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第三十話:久しぶりのポーション作り

 シャーリーさんに依頼を選んでもらい、それをこなすこと数日。体の衰えも特になく、完全に元の調子を取り戻したと思う。

 Cランクの依頼は大抵が討伐依頼で、常時依頼の時と比べるとだいぶ収入が増えた。依頼達成の分の報酬もそこそこ高いし、ランクアップによって素材の買取値も高くなっているから最近は結構懐が温かい。

 ただ、おかげで森に行くことが少なくなり、ポーション作りが全然できていないのがネック。

 まあ、ポーション作りは完全に趣味だし、魔法で代用できるからやる必要はないと言えばないんだけど、やっぱり一度作り始めた以上は突き詰めたいよね。たまに寝る前にあれをやったらどうなるだろうとか思いつくと眠れなくなる時があるし。


 そういえば、昨日ロニールさんが会いに来たんだよね。わざわざギルドの前で待っていたから何事かと思ったら、街道を開通してくれてありがとうとお礼を言いに来たらしい。

 あれからオーガが出た原因を調べるために何度か調査が行われたみたいだけど、結局他にオーガは発見されず、街道の魔物も一掃されたということで封鎖が解除されたらしい。

 どこで私の事を聞いたのか、私がオーガを倒したことも知っていた。流石商人、耳が早いね。

 無事に街道も通れるようになったということでこの町を旅立つらしい。短い間だったけど、色々お世話になった。お礼を込めて持っていたポーションを再びあげると、大喜びで受け取ってくれた。

 結局護衛は再びリュークさんに頼んだらしい。リュークさん、討伐依頼の時は見当たらなかったけど、どこに行ってたんだろう?

 医務室で療養してた時にはお見舞いに来てくれたんだけどね。

 ともあれ、ロニールさんは旅立って行った。またどこかで会えるといいね。


 さて、今日は久しぶりに依頼は受けずにポーション作りでもしようかと思う。一度考え付いたら気になりすぎて他の事が手につかない。

 いつも通り早めに門を出て森の中の泉へと向かう。このルートも久しぶりだ。そして、相変わらず魔物が多い。

 探知魔法に引っ掛かった連中に水の刃を打ち込んでいく。この森もだいぶ魔物多いよね。毎日来ても毎回遭遇してたから、もう慣れてしまったけど。

 無事に泉まで着くと、泉に向かって飛び出すアリアを横目にポーション作りに取り掛かる。

 薬草は道中で摘んでおいた。もうルーチンワークと化していて気が付いたら取っていたからびっくりしたよね。やっぱり日課って大事だ。

 酒場で買った中位ポーションを見本に調合を進めていく。

 材料自体は難しいものではない。薬草の他にスタミナ回復効果のある茸を使うだけだ。ただ、組み合わせるタイミングが難しい。

 【鑑定】を使いながらでも思った効果がなかなか発現しない。タイミングが悪いのか、それとも量かな? とにかく、トライ&エラーで何度も試していく。

 途中、魔物の襲撃に遭いながらも調合を進めて行き、とうとう夕方になってしまった。

 でも、成果はあったと思う。私の手には微量ながらも中位ポーションが入った小瓶が握られている。

 きっかけはとても単純だった。量を少しずつ変え、投入するタイミングを変え、色々試行錯誤しているうちに偶然見つけた配分。

 今まではどうやら水を入れすぎていたらしい。それで効果が発現しなかったようだ。水を少なめにして、ようやくできたのがこの数滴。

 嵩増ししたいところだけど、まだ甘いのかこれ以上薄めると低位ポーション程度の効果になってしまう。まだ完璧な配分というわけではなさそうだ。

 でも、これできっかけはできた。後は微調整を続けていけばいずれ中位ポーションもできるようになるだろう。

 ふぅ、久しぶりにポーション作りに来た甲斐があったね。


 もう少し作りたいところだけど、流石にそろそろ帰らないと暗くなってしまう。ささっと片づけをした後、帰路についた。

 森を抜けると、子供達が薬草採取をしているのが目に入った。そろそろ帰るのか、皆帰り支度をしているのがわかる。

 ああ、そう言えばこの光景も懐かしいね。ラルス君は元気にしてるかな?

