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第二百十七話:勝ち上がり

 第二試合、第三試合、第四試合とルナさんの戦いを観戦していたが、大体はワンパターンな戦法だった。

 序盤は相手の攻撃を避けることに専念し、相手が焦れて無理な攻撃を仕掛けようとしてきたタイミングで刀を抜き、相手の武器を破壊する。

 それだけの戦法だが、それがとにかく強い。

 闘技大会では一対一というルールのため魔術師が少ない。なので、基本的には武器を持って近接戦をすることになる。そんな中、武器を破壊されてしまったらほとんどの人は戦う術を持たず、そのまま負けることになる。

 中には己の肉体のみを武器に戦う武闘家もいないことはないが、武器あり魔法ありの大会ではその存在はかなりレアだった。

 結局、ルナさんはあっさりと本選に出場。私はその後を追う形になった。

 まあ、本選に出場するのは想定内だし、別に問題はない。武器破壊が強いということはわかったが、私は魔術師。武器と言えるものはロッドくらいしかなく、それもなくても全然問題ないものだ。

 だから、たとえ武器を破壊してこようと大丈夫ではある。問題なのは、あの特技が武器以外にも通用するのかどうかだ。

 例えば、あれが内部にダメージを与える鎧通しみたいなものだったとしたら、身体強化魔法による防御が機能しない可能性がある。

 基本的に避けるつもりではあるけど、運悪く食らうことになった場合一撃で戦闘不能になる可能性もある。いくら竜化の恩恵で身体能力が上がっているとはいっても油断はできない。

 さて、どうやって対策したものか。


「ハク、まずは本選進出おめでとう!」


 二日間の予選を終え、今日から本選となる。

 対戦表を確認してみたが、ルナさんとは見事にかみ合わず、当たるのは決勝ということになった。

 応援に来てくれたお姉ちゃん達が祝福してくれる。でも、ここまでは予定通りだ。

 決勝戦まで勝負はお預けとなってしまったけど、それは仕方ない。こればかりは対戦表の運次第だから。


「それにしても、『流星』のルナさんが参加するなんてね」


「お姉ちゃん、ルナさんのこと知ってるの?」


「まあ、一応ね。拠点が違うから詳しいわけではないけど」


 彼らは一応オルフェス王国を拠点にしてはいるものの所属としては聖教勇者連盟があるセフィリア聖教国がホームとなっている。

 立ち寄る場所も王都などの人が集まる場所ではなく、貧しい村々ばかりを転々としているのでお姉ちゃんも知ってはいるが会うのは初めてらしい。

 お姉ちゃんが知っていたのは、ルナさんの二つ名が『剣閃』だということくらい。普段はあまり動かず、ここぞというところで刀を一太刀振るい、一撃で相手を倒すところからそういう名がついているらしい。


「あの人、ハクについて色々聞いてきたわ」


「俺のところにも来ましたよ。色々探っているようで」


 アリシアとサクさんが口々に言う。

 私のことについて調べられていたのは予想通りだ。それを見越して私の知り合いには竜についての情報は話さないように頼んでおいたから問題はないけどね。

 でも、それ以外の、例えばオーガの軍勢を倒したとかそういう情報は普通に話しただろうから私の実力はある程度知っているはず。

 それでいてあの余裕だ。何か絶対に勝てる秘策があるのかもしれない。

 ただ単に魔術師が相手だから一対一なら負けないと思っているなら楽なんだけどね。


「ハクお嬢様、どうぞあの忌々しい人間に裁きの鉄槌をくだして下さいませ」


「あはは……まあ、手は抜かないから安心して」


 決闘の件に関しては誰にも伝えていない。でも、エルは元々ルナさん達が気に入らないようで、ちょくちょく私に潰していいかと尋ねてくる。

 もうあんな頑なな態度だったら別にいいんじゃないかなとも思ったけど、それを理由に戦闘に持ち込まれても困るからエルには我慢してもらっている。

 こうして公式に戦うことが出来る舞台が巡ってきたことによってエルも嬉しいのだろう。私も負けるつもりは毛頭ないので気持ちは同じだ。


「あ、そろそろ始まるみたいだよ」


「ハク、頑張ってね」


「うん。行ってきます」


 予選ではほぼ不戦勝と言ってもいいくらいの散々な試合ばかりだったが、流石に本選に進出するだけの実力を持った人ならばそんな無様な真似はしないらしい。

 私の最初の相手は鎧に身を包んだ女性。装備からして恐らく騎士団の人だ。

 女性騎士は魔術師タイプの人が多いんだけど、この人は剣を装備している。バリバリの近接要員のようだ。


「ハク様、今日は勝たせていただきます」


 試合前に礼を取り、宣戦布告してくる。

 私はこの人とは面識はないんだけど、私は騎士団から嫌われているようだから多分その繋がりだろう。

 ちょっとサリアと仲良くしてるだけなのにね。いい加減イメージを払拭してもらいたいところだ。

 軽く会釈を返し、いざ試合。開始の鐘の音を合図に、一気に畳みかけることにした。

 メインで使用するのは前回に引き続き水。これが一番得意だし、実力を隠す意味でも一つの属性に絞った方がいいだろうという判断だ。

 即座に展開された水の矢は相手を取り囲むように位置取り、次の瞬間には中心にいる相手目掛けて発射される。

 魔法の起点となる場所は基本的に自分の近くであることが多いが、意識すれば好きな場所に展開することが出来る。このように、初めから相手を包囲するように展開することも可能なのだ。

 もちろん、普通はこんなにたくさん展開できないけどね。有り余る魔力を使ってのごり押しによる産物だ。

 魔力を無駄遣いしていいのかって? 決勝戦は明日だし、まだ魔石は一つも使っていないから問題はない。使うのは明日、ルナさんと戦う時だ。

 360度全方位から迫りくる攻撃に剣一本で対処できる人はそういない。案の定、どう対応していいかわからずに幾本もの矢が突き刺さっていく。

 もちろん、非殺傷設定だから実際に刺さることはないけど、初速が早いこともあって威力は中々。足を止めるには十分だ。

 そして、そうやって足を止めていれば攻撃をするのは簡単。相手が態勢を立て直すころには、私の水の剣が喉元を捉えている。


「勝負あり、でいいかな?」


「……参りました」


 順調に一本を勝ち取り、準々決勝へと進出する。

 続くルナさんの試合はやはりというか同じように武器破壊で終了。

 どうでもいいけど、冒険者からしたら武器を壊されるのって相当な痛手なのではないだろうか。わざとやっているのだとしたら慈悲がない。

 まあ、私がルナさん以外興味ないのと同じように向こうも私以外は興味がないのかもしれない。手っ取り早く勝てる方法を取っているだけで、本来の戦い方は違うのかもしれないしね。

 決勝は明日。しっかりと勝ってエルから手を引かせてやろう。

 準々決勝は特に見所もなく終了し、この日は終わった。

 ……そういえば、セシルさん達を見なかったけど、どこに行っているのだろうか? てっきり、ルナさんの応援に来るのかと思っていたんだけど。

 今回の戦いはルナさんの独断だから来ないとか? まあ、私からしたら別に来ようが来まいがどっちでもいいんだけど。

 若干そのことが引っ掛かりつつも些事だと考え、その日は帰宅することになった。

 学園の友達や道場の弟子達、そしてなぜか冒険者ギルドの冒険者達など様々な声援を胸に私は明日の決勝戦に集中することにした。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ハクさんがどんな作戦を立ててるか楽しみです
[気になる点] 出て来てないけどアルト王子もハクさん応援してんのかなぁ?(´ω`)
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