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第三百三十話:聖教勇者連盟の捜索隊

 今回から関西弁っぽい喋り方のキャラが出てきますが、作者は関西方面の出身ではないので適当です。ご了承ください。

 山を登っていた集団は全部で六人。女性一人と男性五人という比率の悪い構成だった。

 三人は神官っぽい格好をした三十代くらいの男性だったけど、他の三人はなんというか、奇抜な格好をしていた。

 ただ、魔力の量を見るとその三人は相当な魔力を有している事がわかる。恐らく、この人達は聖教勇者連盟の転生者っぽいね。

 転生者となると特殊な能力を持っているから少し警戒する必要があるけど、あんまり警戒しすぎても敵対行為になってしまうし、加減が難しいところ。

 というか、どうやって接触しようか。偶然山を登ってたら見つけましたじゃおかしいよなぁ。


「……そこ、誰かいる」


「なんやて? 魔物かいな?」


「……違う。多分、人間」


「ふーん。ま、とりあえず出てきてもらわなな」


 しばらく後をつけて考えあぐねていると、一人に気付かれてしまった。

 うーん、考えがまとまっていないけど仕方ない。私達はそのまま姿を現した。


「へぇ、可愛ええ子やなぁ。こんな危ない山にそないな小さな子連れて何しにきおったん?」


「まあ、ちょっと探し物を」


「ふーん。あ、うちはカエデって言うねん。よろしゅうな」


 メンバーの中で唯一の女性はやたらとなまった口調で挨拶してきた。

 なんだっけ、こういうの。関西弁だっけ? あまり聞いたことはないけど、どことなくコミュ力が高そうな気配がした。

 ただ、その格好は中々に攻めていて、今にもパンツが見えそうな超短いスカートにリボンやらフリルがたっぷりとあしらわれた可愛らしい服を着ていたり、極めつけは先端に星形の意匠が凝らされたステッキのようなものを持っている。

 魔法少女と言われれば納得しそうなそんな装いだ。割と奇抜なファッションがあるこの世界でもこの格好はかなり異質だと思う。というか、絶対寒いでしょあれ。ここ雪山だよ?


「私はハクと言います。こっちはお姉ちゃんのサフィ、それに世話役のエルです」


「ほうほう、もしかしてええとこのお嬢さんやったりするんか? ええなぁ、お近づきになりたいわぁ」


「カエデ、あまり調子に乗るな」


「えー、別にええやん。悪い子やなさそうやし」


「そういう問題ではない」


 割とフレンドリーに話しかけてくれるカエデさんとは対照的に、隣にいる背の低い男性はこちらを警戒しているようだ。

 ただ、その格好はなぜか猫耳のついたフードを目深にかぶった防寒着姿である。

 いや、雪山だし防寒着を着ているのは別にいいんだけど、こちらを警戒している姿と低い声に対して絵づらが可愛らしすぎる。

 これだとさっきから喋ってない黒ずくめ君の方がまともに見える。なんなんだろうこのメンバーは。


「ほれ、とりあえずマー君も挨拶しとき。失礼やで」


「マー君と呼ぶな!」


「あーはいはい。マー君は可愛ええなぁ」


「頭を撫でるな!」


 カエデさんはマー君と呼んだ猫耳フードの男の子をニコニコ顔で撫でている。

 なんか、反抗期の弟をあやしている姉って感じだ。いや、からかって楽しんでるって言った方がいいかな?

