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幕間:娯楽を作ろう2

 主人公の友達の転生者、アリシアの視点です。

 カードゲームを作るというのは中々に面白い案ではあった。

 娯楽として浸透できればそれをきっかけとした話題作りもできるだろうし、特に学園においては友達作りにも一役買ってくれることだろう。

 俺は来年には学園に入学することになっているから、カードゲームを通じて仲良くなれたらいいなって言う打算もある。

 だからカードを作ること自体は別に反対ではない。しかし、実際に作ろうとなると色々な問題が出てきた。


「まず最初にどれくらいの種類のカードを出すかだよな」


「そうだね。いきなり何百種類と出せるわけじゃないし」


 俺が知っている限りではそのカード群を集めてデッキを組めば強いと言われるいわゆるテーマが100種類以上あったわけだが、それらすべてを最初から導入するなんてことは絶対にできない。

 単純に覚えていないし、覚えていたとしても全種類描くだけでも数か月以上の時間がかかってしまうし、何よりいきなり全部出してしまったらその後売るものがなくなってしまう。

 こういうのはパック販売するものであり、あまりに種類が多すぎれば目当てのカードがめちゃくちゃ出にくいという事態にも繋がる。だから、一パックに収録する種類としてはせいぜい30~50種類程度だと思う。

 そして、そのパックの中にいくつかのテーマのカードを入れて買い手にそれらのテーマデッキを作らせ、次のパックでその強化パーツを出す、みたいな売り方をすれば多分儲かるんじゃないかなと思う。

 まあ、最初は人を増やすためにもある程度まとまったテーマカードを出す必要があるかもしれないが……。

 あるいは、単純に簡単なルールを覚えてもらうためにもテーマとか関係なく適当な召喚獣と支援魔法を出すだけでもいいかもしれない。

 俺はあまり知らないんだが、ハクによれば『サモナーズウォー』は初期の頃はテーマなどはあまり存在せず、単純に召喚獣同士の殴り合いだったらしい。

 今でこそ強力な支援魔法や罠が出ているが、当時はデッキすべてが召喚獣という人も少なくなかったんだとか。

 このゲームは召喚獣を用いて相手の召喚獣を討ち取ったりサモナー自身を攻撃したりしてライフと呼ばれるいわゆるHPを減らしていき、先に相手のライフを0にした方が勝ちというルールなので、単純に遊ぶだけだったら召喚獣同士で殴り合うだけでも遊べるのだ。

 まあ、それだと単純に攻撃力の高い召喚獣を出した方が勝ちなのであまり面白くはなさそうだけど。いや、それを何とかするための支援魔法だけどさ。


「初めからテーマを決めるんだったら三、四種類くらいが妥当かな?」


「まあ、そのくらいか。何のテーマを出すかはともかく、とりあえずそれくらいで考えてみるか」


 テーマデッキはそのテーマの動きを理解していないとうまく使いこなせない。だから、初心者にとっては結構難しそうではあるが、あまりに単純すぎるとそれはそれで流行らない気もするから難しいところだ。

 前世では漫画やらアニメやらが人気で、その人気によって売れていた背景があるからそれがないこの世界でやろうと思ったら地道な売り込みが必要となる。

 多分、ルールの説明とかも含めて実際にやって見せる必要があるだろうなぁ。で、その役目はきっと俺達になる。

 それは別にいいんだけど、やっぱり大変そうだなぁと思った。


「じゃあルールの方だけど、ノーマルルールでいいのかな?」


「多分? 初めからテーマデッキを出すならビギナールールだと簡単すぎるし」


 サモナーが召喚獣を召喚するためにはマナが必要になる。このマナはターンごとにサモナーが持っている権利のことで、一ターンに一回召喚するだけのマナを持つことになる。

 そして、高レベルの召喚獣ほど召喚に必要なコストが高くなり、そのままでは召喚することはできない。既に別の召喚獣を場に出している場合に、召喚されている召喚獣を一定数生贄にすることで足りない分を補い、ようやく召喚することができる。これがノーマルルール。

 ビギナールールって言うのはこの召喚に必要なマナが不要になり、高レベルの召喚獣でも召喚獣を生贄にすることなく召喚することが出来るというルールだ。要は、強い召喚獣もバンバン出せるってことだ。

