同じ数値のライフを失うことになる。

 初期のライフは10000点あるため召喚獣一体の攻撃でやられることはほとんどないが、ゲームが進めば複数体の召喚獣が並ぶことも多々あるため、防御するためには罠を仕掛けておくか、壁となる召喚獣を置いておく必要がある。


「私は罠を一枚仕掛けてターンエンド」


 罠は相手の行動によって発動するタイプの種類のカードで、仕掛ける際は場に裏側の状態で伏せておく必要がある。

 これだと罠を仕掛けていると相手にバレバレなわけだが、これを除去するには支援魔法で破壊するか、あえて引っかかって発動させるほかない。

 そこらへんのリスクリターンを考えるのもこのゲームの醍醐味だ。


「僕のターン。ぬぅ、あいつに勝てるのは……こいつだ! 【グレーターウルフ】を召喚!」


「あ、それはできないよ」


「なんで?」


「それは上級召喚獣だからね。ほら、ここにレベルが書いてあるでしょ?」


「あ、ほんとだ」


 上級召喚獣とはその名の通り上級の召喚獣である。

 これを召喚するためには通常の召喚をする際のマナでは足りず、すでに場に出ている召喚獣を生贄にすることによってリソースを確保しなければ召喚することができない。

 こう聞くと使いづらいように思えるが、上級召喚獣は攻撃力も通常の召喚獣より高めに設定されていることが多く、また特殊能力も強力なため出せれば一発逆転も狙える優秀な召喚獣である。

 しかし、あまり上級召喚獣ばかりをデッキに入れすぎると、そもそも召喚できないことの方が多くなってしまい、いわゆる事故が多発するため入れる枚数には注意が必要だ。


「んー……あ、これは使える?」


「【召喚補助の魔石】……うん、これなら出せるね」


 サリアが見せてきた支援魔法は上級召喚獣を召喚する際に生贄にする召喚獣が一体減るという効果を持つ。

 【グレーターウルフ】の召喚に必要な生贄人数は一体なのでこれで普通に召喚することができるのだ。

 なるほど、考えたな。


「じゃあ、これを使って【グレーターウルフ】を召喚。で、確か特殊能力があるんだよな?」


「ええ。【グレーターウルフ】は場に出た時にデッキから一体【フォレストウルフ】を特殊召喚することができる」


 特殊召喚と言うのは召喚獣の特殊能力や支援魔法などの効果によって通常の召喚とは異なる方法で召喚獣を呼び出した場合に使う呼び名である。

 これには一ターンに一回設けられている召喚に必要なマナを消費することはなく、条件さえ揃えばいくらでも特殊召喚することができる。

 召喚獣を大量に並べるなら、特殊召喚の特殊能力を持つ召喚獣を大量にデッキに入れるというのも手だ。ただ、それで呼び出せる召喚獣は割と弱めなのも多いので、数を並べたからと言って勝てるとは限らないが。

 ただ、今回は結構強い手だ。【フォレストウルフ】の方は攻撃力もそんなに高くないしあまり強いとは言えないんだけど、【グレーターウルフ】の方は攻撃力も高いし、更に呼び出した【フォレストウルフ】の攻撃力を上昇させる特殊能力も持っている。

 当然、俺の場の召喚獣よりも攻撃力は高いし、このままだと突破されてしまう。


「それじゃ、【グレーターウルフ】で【はらぺこオーク】を攻撃」


「まあ、そう来るわよね。でも、そう簡単には通さないわ。罠を発動、【闇の鎖】!」


 罠は一度仕掛けないと発動することができない分、強力な効果を持っているものも多い。まあ、今回発動したのは単純なもので、相手の攻撃力を下げるという罠だ。

 これにより【グレーターウルフ】より【はらぺこオーク】の方が攻撃力が高くなり、返り討ち。【グレーターウルフ】は倒されることになる。

 このように、強力な召喚獣を出されても罠を駆使すれば何とかなることも多い。かといって、罠だらけでは勝てないのでやはりバランスが重要だ。


「くそぉ、アリシア強いぞ」


「そりゃまあ、一応開発者の一人ですし」


 その後、結局【グレーターウルフ】を失った穴を埋めることが出来ず、私が普通に勝利した。

 まあ、完全初心者なサリアと違ってこちらは完全にルールを理解しているのだから当然と言える。

 開発者と言うのは嘘だけど、まあこの世界では開発者でも問題はないだろう。テトさんの情報収集能力をもってしても、未だにこの世界にトレーディングカードゲームと言うのは存在していないようだし。


「もう一回! もう一回やる!」


「興味を持ってくれたなら何より。それじゃあ、もうちょっとやりましょうか」


 負けたとはいえ、サリアは普通に筋は良さそうだ。アホっぽいと思っていたのが少し申し訳なくなる。

 何度か交戦コンタクトして、サリアもだんだん戦い方がわかってきたのか、普通にいい試合をする場面も多かったし、もっと深い部分まで知れば俺より強くなるかもしれない。

 一応、開発者として負けるのは少々癪だが、こんな風に楽しんでもらえるならそれに越したことはない。

 これなら大丈夫だろうと臨んだルール説明会はいい感じに成功を収め、何人かの貴族やその子供達は非常に興味を持ってくれて、発売を楽しみにしているというお言葉まで貰ってしまった。

 ハクが参加できなかったのは残念だったけど、まあ、いずれ参加できるようになるだろう。

 きちんと発売できた暁には、またハクと遊びたいものだ。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] サリアさん一応?人をまとめてた?から
[一言] これなんて遊戯☆?初期のエキスパートまんまで笑う
[良い点] 「サモナーに直接攻撃」 「ぐわー」←このサリアのセリフ^_^ノリノリで楽しそう♪ こんな素直なテストプレイヤーは開発者としてもめちゃくちゃ嬉しいでしょうね。 〈開発者として負けるのは少…
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