 まあともかく、この人達を見ているとなんだか力が抜けてくる。本当に転生者なんだろうか。


「ったく……俺はマルスだ。言っておくが、まだお前達を信用したわけではないからな」


「はい、よくできましたぁ。ミー君も挨拶な?」


「……ミリアム。よろしく」


「うんうん、ミー君もよくできましたぁ」


 その後、カエデさんに促されて後ろにいた神官っぽい人三人も名乗りを上げる。

 神官っぽいって言ったけど、本当に神官らしい。セフィリア聖教国は宗教国家だから、不思議ではないか。


「さて、さっき探し物がどうとか言っとったけど、なに探しとるん?」


「んー……人、ですかね」


「人かぁ。実はな、うちらも人を探しとってな。この山に逃げ込んだらしいんやけど、全然見つからんねん」


 話を聞くと、やはり山に逃げ込んだ鳥獣人を探しに来たらしい。

 カエデさん達は最近になって編成されたチームらしく、今までのチームが調べ上げた内容を元に山頂付近を目指しているらしい。

 お兄ちゃん達が移動していないという前提になるけど、そういうことなら私達が調べる場所も少しは絞り込めるかもしれない。

 山頂付近となると、あの反応だったのかな。少し心当たりがある。


「その人達を見つけたらどうするんですか?」


「なんかな? この人らが言うには奴らは世界に仇なす敵だから一人残らず殺せっちゅうねん。まあ、うちは信じとらんけど」


「カエデ様、これは上からの命令です」


「そうは言っても、実際にその人らが何かしたわけちゃうんやろ? ただその種族ってだけで皆殺しにするのはうち違うと思うんや」


「そうやって甘いことを言っているから世界から脅威がなくならないのです。聖教勇者連盟の一員としてその務めを果たしてください」


「そうだぞカエデ。敵の言うことなど耳を傾ける必要はない」


「んー……」


 どうやらカエデさんは竜人を殺すことに反対らしい。

 聖教勇者連盟に所属している人は皆、竜や竜人は世界の敵だ、悪い奴だ、絶対に殺すべきだと教え込まれているはずだが、それを鵜呑みにせずに考えられるだけの意思があるのは素晴らしい。

 対して、マルスさんは完全に敵だと信じているようで、不機嫌そうに顔を顰めていた。

 ミリアムさんは……どっちだかわからない。フードを目深にかぶっていて表情があまり見えないし、あんまり喋らないからね。まあ、カエデさんに懐いているようだから多分カエデさん寄り、なのかな。


「それより貴様ら、人を探していると言ったが、まさか翡翠色の髪の男ではないだろうな」


「知ってるんですか?」


「ああ。竜人どもを擁護し、俺達に敵意を向けた愚かな人間だ」


 どうやらお兄ちゃんの事を知っているらしい。

 まあ、お兄ちゃんが鳥獣人達を逃がしたのだから知っていて当然ではあるが、この言い方から察するにお兄ちゃんも殺害対象に入っていそうだな。

 うーん、流石にそれをやるなら私達も相応の対応をせざるを得ないんだけど、どうしようかな。前みたいにトラウマを作っちゃうのは可哀そうだし、何か別の方法で無力化出来たらいいんだけど。


「もし、貴様らが捜しているのがその男だとするなら諦めろ。奴は死ななくてはならない」


「それは困るんですが……」


「そちらの事情など知ったことではない。これは世界を守る聖教勇者連盟の決定だ。どこの馬の骨とも知れぬただの令嬢に指図されるいわれはない」


「ちょい待ち、それは流石に可哀そうやないんか?」


 マルスさんのあまりの発言にカエデさんが食って掛かる。

 明らかに不満顔だし、こうして殲滅チームに選ばれたのが不思議なくらい情に溢れた人だ。

 いや、だからこそかな? 無意味に人が殺されるのが嫌だから、それを止めるために志願したって可能性もあるな。

 どちらにしろ、カエデさんはいい人そうだ。カエデさんの言葉を借りるわけじゃないけど、少しお近づきになりたいかも。


「カエデ、世界の安全を守るのとただの令嬢の願い、どっちが大事かわかるだろ」


「そりゃ、世界の安全は大事やけど、いきなり知り合いを殺すって言われて納得する人はおらんやろ。せめてオブラートに包むとか、何かしら気の利いた言葉でもかけてやるんが男やないか?」


「どうせ殺すのだから関係ないだろう」


「そんなわけないやろ。少なくともうちは間違ってると思うで」


 その後もギャーギャー言い合う二人。

 私としてはカエデさんに勝って欲しいけど、カエデさん以外はみんな殺す方に賛成な様子。ミリアムさんはわからないけど。

 明らかに旗色が悪く、結局カエデさんはマルスさんを言い負かすことはできなかった。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり頭緩そうな集団だなぁ
[気になる点] 世界を守るためならホロコーストもやむなし!(´Д` )転生者が現代日本人のメンタルでこんなスローガン掲げる組織に加入するって僕ちゃん信じらんない、例えば前世の恋人を探していて聖教勇者連…
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