 他にもいくつかルールはあるけど、重要なのはだいたいそこだけ。ただ、ノーマルルールにするとなるとやはり説明するのが難しくなりそうだ。


「ルール本の作成や実際に遊んでみての説明なんかも必要だよな。これ、三人でどうにかなると思うか?」


「ならないと思う」


 広めるにしてもたった三人では広めるのは難しいだろう。やるなら、友達に遊び方を教えて布教してもらうくらいしか思いつかないが、果たしてそんなのでうまくいくんだろうか。

 最悪ルールが浸透しなくてもコレクション要素として絵の価値のみで売れるかもしれないけど、それじゃ本末転倒だしな。

 テトさんは完全に売る気満々みたいだけど、こんな調子で一体どうやって売る気なんだか。


「とりあえず、ルールに関しては書き起こしておこうか。で、簡単にできそうな部分は変えるってことで」


「そうだな。やれるところからやっていくか」


 一応、全く売れなかったとしても俺達には需要がある。まあ、自分で作るものだからカードの特殊効果も考え放題なのであまり面白くないかもしれないが、前世のカードを再現する分にはまあそこそこ楽しめるだろう。

 損をするのはテトさんだけだ。


「うまくいけばいいがなぁ……」


 先行きに不安を感じながら、娯楽を求めて行動を開始するのだった。


 あれから何度か打ち合わせを行い、ルールの整備や販売の方法、広め方などを話し合い、ひとまずだいたいは形になってきた。

 テトさんもなんだか張り切っているようで、一週間後には要望した通りにテーマのカードを作ってきた。

 まあ、作ったと言っても絵を描いた紙をカットして大きさを均一にしただけだからぺらっぺらで安定感がないし、カード特有の硬さというものがない。

 一応、ちゃんとしたカードにする算段は付けているようだが、ひとまずは現状のルールで遊べるかどうかを確認するために急ぎサンプルを仕上げたとのことだった。

 加工法も考えないとだよなぁ。前世ではカードにはレアリティというのもがあって、高レアのものほどキラキラしたりして綺麗だった。だから、そういう加工をこちらでも施したいところ。


「じゃあ、やってみるよ?」


「ああ。……久々だからちょっと楽しみだな」


 テトさんに用意してもらったのはデッキ二つ分のカード。つまり、これからハクと対戦してルールに不備がないかを調べるわけだ。

 ちょっと齧った程度とはいえ俺もはまったことがあるゲーム。それが久しぶりに遊べるとなると少し興奮する。


「あ、あれやっておく?」


「ああ、あれか。まあ、せっかくだし?」


「おっけー。それじゃあ……」


「「交戦コンタクト!」」


 タイミングを合わせてお決まりの掛け声を言い合う。

 『サモナーズウォー』はその名の通り召喚士同士が戦争を行うという設定である。この掛け声は、サモナー同士が対面し、交戦状態に入ったからそう呼ぶらしい。こういう掛け声があるとちょっとテンション上がるよな。

 その後、俺達は時間も忘れて遊びに勤しんだ。途中からルールの確認とかどうでもよくなってすっかりはまってしまったのだ。

 結果としては五分五分と言ったところ。デッキパワーで言えばこちらの方が上なのに、ハクはやたらとプレイングがうまくて苦戦を強いられた。

 ハクとの戦いだけでもこれだけ盛り上がったのだから、他の人も参加したらより楽しくなるだろうなぁ。

 そんなことを夢見ながら、その日は満足して眠りに就いた。

 感想、誤字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] カードゲームは奥が深いですからね。 印刷技術がおそらく拙い(もしくはほぼ無い)異世界で数千枚以上の同じカードの複写をどうやるのかが鍵かな。 モンスターカード、魔法カード、アイテムカード、…
[一言] ガチでカードゲーム作成にハマる転生者たち(´Д` )てっきりこの話は前話で切り上げ次の話になって行くのかと思っていたら、アリシアお嬢さん視点で語られるカードゲームのその後と熱いテストプレイの…
[一言] 流石中身男の子、白熱してる( ˘ω˘ )
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