 視線を滑らせていると、少し小さい女の子――確か、シアンちゃんだっけ? を手伝うラルス君と目が合った。

 ラルス君は目を丸くして驚いたような表情を浮かべると、私の方に走り寄ってくる。


「おま! お前、無事だったか!」


 ぶつかるんじゃないかというくらいもの凄い勢いで迫ってきたので思わず後退ると、目の前でこけた。

 うわぁ、痛そう。

 声をかけようとすると、がばっと起き上がって私の肩を掴んできた。結構力が強く、指が肩に沈み込んでいく。


「あ、あの……」


「あれから何日経ってると思ってる!? 心配したんだぞ!」


 子供の力とは言え、地味に痛いので抗議の声でも上げようと思ったら、それよりも迫真に迫る表情で言い返されてしまった。

 どうやら、討伐依頼の日からずっと姿を現さなかった私を心配してくれていたらしい。

 まあ、確かに数日は医務室に籠ってたし、復帰した後も討伐依頼ばかりで全然森に行かなかったりで来る機会はなかったけれども。

 泣きそうになってる顔を見て怒る気など失せてしまった。


「すいません。なかなか来られなくて」


「怪我したって聞いたぞ! 大丈夫なのか?」


「はい、それはもう大丈夫です」


「よかった……」


「あ、ハクちゃんだ!」


 心底ほっとした様子で胸を撫で下ろしている。

 いつの間に駆けつけたのか、他の子供達も集まり、口々に私の無事を祝ってくれた。

 帰り道にちょくちょく会うくらいの仲だけど、こうして心配してくれている人がいるっていうのはちょっと嬉しいね。


「ありがとうございます。私は大丈夫ですから、ご心配をおかけしました」


「い、今までどこに行ってたんだよ」


「討伐依頼の方を受けていました」


「はあ!? い、いや、お前なら受けられるだろうけど……」


 もごもごと尻すぼみになっていく。なんだか複雑な表情だ。

 まあ、ラルス君は討伐依頼は受けない慎重派だからね。気持ちはわかる。でも、ランク上がっちゃったからこれしか受けられないんだよ。


「ランクが上がったので、常時依頼が受けられなくなってしまって仕方なく」


「ランク上がったのか?」


「はい、Cランクに」


「Cランク!? ……やっぱりお前すげぇな」


 Cランクというのは私もびっくりしてる。というか、ランクアップするにしても順当にDランクでよかったのでは? とか思うけどね。無駄に上がってしまったせいで常時依頼を受けづらくなってしまった。

 デメリットばかりでもないけど、唐突に上がりすぎてちょっと困惑する。

 ギルド証を見せて欲しいという子供がいたので見せてあげると、みんな口々に凄い凄い言っていた。

 この辺の子供達はみんなラルス君がまとめているから、たぶんみんなFランクか、あってもEランクだろうし、Cランクは珍しいのだろう。


「俺なんかが守らなくても、お前は一人でやっていけるんだな……」


「え?」


「何でもねぇ! とにかく、無事でよかった」


 よく聞き取れなかったが、とにかく心配してくれていたのはわかった。

 もう少し早く来ればよかったかな。すっかり忘れていたよ。


 その後は一緒に町へと帰り、ギルドで分かれて宿に帰った。

 多分これで一章終了になると思います。次は少し幕間の物語でも書こうかと思っています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 前世での研究員時代もこんなトライ&エラーを嬉々として繰り返してたんでしょうね、以前かなりハードルが高いと聞かされていた中級ポーションをついに独自に調合しましたよ(^ ^)街中の薬師ギルドが…
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