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第二百七十五話:強化案

「まず、一番簡単なのは宝石の大型化ですね」


 宝石魔法を強化するための策の一つとして、一番簡単なのは使う宝石を大きくすることだ。

 魔石と同じく、宝石も大きい方がより多くの魔力を内包している。そして、魔力が多くなればそれだけ魔法の威力も上がる。

 ただ、もちろん宝石は大きくなれば値段も上がる。それは小粒の宝石の値段の倍では利かないだろう。小粒の宝石100個を入手できる金額で、そこそこの効果が見込める大きな宝石を買う場合、その時の相場にもよるが恐らく十個程度。一発ずつ放てば、一応十回分にはなる。


「まだ宝石を買うお金は残ってる?」


「い、いや、全部予備の宝石につぎ込んだから生活費以外の金はもうない。だから、宝石の大型化は無理だ」


 流石に学園の授業では宝石魔法は使っていないようだが、今回対抗試合に参加するにあたって自由にできるお金をすべて小粒の宝石に回してしまったらしく、今持っているもので全部なのだという。

 一応、数だけなら今まで溜めた分もあってかなりの数あるらしいのだが、小粒の宝石をいくら合わせたところで大粒の宝石にはならない。


「うーん、それなら宝石は私が用意してみます」


「は? 平民のお前がどうやって」


「いや、ちょうど宝石の産地を見つけたもので、在庫は割とあるんです」


 そう言って【ストレージ】から適当に宝石を取り出す。

 これは竜の谷に行った時にホムラと一緒に冒険したダンジョンで手に入れたものだ。本当は全部ホムラが倒した宝石ゴーレムから出てきたものだけど、ホムラは宝石には興味ないそうなので全部貰ってきたのだ。

 ルビー、サファイア、エメラルド、各種宝石がざっと数百キロはあるだろうか。カットしていないからかなり大きいけど、適当な大きさにカットしてやれば宝石は宝石。ちゃんと宝石魔法は使えるはず。

 魔力の内包量に関しても、ゴーレムになっていたほどだから大量に内包しているだろうしね。


「こ、こんな宝石の塊を……」


「とりあえず私がお金貸そうかなと思ってたけど、ハクちゃん、なんでそんな都合よく持ってるの……?」


 アッドさんは口をあんぐりと開けて驚いている。テトさんに至ってはなんか失笑していた。

 まあ、宝石に関しては完全に偶然だ。ミスリルを買ったせいで割と懐が寂しくなっていたから後で売ろうとしていたものだけど、ここで役に立つなら使わない手はない。

 そもそも、売るのならミスリル鉱石が手に入ったしね。そっちの方がよっぽど高く売れる。


「これだけあればとりあえず足りますよね?」


「あ、ああ……だがいいのか? 流石にここまでの量だと俺の小遣いでは買いきれんぞ」


「大丈夫ですよ。また取りに行けばいいだけですし」


 まあ、出来ればお金貰えた方が嬉しいけど、まだまだ在庫はある。どうせこんなにあっても売り切れないし、そこまでけちけちする必要もないだろう。

 カットに関しては後で私かエルが裁断するとして、これで宝石の大型化に関しては問題はクリアされた。


「さて、次は威力の底上げですね」


「うん? それは宝石の大型化で解決したんじゃないか?」


「いえ、それだとまだ不安があるので」


 大型化と言っても、手に持てないほどの大きさにするわけにもいかない。携帯の容易さも考えなければならないし、せいぜい拳大くらいが限度だろう。

 以前試したことがあるけど、魔石の場合は拳大ほどの大きさの場合、出せる出力はおおよそ下級上位くらい。魔石の魔力のみで放つ魔法としては中々の威力だ。

 宝石の場合はさらに魔力伝導率がいいから中級下位くらいまでは上がるだろうか。もちろん、魔法の触媒として利用し、ちゃんと自分の魔力も消費すれば威力はもう少し上がる。

 相手が下級魔法を放ってくる前提で考えるとこれでも十分ではあるが、相手はエルフ。一般的に魔力量が多いとされている種族だ。いくら学生とはいえ、所有する魔力量が多ければそれだけ使える魔力も増える。

