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第百七十一話:錬金術の授業

 翌日、特に寝坊することもなく起床し、いつものように教室に向かう。

 短い期間ではあったけど、慣れ親しんだ一年の教室に行きそうになって慌てて二年の教室に向かうのは習慣からくるよくある間違いだと思う。

 実際そういう生徒は多いようで、学年が上がる当初はそれで違う学年の人が教室に現れるという事件がよくあるらしい。

 教室に入り、新しくあてがわれた席に着く。


「ハクさん、サリアさん、おはようございます」


「ご機嫌よう」


「おはようございます。シルヴィアさん、アーシェさん」


「おはよー」


 シルヴィアさん達が挨拶してくる。

 今日は午前中はシルヴィアさんが水魔法の授業に、アーシェさんが土魔法の授業に行く以外は午後から行われる錬金術の授業が共通の授業だ。

 一応、水も土も一緒に見に行くことになっているが、私やサリアは特に出番はない。

 私は受けようと思えば受けられるけど、あんまり授業を詰め込みすぎるのもよくない。

 一応、多くとればとるほど貰える単位も多くなるから飛び級や卒業なんかがしやすくなるらしいけど、私は最後までサリアと一緒に勉強することが望みであり使命だからそんなことをするメリットはない。

 普通に、何事もなく六年間を過ごせれば言うことはない。


「ハクさん、本当に水魔法の授業は受けないんですの?」


「いくら適性があるとは言っても、一番得意なのは水なのでしょう?」


「はい。その方が一緒にいられますし」


 私の得意属性は水ということになっている。

 入学テストの時も水魔法を使ったし、普段使っている魔法も水魔法が主力だ。

 一番使い慣れているという意味では確かに得意属性ではあるけれど、私の魔法はイメージを魔法陣に書き起こし、それをそのまま暗記することによって発動するからそれぞれの属性で威力や精度にあまり差はない。

 速度という観点からすれば使い慣れている分水が一番早いかもしれないけど、それでもコンマ数秒の差だ。

 水の授業に興味がないというわけではないけれど、私はサリアのお目付け役でもあるわけだし、なるべくサリアと一緒にいた方がいいというのもある。

 全部できるんだから、あえて得意属性を受けなくてもいいはずだ。


「ハクさんならいずれ全部の属性の単位を取りそうですわね」


「そんなことしませんよ」


 基本的に一度取得した単位の授業は受けない。

 総取得単位の問題もあるし、無駄に授業を取って落ちてしまったら取り返せなくなる可能性もあるし、なにより一度受けた授業をもう一度受けるのは非効率的だからだ。

 魔法の授業に関しては学年が上がるごとに詳細が変わっていくから別授業扱いとなり、六年を通してずっと受け続けることになるが、他の授業はせいぜい二回か三回に分けられる程度。

