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第二十一話:ロニールさんと買い物

 奥の部屋で採寸を済ませる。自分で言うのもなんだけど、幼女体型だよね私。

 胸など一切ない寸胴な体。これから成長とかするのだろうか? あんまり期待はできない気がする。

 何着か見本を着せてもらい、旅人っぽい装いのものがあったからそれに決めることにした。外套も付いていていい感じ。

 今すぐ渡せるわけではなく、この後私に合わせて仕立て直してくれるのだそうだ。まあ、どれもこれもぶかぶかだったからね。

 布とかも色々と見せてもらったけど、よくわからなかったので全部任せることにした。いっつも白衣しか着てなかった私にファッションセンスとかわかりません。


 店内に戻ると、ロニールさんが立ち上がって私を迎えてくれた。


「やぁ、気に入った服は見つかったかい?」


「はい、お陰様で」


「それはよかった。マリーさん、おいくらかな?」


「そうねぇ、小金貨1枚と銀貨7枚と言ったところかしら。でも、ハクちゃんは可愛いから、銀貨は3枚まで負けてあげるわ」


「ふむ、まあ、そんなところか」


 ロニールさんはおもむろに懐から袋を取り出すと、中から小金貨を取り出してマリーさんに渡した。


「え、あの、自分で払いますよ?」


「あはは、いいんだよ。いつまでもハクちゃんがそんな格好でいるのは俺も心苦しいからね。ここはいい格好をさせてくれ」


 そう言って頭を撫でられては文句を言う気も失せてしまう。

 リュークさんもそうだけど、ほんとに私が出会った人は優しい人ばかりだなぁ。

 何か困ったことがあったら絶対に恩返ししようと心に誓い、この場は厚意に甘えることにする。


 二日後にはできるということで、後日また取りに来ると約束をして店を出た。


「さて、他に買うものはあるかい? よかったら案内するよ」


「ありがとうございます、ロニールさん。でも、いいんですか? お忙しいんじゃ」


「はは、それは大丈夫だよ。買い付けはもう終わったし、出ようと思えばいつでも出れる。ただ、今は街道が封鎖されているらしくてね、立ち往生しているんだ」


「街道が?」


 話によると、次の街に向かう街道に魔物が大量に出現しているらしい。数日前から徐々に増えていて、街道を通りがかる人々を襲うことから通行規制がかかったようだ。

 数日前ってことは、私がこの町に着いた辺りってことかな?

 私はいつもやって来た道側の門からしか出ていないから、別の道がそんなことになっているとは知らなかった。


「今、ギルドで討伐隊を募集してると聞いたけど、何か聞いてないかい?」


「いえ、何も……」


 うーん、ポーションのこと考えてたからあんまり気にしてなかった。もしかしたら掲示板に張り出されてたのかもしれないけど、私掲示板全然見てないからなぁ。見てたとしても読めないし。

 明日ギルドに行った時にでも聞いてみよう。


「まあ、それが片付くまではこの町にいなくちゃいけないんだよ」


「なるほど。早く規制が解除されるといいですね」


「今回はハクちゃんの事も気になっていたからちょうどよかったと言えばちょうどよかったけど、まあすぐに解除されるさ。そんなに強い魔物ではないようだし」


 というかこれ、まさに困っていることでは? 恩返しするチャンスじゃん。

 明日行くつもりだったけど、買い物終わったらさっさと行って聞いてこよう。Fランクで受けれるかわからないけど、もし受けれたら魔法で手助けくらいはできるでしょう。


「そう言えば、もうお昼だね。何か食べに行こうか」


 空を見上げれば、確かに日が高く登っている。お昼ご飯にはちょうどいい時間だろう。

 ……私今までお昼ご飯食べてたっけ? 全然食べてない気がする。

 村でも朝晩二食が普通だったし、何なら前世もお昼抜くとか普通だったから全然気にしてなかった。

 どうも何かに没頭すると忘れちゃうんだよね。昔からの悪い癖だ。


「わかりました」


「お勧めの店があるんだ。案内するよ」


 せっかく思い出したのだからせっかくだし食べに行こう。

 ロニールさんに連れられて商業区を後にする。


 やってきたのは居酒屋のような場所だった。店の外にもテーブルが置かれ、オープンテラスとなっている。

 ロニールさんは慣れた手つきで注文していたが、私はメニューを見ても文字が読めないのでさっぱりだ。

 うーん、勉強した方がいいのかなぁ。

 考えあぐねていると、見かねたロニールさんが説明してくれた。とてもありがたい。

 料理を注文し、料金を払う。宿よりは高いが、ここも結構良心的な値段だと思う。ちゃっかりまたロニールさんが奢ろうとしてたから今回は先手を打っておいた。そう何度も厚意に甘えるわけにはいかない。