 人間基準ではほとんどできないことでもエルフならば可能かもしれない。例えば、初手から中級魔法を連打してくるとか。

 初手の攻撃の威力は中々大事だ。そこで撃ち負ければ防戦一方になることもある。だから、連打とまではいかなくとも初手だけでも中級魔法を放ってくる可能性は高い。

 それに打ち勝てるほどの出力を出すのは宝石の力だけでは無理だ。だから、宝石にある一手間を加えることで威力の底上げを図る。


「なので、宝石に刻印魔法を施したいと思います」


「刻印魔法? それって、武器とか防具にたまに刻むあれ?」


「はい」


 刻印魔法は本来武器や防具に刻み込むことで魔法の効果を付与し、簡単に発動できるようにしたものだ。

 刻まれた魔法陣に魔力を流せば即座にそれが起動し、切れ味の強化や防御力の上昇など様々な効果を発揮してくれる。

 これは魔力さえ持っていれば魔法が使えない人でも発動可能で、武器や防具の強化を図れることから刻印魔法を施すことが出来る刻印師は国でも結構重宝されている。

 だけど、この刻印魔法。魔法陣を刻み込むという使い方の関係上エンチャント系魔法以外でも使うことが出来る。以前私が闘技大会でやったのはそれの応用だ。

 もちろん、魔法を発動した際にその威力を高める、なんて刻印魔法も容易く実現することができる。

 まあ、どうやらそういう刻印魔法はあまり知られていないようだけど。


「宝石に刻印魔法を刻むなんて聞いたことがないですけど」


「そうでもないですよ? 大昔には魔石に古代文字を刻んで特別な効果を発揮するようにしたルーン魔石というものも存在したらしいですし」


 これは学園の図書館で得た知識だ。ただ、古代文字の解読は結構進んでいるものの、同じように魔石に古代文字を刻んでも何の効果も表れないことから、古代の特殊な技術が用いられているのではと言われているらしい。

 それを再現した、というと大げさだけど、刻印魔法の応用をすれば宝石でも十分な威力を出すことが可能だ。


「問題は刻印魔法を刻むことが出来る人が少ないって点ですけどね」


 刻印魔法はかなり稀有な職業だ。国で保護されているほどで、人数はかなり少ない。

 一品物の武器や防具に刻印するのならともかく、消耗品の宝石に大量に刻印するとなるとかなり時間がかかるだろう。金額だってかなり高いし、今から刻印師に依頼したところでどうあがいても対抗試合には間に合わない。

 とすると、自力で刻み込むしかないけど、刻印魔法ができるのは先生であるアンジェリカ先生と、その授業を受けている私達。その中でも、シルヴィアさんとアーシェさんはまだまだ初心者だし、サリアは描くのは早いけど造りは雑で望んだ効果になる可能性は低い。アンジェリカ先生も忙しいだろう、頼むのは気が引ける。

 とすると、残りは私と期待の新星として期待されているサルサーク君くらいしかいない。


「まあ、時間もないですし後で頼んでみます。刻印魔法の事だったら、多分受けてくれると思いますし」


 あれから何度か授業を共にしているが、あまり進展はない。

 というか、向こうが話すのが苦手すぎて話しかけにくい。話しかけても逃げられることがあるし。

 だから少し不安ではあるけど、まあ何とかなるだろう。


「後は大きくなった宝石の扱いを練習すれば、かなり強くなると思いますよ」


「なるほどな。まあ、小粒の宝石をばらまくのも大きな宝石一つを投げつけるのも大して変わらないだろう。投擲には自信がある、任せておけ」


 ふぅ、これでアッドさんの強化はいいだろう。

 後は魔物討伐とダンジョン探索の対策もしなくちゃか、やることは多いね。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 宝石の原石とはい億に届く量をさりげなくばらまくハクwww
[一言] 使い捨てだからメッチャもったいなく感じる( ˘ω˘ )
[良い点] 貴重な宝石がハクさんにかかると農家の知り合いが芋を手土産に渡してくるレベルの話になる不条理さ(´ω`)これにはアダマンタイトの件を知らないサリアもびっくりしてますでしょう。 [気になる点]…
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