表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
231/1553

第二百話:やってきたパーティ

 本編でも二百話達成です。

「エルに会いたい人、ですか?」


「ええ。先程王城から使者の人が参られて。だから、放課後に向かってくれるよう伝えてもらえるかしら?」


 錬金術の授業の助手を務めるため準備室で色々準備していると、クラン先生にそう告げられた。

 エルについては王様が直々に学園への編入を許可してくれ、私と同じBクラスに入れるように取り計らってくれた。もちろん、竜という一般人からしたら危険な存在でもあるため二日に一度くらいのペースで報告を行っているらしいのだけど、これまでは何か言われるようなことはなかった。

 私から見てもエルは非常にうまく人間社会に溶け込んでいて、むしろ溶け込みすぎて私の方が浮いているくらいだし、特に問題があるようには見えない。

 でも、今回わざわざ呼び出すということは、何かやってしまったのだろうか?


「それは構いませんけど、エル、何かやっちゃったんですか?」


「そういうわけではないみたいだけど。ただ、エルさんに会いたいっていう人がセフィリア聖教国の方から参られたとかなんとか」


 セフィリア聖教国? それって確か、勇者召喚をしたっていう別大陸の国だよね。

 ……なんだか嫌な予感がする。まさか、エルのことを竜だと知って討伐に来たとかじゃないよね?

 セフィリア聖教国が有する聖教勇者連盟は700年前の戦争で魔王に加担した竜を酷く恨んでいるという話もあるし、もし正体が知れていたらそう考えてもおかしくはない。

 なんかエルはここに来るまでにいろんな国を通過してきたらしいし、その足跡を辿られたとかじゃないだろうな。

 とにかく、その人たちとエルを合わせるのは得策じゃない気がする。


「それって、絶対会わなければいけないものですか?」


「それはそうでしょうね。陛下からの招集だし」


 そりゃそうか。大怪我して動けないだとかやむにやまれぬ事情があるならともかく、普通は王様からの招集を断ることなんてできない。

 でも、王様はエルや私のことについては口外しないと言っていたし、エルのことを疑っているのだとしても確信はしていなさそう?

 いや、わざわざ王様に召集を掛けさせているのだからある程度の確信は持っているのか。というか、王様に竜の疑いがあるとはいえ一介の学生を呼び出させるって職権乱用もいいとこだと思うけど。

 うーん、どうしよう。仮にエルが竜だとばれたとして、その人達はどうする気なんだろう。まさか、場所とか関係なしに戦闘に入る、なんてことはないよね?

 なんにしても、断れない以上は一人で行かせるのは危険だろうな。


「私も行っても大丈夫でしょうか」


「特に一人でっていう指定はなかったし、いいんじゃないかしら? 陛下もハクさんのことは気にかけているようだし」


 気にかけてる……まあ、それはそうか。私、竜だし、気にしない方がおかしい。

 特に指定がないってことは一人で来いってことなんだろうけど、必ず一人でこいとは言われてないから別に帯同しても問題はない、と思う。

 一応、王子からはいつでも遊びに来てほしいって言われているし、王様もそれに賛成しているみたいだから最悪それを口実に使わせてもらおう。


「じゃあ、放課後一緒に向かわせてもらいますね」


「ええ、お願いね」


 会話を打ち切り、授業の道具を運んで教室へと向かう。

 さて、どんな人が来てるんでしょうね。

 できれば面倒事にならないといいなと祈りつつ、授業の助手に努めた。


 放課後、エルを伴って王城へと向かう。

 今回は特に迎えの馬車とかはなく徒歩での移動だ。まあ、使者が来たのが午前中だし当たり前だけど。

 竜が相手だし、失礼がないようにと過剰に世話を焼くのかとも思ってたんだけど、特に王様にそういった思惑はないらしい。どちらかというと、対等の立場。もっと言えば友達みたいなノリで接してくれている。