 しばらくして出てきたのはソースがたっぷりかけられたローストビーフのような料理だった。とても柔らかく、ナイフを入れるとしっとりとした肉汁が溢れてきた。口に運ぶと、噛むほどに肉の旨味が染み渡り、一杯の幸せが訪れる。

 今まで食べた中で一番美味しいかもしれない。夢中で食べ進めていると、ニコニコとしながらロニールさんがこちらを見ていた。

 ちょっとがっつきすぎたかな。でも、美味しいものは仕方ない。


「気に入ってくれたようで何よりだよ」


「とっても美味しいです。ありがとうございます」


 あっという間に食べ終え、満足げにお腹をさする。

 いやぁ、こんなに美味しいもの食べられるならたまにはお昼食べるのもいいかもねぇ。

 食休みに少しまったりしていると、ロニールさんが話しかけてくる。


「ハクちゃん、この後はどうするんだい?」


「そうですね……鞄を買おうかと」


 こう、肩にかけられるやつ。【ストレージ】の擬装用に欲しいんだよね。

 別に堂々としてればいいんだろうけど、また食い気味にパーティ勧誘されるのはごめんだ。


「鞄か。それなら小道具屋かな」


「何か心当たりが?」


「もちろん。俺は商人だからね」


 必要なものが売ってる店を全部知ってるって意外と凄いんじゃないかな。前世みたいにスーパーで何でも買えるってわけじゃないし、それだけ商人としての顔が広いってことなんだろう。

 しばらく暇みたいだし、この際だから全部案内してもらおう。


「それじゃあ、行こうか」


「はい、お願いします」


 ロニールさんに案内してもらい、店を回る。

 鞄は結局腰につけるポーチのようなものを買うことにした。この方が両手が空くし、激しい動きをしても落ちないからね。二つ買ったのでポーション入れておくのもいいかも。

 ポーション用の小瓶も買おうと思ったのだが、ちょっと思いついたので見るだけにしておいた。その代わり、他のポーションをいくつか買うことにした。

 薬屋でいいのかな、ギルドのバーで買うよりもちょっと高かった。効果は疎らだったけど、手作りなのかな? 私も作ったポーションは効果が多少ばらつくし。

 逆にギルドのポーションはほとんど同じ効果のものが多かった気がする。作り方が違うのだろうか。よくわからない。

 ここでも売れるかなと思って試しに自作ポーションを渡したら、店主の人が目を剥いて驚いていた。

 なんでも、ポーションの調合は現在は大きな設備が整っているらしく、大半はそこで量産されたものなのだそうだ。私の様に、自作で一から作る方法は今ではごく僅かな調合師しかできず、その方法も秘伝なので、何年も修行して見極める力をつけるのが普通なのだそうだ。

 私のような年の子が自力でポーションを作れるというのは異例中の異例であり、今すぐにでも調合師になるべきだと推された。

 断ったけどね。

 その話はせめて上位ポーションが作れるようになってからって言ったら、調合師に上位ポーションが作れる人なんて一握りだという。あれは類稀なる調合技術と高価な素材と接合剤があるから出来るのであって、そんじょそこらの調合師では真似できないと言われた。

 うーん、ちょっと残念。上位ポーションが作れれば結構稼げると思ったんだけどなぁ。まあ、その設備っていうのが気になるけど、今は気ままな冒険者のままでいいかな。知らないことも色々あるし。

 ロニールさんはロニールさんで私のポーションを買い取りたいとか言ってくるし、そんな大したものじゃないんだけどなぁ。

 とりあえず、今持ってる分は全部渡しておいた。せめてものお礼を兼ねて。

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[気になる点] 薬屋のポーションの効果がまばらなのは瓶詰めした時期の違いでギルドのポーションが均質なのは壺か何かに纏めて保管して毎回瓶に詰め直して出してるとかかな?(バーのオヤッさんこんな面倒な事をす…
[気になる点] >>価な素材と接合剤があるから出来るのであって、損女装子らの調合師では真似でき そんじょそこら
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