 だから、卒業までずっと錬金術を受け続けるということはできない。

 すでに単位が足りているなら何も受けずに基礎授業と必須授業を受けているだけでもいいんだけど、せっかく学園に通っているなら何かしらの授業を取った方がためになる。

 今のところはまだ考えていないけど、錬金術の授業がなくなる前には考えておきたいところだね。


 しばらく話しているとクラウス先生がやってくる。

 まだお試し期間中なので簡単な連絡をしただけですぐに出て行ってしまう。

 クラウス先生は今日も火魔法の授業があるみたいだからすぐに行かなくてはならないのだろう。大変だね。

 時間を見計らって受ける授業の教室へと向かう。

 最初に水魔法の授業を受け、次に土魔法の授業を受けた。

 魔法の授業に関しては特に教えることに差はないようだ。

 大体どのクラスでも最初に一年時の復習をして、その後徐々に実践練習へと移っていく。

 Aクラスのように初めから大半の生徒が魔法を使えるようなクラスならともかく、それ以外のクラスだとそもそも魔法をまだ撃てない生徒の方が多いから大変そうだ。

 魔法が使える生徒と使えない生徒、どちらに合わせるかによって進み具合が変わってくる。

 一応、使える生徒は積極的に実践練習を積み、使えない生徒は使えるように一緒に練習するって感じみたいだけど、同じクラスでも結構優劣が分かれそうだ。

 特に問題が起きることもなく恙なく授業は終了し、お昼を挟んで午後の授業へと移行する。

 お次はいよいよ錬金術の授業だ。

 四人で集まり、指定された教室へと向かう。

 いつも授業を行っている本校舎ではなく、初めて行く校舎だ。

 実習棟みたいな感じかな?

 中に入ると、素材保管庫やら実験室やらといった教室の名前が並んでいる。

 指定されているのはそんな実験室の一つだ。

 中に入ると、そこそこの生徒がいた。でも、魔法の授業ほどの人はいない。

 魔法の授業は必修科目だし、人が多くなるのは当然だけど、他の授業はそうでもない。

 かなりの数があるし、クラスによって内容を変えることもないからこの授業ではすべてのクラスが合同で行うことになっている。

 もちろん、人が多すぎれば分けることもあるだろうけど、この様子ならそこまでする必要はなさそうかな?

 適当に席に着き、先生が来るのを待つ。

 実験室というのは初めて来たこともあり、サリアは興味津々に周囲を見回していた。

 普通のクラスとの違いは、机が頑丈そうなのと水の魔石が完備されていていつでも水を出せることくらいだろうか。

 その他にも棚にはいくつかの魔道具が置かれている。実験に使うのかな?


「遅くなってごめんなさい。みんな集まっているかしら?」


 開始時間ぴったりくらいに現れたのはクラン先生だった。

 もしかして、錬金術の担当ってクラン先生なのかな?

 学園の教師は非常に優秀で、魔術師以外にも副業として別の職の内容を把握している人もいると聞いていたけど、クラン先生がそれに当てはまるらしい。

 錬金術師は魔術師と比肩するほど人気の職業だ。

 魔石やポーションと生活に必要不可欠なものを生産する職業だから失業しにくいというのが理由の一つに挙げられるのだろう。

 もちろん、腕が悪ければだめだろうけどね。

 クラン先生の目線がこちらに向けられる。

 少し驚いていたようだったけど、特に顔に出すことはなく説明に移った。


「この授業では魔石関連について学んでいくわ。魔石が様々な魔道具に使われていることは知っているわね?」


 魔石がどこで取れるのか、どうやって使用するのか、加工するのか、どういう使われ方をするのか、そう言ったことを学んでいくのが錬金術らしい。

 ポーション関係と思っていたけど、それはこの授業の単位を取ることで受けられる錬金術ⅡやⅢで受けられるようだ。

 まあ、どちらも錬金術には大切なことだし、一概にどちらが重要かとは言えないけど、より身近にある魔石を優先しているようだ。

 小さいものでよければ子供でも魔物を倒して手に入れられるものだし、店に行けば普通に売っているものだからね。

 ポーションは調合する素材とかを学ばないといけないから少し大変かもしれない。


「魔石は非常に重要な資源よ。この教室に使われている明りも光の魔石が使われているわ。これらの魔石がどこで手に入るか知っている?」


「はい、魔物からの剥ぎ取りです」


 クラン先生が適当に一人を指名して答えさせる。

 魔石の入手方法については知っている生徒も多いようだ。

 だが、実際に光の魔石を手に入れようと思ったら結構大変なのを私は知っている。

 なにせ、光属性の魔物なんてそうそういないからね。

 ちらちらとこちらを見てくるクラン先生を見て、その内質問が飛んできそうだなと身構えながら授業の行く末を見守った。

 感想ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] たしかに属性にあった手頃なモンスターはいないかもしれませんが、土の属性以外ならハクさんがチョチョイと書き換えだして場が騒然としだすんですね。
[一言] 魔石の変換?だったかを実演することになりそうかな?
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