 エルも特に文句はないのか終始笑顔が崩れなかったので案外王様のことを気に入っているのかもしれないね。

 門番に挨拶をして取次ぎをしてもらい、城の中へと入る。

 案内に従って廊下を進むと、以前も使った応接室へと通された。


「おお、来たか。おや、ハクも一緒か?」


「失礼いたします。お邪魔だったでしょうか?」


「いや、問題ない。さあ、そっちの席に座るといい」


 応接室には王様の他、数人の護衛騎士と宮廷魔術師であるルシエルさん、そして冒険者風の男女が四人。

 王様に促されて席に着くと、軽い自己紹介が始まった。


「まずは紹介しよう。こちらセフィリア聖教国の聖教勇者連盟に所属するパーティ『流星』の皆さんだ」


「私はルナ。ご紹介の通り、聖教勇者連盟に所属している。パーティ内では一応参謀を任されている。よろしく頼む」


 まず自己紹介してくれたのは背の高い黒髪の女性。

 長い髪をポニーテールでまとめており、女性の割には意外と声が低い。

 傍らには黒い鞘に収められた刀が置かれており、見た目の雰囲気も相まって可愛いというよりかっこいい印象を受ける。


「私はシンシアというのです。一応、魔道具職人をしています。よろしくなのです」


 次に名乗りを上げたのは狐耳が印象的な金髪の女の子。

 恥ずかしそうに顔を赤らめながら話す姿はルナさんとは正反対の印象を受ける。

 腰元には二丁の銃が収められており、確かに魔道具職人らしいと言えばらしい。

 今のところ、銃は魔道具職人のみが作れる武器らしいからね。ただ、作れる人は相当少ないらしいから持っているだけで珍しがられる。

 あれって自分で作ったのかな。だとしたら凄い。


「エミはエミって言うの! よろしくね!」


 続いて名乗ったのはエルフの女性。

 エルフと言われるともの凄い長命で見た目通りの歳ではないことが多いらしいけど、会話の雰囲気を聞く限りは見た目相応、いや、それより幼く聞こえる。

 緑色の簡素なドレスのような服を着ており、シンシアさんにすり寄っている。

 武器らしきものを持っていないから、多分魔法職なのかな? エルフは魔力が多いから魔術師に向いているしね。


「最後は俺だな。俺はセシル。『流星』のリーダーをやっている。ま、よろしくな」


 残った男性が名乗りを上げる。

 ルナさんと同じく黒髪で、全身を白のプレートメイルで覆っている。

 こんな会談の場で物々しいとは思うけど、割と様になっていて、ああ、なんかこんな主人公の小説ありそうだなぁと思った。

 それぞれが自己紹介を終え、次は私達の番となる。

 今回は私はおまけなので適当に軽く紹介し、エルが最後に挨拶することになった。


「私はエルと申します。ハクお嬢様の世話係をさせていただいております。以後お見知りおきを」


 エルが丁寧にお辞儀をすると、ルナさんがキッとこちらを睨んでいるのがわかった。

 他の人達もなんだか警戒しているような気がする。

 やっぱり、エルが竜だって疑ってるのかな? さて、どうやって誤魔化したものか。


「王様、どうしてエルをお呼びに?」


「聖教勇者連盟からの通達で知っていることを嘘偽りなく話せと言われたので話すことになった。すまない」


「あー……」


 てことはもう誤魔化すとかそういう域を越してるじゃん。

 王様の前なのになんで武装したままなのかなぁとか思ってたけど、そりゃ竜だと確信している相手が来るんだから警戒もするよね。

 というか王様、口外しないって言ってたのにあっさり喋るなんて酷いじゃないですか。


「聖教勇者連盟はいわば世界の平和の要だ。裏切れば国が滅ぶこともある。わかってくれ」


「まあ、それなら仕方がないですよね……」


 一応、聖教勇者連盟は世界の危機を救うための勇者を要する組織なわけで、どんな国でも世界の危機に瀕していると証明されれば助けに来てくれる。

 各国は守ってもらえる代わりに勇者達に便宜を図るのが普通で、もし勇者の要請を断れば守ってもらえなくなるかもしれない。

 普通に考えれば竜は人類の敵なわけで、討伐されるべき存在だ。いくら自分の国に危害を加えないと約束していても、いつ反故にされるかわからない。

 王様としては約束を優先したかったのだろうけど、今回は相手が悪すぎたということだろう。私だって、王様に面と向かって嘘を吐けと言われたらしり込みしてしまうかもしれないし。

 とにかく、この人達はエルの正体を既に知っている。ここでの対応が今後に大きくかかわってくるだろう。

 さて、どう対応したものか……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 前話でルナが竜狩りを可能と思っているからか流星はやや余裕っぽい(´Д` )しかし待っていただきたい、あのバトルジャンキーアグニスすら竜殺しだと言う事実が浮かび上がるのです。つまりハクさ…
[一言] 王都の危機を救った大恩人を、明確に敵対してる連中に速攻で売るとか凄いな…
[一言] 全面戦争にならなければいいけど
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